スペクターズ(22)
続きです。
「さて、納得のいく説明をしてもらおうじゃないの!」
立ち上がって腕も組んで、とりあえずスバルを正座させる。
逆らっても無駄と思ったのか、文句も何も言わずに素早く正座に移行した。
「おいおい、何もそんな・・・・・・もっといい方法が見つかったってんならいいことじゃないか。な? あたしらのやったことがそれで無駄になるってこたないわけだろ?」
「どらこは黙ってなさい。こういう要領の悪さを許したらきっと次からも同じようなことを繰り返すから」
私を宥めようと肩に手をかけて来たどらこを引っぺがす。
暑苦しいっての。
疲れてるから対応が雑なのは許してほしい。
どらこもやっぱりそれなりに疲れていて、だからか私に剥がされるとすぐにまた床にどっしーんと横たわった。
正座するスバルの横から、慌てた様子でみこが話に入ってくる。
「そ、その説明については私からさせてください!」
「え? みこが? なんでよ?」
「それは・・・・・・」
みこの丸い瞳が、適切な言葉を探して泳ぐ。
「それは私の所為だからです!」
最終的にみこはそう言い放った。
「みこの・・・・・・所為?」
「正確にはみこのおかげ、だな」
首を傾げる私に、スバルが付け足した。
みこは何に対してか分からないが頷いて、話を続ける。
「その、実はそんな難しい話でもなくてですね・・・・・・要は私の能力で必要な分のあるいはそれ以上の機械が用意できる、できてしまうことが分かったんです」
「なんだ? つまりみこがあの銃とかと同じようにそのロボットとかも出せるってことか?」
どらこが、上半身を起こしてみこを見上げる。
それにスバルが「まさしく!」と、答えた。
作業に没頭していたゴローもやってくる。
「何らかの理由でみこの能力の解釈が広がったわけかニャ。だとしたらすごい成長・・・・・・進化ニャ」
「いえ、全然そんな・・・・・・」
みこはそう謙遜するが、流石に私もそれがどういうことなのか理解する。
そういうことなら、確かにずっと効率よく生産出来るはずだ。
「なるほどね・・・・・・それはすごいことじゃない。納得したわ。納得しないわけないじゃない」
「そんな分かりやすく手のひら返されると、今度は僕が納得いかんぞ・・・・・・」
「悪かったわよ。でも本当、すごいじゃない」
スバルは適当にあしらいつつ、みこの成長を褒める。
これで私たちはずっときらら救出に近づいたわけだ。
みこの能力がそんな風に活かせるなら、作業はずっと加速する。
これが産業革命ということか。
たぶん違う。
何はともあれ・・・・・・。
「休憩、しましょうか」
みこの成長もあって、なんだか肩の力が抜けてしまう。
残るのは溜まりに溜まった疲労だけだ。
「あんたも足崩して・・・・・・悪かったって言ってるでしょ。睨まないで頂戴」
「何で今謝ってる君が立場上なんだよ・・・・・・」
「最初に下手に出たのはそっちでしょうが」
スバルの愚痴に、自覚有りの理不尽で応戦する。
それに怒るでもなく、スバルは表情を柔らかくした。
「・・・・・・でも、とりあえずは元気そうで何よりだ。居ないと酷く落ち込んじゃうくらい大好きなきららの救出、頑張ろうや」
「うっさいわね。やっぱ正座」
緩み始めた空気の中、誰のかも分からない腹の虫が鳴き声を上げた。
もう終わりも近づいて来た夏だが、それでも酷く暑くて、今はそれも悪くなかった。
続きます。




