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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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スペクターズ(21)

続きです。

「流石に・・・・・・ね」


「流石にな」


 みこが連れて行かれてからもう結構な時間が経った。


 そんな中、私たちもきららの為と思いながら作業を続けていたのだが・・・・・・。


 どんなに危機的状況にあっても、集中の継続には限度がある。

情け無いことを言うが、要は・・・・・・。


「疲れた・・・・・・」


 散らばったパーツやら何やらを押しのけて、少しザラついた床に寝転がる。

確か最初は汚れが気になって座るのも躊躇っていたが、そんなのはもう意識の外だ。


 ノワールは単純作業の繰り返しに疲れ果て、今や全く作業が進んでいない。

手は動いているのだが、そこに意思が伴っていない。

ほとんど無意識で指だけ動かしているようなものだ。


 どらこもやっと慣れて来たと思ったら、時間が経つにつれミスが増えてきた。

しかも本人がそれに気づかないのだ。

私が気づいたものは指摘したが、それもくぐり抜けた不良品は必ず完成品なに混じっているだろう。


 私は私で、こうして寝転がってしまっている。

一応言い訳すれば、一度休憩した方が作業効率も結果的に上がると思ったなんてところだ。


 どらこもノワールも私に続いて横になる。

普段ならそれを咎める立場だが、今回はお前が言うな案件である。


 そんなわけで、相変わらず作業効率が変わらないのはゴローだけだ。

流石に人間じゃないだけある。


 そんな真面目なゴローも私たちを責めはしない。


「みんな大丈夫かニャ? 暑いし、水分補給もしっかりニャ」


「悪いわね」


「大丈夫ニャ。君たちが体壊しちゃ、元も子もないニャ」


 体力だとか、疲れるだとか、ゴローには存在しないのだろうか。

あるいはきららに最も近い存在だから、落ち着いているようでいて本当は一番焦ってるのかもしれない。


「本当、悪いわね・・・・・・」


 良くも悪くも、私は一つのことに集中し続けられないようだ。

昨日はあんなにきららのことが気になって仕方なかったのに、今では疲労で頭が回らない。


 風通しがいい以外最悪な環境の廃工場。

その淀んだ空気を掻き回す風が吹き込む。

それを伴って、入ってくる人影があった。


「済まない。遅くなった」


 額に手を乗せて、その二人の人影を見上げる。


「やっとね」


 ようやく、みこたちが戻ってきた。


「いやいやいや・・・・・・随分捗ったみたいだね、その様子だと」


 スバルが雑に転がされた完成品たちを見下ろして、やかましく階段を降ってくる。

どうやらその視線は完成品の数を数えているようだった。


 というか、そういえば確かノルマが定められていた気がする。

ノルマというか目標だったが、それは達成出来ているのだろうか。


「お疲れ様です」


 スバルに続いて、みこも階段を降りて来る。

服が割とわかりやすく汚れているので、そちら様もお疲れの様子だった。


「おお、みこ! お疲れ!」


 どらこも寝転がったままみこの帰りを喜ぶ。

するとみこはすぐにどらこの方へ駆け寄っていった。


 数を数え終わったのか、スバルが口を開く。


「ふむ、目標量は到達してるね。なかなかいいペースじゃないか。まぁ・・・・・・それも、ね・・・・・・」


 スバルの目が微妙に泳ぐ。


「何よ? なんか問題あるの? 怒らないから、言うなら今がチャンスよ」


 自分の短気さを利用して返事を急かす。

だが実際に今は喚く体力も残ってないので、何を言っても怒らないだろう。


「まぁ、ね」


「ですね」


 言いづらそうに視線を更に泳がせるスバル。

その視線を受け取ったみこも、なんだか申し訳なさそうに笑った。


「君たちにとって、良いニュースなんだが、同時に悪いニュースにもなる、かな・・・・・・」


「だからなんなのよ・・・・・・」


 怒らないって言ってるじゃないの。


「怒らないからって、ただの前振りでしかないんだよなぁ」


 スバルの言葉が、たまたま内心の声と繋がる。

そして観念したように、そのニュースとやらのことを話した。


「一言で言えば、機械のもっといい量産方法が見つかった。つまり、君たちはこんなに苦労することもなかったね・・・・・・というわけだ」


「んだよそれ、どういうことだぁ?」


 どらこが更なる詳しい説明をねだる。

それにスバルが「あー・・・・・・」と、不明瞭な声を上げる。


「要は君たちの作業、それが無駄・・・・・・とは言わないが、そのもっといい方法が見つかった。だからまぁ、頑張ってもらってあれだが、なんかそこまで重要じゃなくなったわ」


「は・・・・・・?」


 思わずぎろりとスバルに視線が向く。

私の「怒らない」は、こうして本当にただの前振りになった。

続きます。

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