渦巻き絵本(2)
続きです。
「「で!何これ......?」」
死体が喋ると整合性がなくなっちゃうし、雰囲気ぶち壊しだから喋らないで。
ここから魔女と使い魔の冒険が始まるんだから。
「帰っていい?」
帰れないよ。
「あ......さくらは消えたニャ」
「また背景が塗り替わる......。この物語終わらせないと出られないのかな?」
「たぶんそうニャ」
ついでに言うと、私に勝てなかったら次の時に脇役やってもらうから。
「まじか」
それじゃ......場面変わるから。
魔女は赤頭巾ちゃんの頭巾を持って旅に出ました。
太陽は高い位置で眩しく輝いています。
魔女はそれを見てなんだか嬉しく思いました。
クロがヒゲを楽しそうにピクピクさせて言いました。
「とっても天気がいいニャ。こんな日は川でお魚を捕まえて食べるに限るニャ!」
「あっ!ちょっと待ちなさい!」
魔女が止めるのも聞かずに川へ飛び込んでしまいました。
ですから、仕方なく魔女も付いていくのでした。
「でも本当にいい天気。赤頭巾ちゃんも居たらもっと楽しかったのにな」
魔女は川の近くで火を起こします。
魔法はあまり得意ではないので、小さな炎で時間をかけて火をつけました。
「たくさんとれたニャ!」
丁度炎がめらめらと燃え上がる頃には、クロがお魚を両腕いっぱいに抱えて帰ってきました。
暖かい日差しに包まれて、二人はお魚を焼き出すのでした。
「でも、ほんとに綺麗だね、ゴロー」
「そうだね。淡い色使いがなんとも言えず綺麗ニャ」
ちょっと......アドリブは控えてもらいたいんだけど、まぁ......その......でもありがとう。素直に嬉しいよ。
「これって君が描いてるの?」
そうだよ。
「ほえー」
そろそろ進めでもいいかな......?
「あ......ごめん、ごめん」
「これ......ボクら勝ち目なくないかニャ?」
最終的には私と戦うの。
その時は二人の行動を私は決めないから大丈夫だよ。
「盛大なネタバレを食らったニャ......」
焼いた魚を口いっぱいに頬張ると、柔らかな身が解れてじんわりと旨味が広がります。
「おっと......急に始まったね」
「まぁボクらがうるさいから多少強引に進める必要があったんニャ。この魚もほんとに美味しいニャ」
するとそこに、竜に跨った騎士がやって来ます。
「わわっ!?ちょっと何ですか!?私高いところ苦手なんですけど......!!」
「この姿になるのも久々だな」
騎士は力一杯手綱を握りますが、魚の匂いを嗅ぎつけたドラゴンは言うことを聞きません。
ドラゴンは腹ペコなのでした。
「みこちゃん......と」
「どらこニャ」
「ガオー!!」と、ドラゴンが吠えます。
「や、やめなさい!」
騎士はドラゴンの背中をポカポカ叩きますが、ドラゴンは焼き魚に釘付けです。
心優しい魔女は突然やって来た二人にも、魚をご馳走するのでした。
「これ......ほんとに美味しいよ」
「本当に食べられるんですか、これ?絵ですよ?」
「美味いぞ」
「どらこちゃんは順応早すぎです......」
四人での食事は、とても楽しくて、魔女は嬉しくなりました。
騎士が兜を脱いで、お礼を言います。
「ありがとうございますであります。私の竜は方向音痴の竜でありまして、三日三晩飛び回っていたところ......匂いにつられてここまで来てしまったのです......であります。何と心優しいお方か......」
「ガオー♪」
ドラゴンもすっかりご機嫌でした。
「気にしないで。お魚はたくさんとれたもの。あなたの力になれて嬉しいわ」
魔女は喜びましたが、長くは一緒に居られないなと思いました。
それもそのはず......騎士は魔女たちを退治するためにあちこちを飛び回っているのですから。
続きます。