渦巻き絵本(1)
続きです。
昔々あるところに、悪い魔女たちがいました。
彼女たちは争いを好み、そして互いに傷つけあいました。
多くの人々を巻き込んで。
「は?え?何......?」
しかしある日、一人の魔女が目覚めました。
その魔女は他の魔女とは違い、争いを好みません。
しかしそんな心優しい魔女も、渦巻く運命に吸い込まれてゆくのでした。
「頭の中に声が......」
「この空間は明らかに能力者に作られたものニャ......」
「うわっ......びっくりした。居たの」
「居たの」
その魔女は、一匹の使い魔を連れていました。
猫の姿をした使い魔です。
魔女はその使い魔を......。
「すごい......。まるで絵本みたい。こんなこと出来ちゃうんだ......」
「ボクたちも画風が違うニャ」
「画風て......」
魔女は......!その使い魔を......!
「何......?もううるさいなぁ......」
な、名前!名前ある?もう......とりあえず教えて!
「ゴローニャ」
ゴローニャ......?
「あっ......そっちじゃないニャ。ニャは語尾ニャ」
「え?これ付き合わないといけないやつ......?」
ふぅ......。
魔女はその使い魔をゴローと呼び......ごめんやっぱ変えていい?イメージと違う。
「付き合わないといけないやつだ......。別にいいよ」
「えぇ......。ボクの名前......」
魔女はその使い魔をクロと呼び、とても仲良くしています。
「別に黒くないニャ......」
「黒くなってるよ」
「......!?本当ニャ......」
ちょっと一旦静かにしよ?
進まないから。
「は......はぁ」
魔女は森の奥の木の小屋に住んでいました。
朝には小鳥がさえずり、夜には木々の隙間からお月様が見え隠れします。
とても綺麗な場所で、魔女のお気に入りでした。
「背景が小屋に変わってる......」
「キミが魔女で、ボクが......クロ......ニャ。たぶん」
それはとても天気の良い昼下がりのことでした。
コンコン......と、誰かが扉を叩くのです。
「お客さんだ......ってえ?」
魔女はそう言って慌てて扉に向かいました。
扉を開けると、そこには魔女ととても仲がいい女の子がいました。
赤い頭巾を被った可愛らしい女の子です。
「ちょっと......どういうことよ?」
「さ......さくら!?何で!?」
魔女は頭巾の女の子の手を引いて、家に招き入れます。
「うぁっ......ちょっ!何するのよ!」
「私の意思じゃないんだなぁ......これが」
「いらっしゃい!赤頭巾ちゃん!お茶を淹れてあるよ。クッキーも今焼いてるところニャ!」
クロは小さな机に紅茶を運んで、赤頭巾ちゃんを歓迎しました。
「あら、ありがとう」
そう言って赤頭巾ちゃんは紅茶を飲みます。
「どう美味しい?」
魔女が訊くと、赤頭巾ちゃんの顔は頭巾に負けないくらいみるみるうちに真っ赤になっていきました。
「熱いじゃない!」
赤頭巾ちゃんがティーカップを床に叩きつけます。
あらら大変。
大切な友達を怒らせてしまったみたいです。
でも何で?
赤頭巾ちゃんは決してこんなことで怒るような子じゃありません。
「なんだか変だよ......赤頭巾ちゃん」
魔女は不思議に思います。
「ふっふっふっ!実は私も魔女だったのだよ!そして魔女は......悪い、やつ......だから!戦いに来たんだ!」
赤頭巾ちゃんの口が大きく裂けます。
頭巾を突き破ってオオカミの耳が生えてきます。
真っ赤な舌が、魔女を舐めました。
「食べちゃうぞ!」
魔女は悲しい気持ちになりましたが、それでも自分の身を守るには戦うしかありません。
「ごめんね......!」
ドタドタ走り回る赤頭巾ちゃんに紅茶を飲ませます。
「ひー!!熱い!熱い!」
堪らず転げ回る赤頭巾ちゃんを、魔法の箒で叩きました。
あっという間に、赤頭巾ちゃんは伸びてしまいました。
大切な友達をやっつけてしまった魔女は目に涙を浮かべました。
「うぅ......赤頭巾ちゃん......」
横たわる赤頭巾ちゃんに寄り添って、一晩中泣き明かしました。
「「で!何これ......?」」
続きます。