スペクターズ(14)
続きです。
みんな少なからず焦りはあるようで、やることが決まるとすぐに作業に取り組む姿勢になってくれた。
「さて、じゃあ説明させてもらうが、君たちにはちょっとした工作をしてもらう。何を作るかはさっき言ったから分かると思うが、まぁそんなに難しい作業じゃないから身構えないでいてくれ」
まぁ正直複雑な仕事は彼女たちに任せられないので、業務内容は至って簡単だ。
パーツを組み合わせて、形にする。
ほとんどプラモデルと変わらない作業だ。
プラじゃなくて金属なわけだが。
接着剤を使うわけでもないし、失敗しても組み直せる。
要する時間は変わってくるが、部品さえあれば素人でも熟練者でも同じ完成度のものが出来る。
しかしまぁ結局僕にしか出来ないことも多い・・・・・・というかほとんどがそうだ。
だから必然的に僕の労力が多い。
昔は全部一人でやっていたが、今はそんな趣味としてのガラクタ弄りではないのだ。
それプラス、どういった武装が必要かも同時進行で考えなければならない。
用意に必要な時間なども考慮して、厳選せねば・・・・・・そしてそれらのことが初めから決まりきっていたかのようにスムーズに進めなければならない。
幸い切り札、というかアンキラサウルス特攻として効果が期待出来るかもしれないものはある。
今回はそれを主力に配置して戦うというのがいいだろうと、ちゃっかり大まかな流れを頭の中に用意することには成功していた。
「スバルの、3分クッキングー・・・・・・」
3分で終わるようならどれだけ楽に済んだか、現状への諦めも載せて指を鳴らす。
そうするとノワールが帳からじゃらじゃらいくつかの部品を散らばらせた。
帳の応用で、自分たちの移動のみならず四次元なポケット的やり方だ。
どうでもい・・・・・・いや、良くないがもう少し丁寧に扱ってほしいものだ。
結構細かいから紛失が怖い。
散らばったパーツの一つをどらこが拾い上げ、そしてトタン屋根の隙間からの光に透かすようにして眺める。
「こいつは、なかなか・・・・・・」
その指で摘む程の大きさしかない部品は、当然その光を透過することはない。
「小さいな・・・・・・」
「まぁでも大丈夫さ・・・・・・」
どらこの言う通りで、部品の一つ一つはかなり小さい。
その小ささにどらこは顔を顰めるが、見かけほど複雑じゃないはずだ。
ノワール以外が困惑したような表情で部品たちを見つめるが、きっといざ始めれば大丈夫なはずだ。
環境は少々劣悪だが、まぁ労働というのは汗水垂らしてなんぼだ。
いくら暑かろうが、作業に支障はないだろう。
流石にテーブルというか、作業台くらいはほしいところではあるが。
「それじゃあ・・・・・・」
順を追って、作業の説明を開始する。
プラモデルと違って説明書を用意してあるわけじゃないので、そこら辺はしっかり覚えてもらわねばならない。
最初はみんなよく分からないような顔をしていたが、説明を重ねるうちに段々と要領も掴んでくる。
この学習速度というか、順応の早さは子供ならではだろう。
途中から説明と同時進行で実際に作業を進めてもらうという風に形式は変わったが、それ以上の工夫はするまでもなく覚えてくれた。
時間はそこそこかかってしまったが、ひとまず説明を終える。
その頃にはしっかり同じ形の完成品がみんなの前に並んでいた。
正直ゴローに同じ作業が出来たのは驚きだ。
あいつ指無いだろ。
一通り完成したものをチェックして、問題無いと判断する。
「いいね。それじゃ・・・・・・」
時計は無いので、チラリと屋根の穴から覗く空を見る。
「まだ時間はありそうだから、ひとまず今日は同じものを量産してもらおう。目標としては・・・・・・まぁ三十個は出来ればなと思う」
自分で言っていて、三十かぁとその少なさに眉根を寄せる。
これはまた僕の負担がだいぶ大きくなりそうだ。
ユノに使われてたときの無茶振りを思い出す。
まぁやれないことはないさ、と健康の為に楽観的になっておいた。
続きます。