スペクターズ(12)
続きです。
一日目。
「いやぁ、集まってくれてありがとう。感謝するよ」
「別にあんたの為に来たわけじゃないわよ」
「やぁ、ツンデレかい?」
僕の言葉に、さくらが「ダメだコイツ」といった具合に頭を抱える。
その他メンツも、笑ってすらくれなかった。
作戦準備一日目。
僕らは町の廃工場に集合していた。
メンバーはいつものきらら組と、それに加えてノワール。
彼女も打倒ユノの目標で釣れば快く協力してくれた。
まぁたぶんそうじゃなくても状況を話せば協力してくれただろうけど。
ぼろぼろのサビの目立つトタン屋根に空いたいくつかの穴からは、木漏れ日のように日光が糸となって差し込んでいる。
木漏れ日の方がだいぶ風情がある。
キツく閉じられた正面の扉は、分厚く、重く、鍵もかかっていれば錆びの所為でそもそも解錠すら困難そうだ。
そんな状態だから外付けの階段を登って割れた窓から入るしかない。
この階段がまたなかなかにボロくさ・・・・・・味のあるやつで、小学生一人の体重で心臓に悪い悲鳴をあげるのだった。
屋内に充満する空気は少し埃っぽく感じ、実際コンクリートの床には薄く砂埃の層が出来ている。
昨日さくらにこの場所を教えてもらった段階では、何故かスナック菓子のゴミが放置されていた。
そんなお世辞にも優良とは言えない物件だが、ただ今の僕らに必要なものは備えていた。
それはスペースだ。
活用可能な物理的範囲。
それはどうしても作戦の準備には必要だった。
作業場兼物置きだ。
冷房なんかあるはずもなく、ユノたちの秘密基地の方がだいぶ快適だろう。
だが無いものねだりをしても仕方がない。
廃工場となるとユノのときに作った秘密基地のように地下で蟻の巣という風なのも厳しい。
つまりこのクオリティがこの町での妥協ラインなのだ。
「まぁとりあえず座りたまえよ。立ち話もアレだから・・・・・・」
僕は立ったまま、他のメンバーに着席を促す。
しかし服が汚れるのを躊躇ったのか、誰も座らなかった。
どらこは一瞬座りかけたが、周りの様子を見て行動を中断していた。
「ん・・・・・・まぁ、別に立ったままでもな・・・・・・」
微妙に口調が誤魔化しくさくなってしまうが、きっとそれは僕の気にしすぎだろう。
薄汚れた工場の中で、みんなの顔を見回す。
どれも知った顔だ。
「さて、じゃあ始めようか」
何であれ時間が惜しい。
僕の推測通り、まだきららは生かされているようだが、さくらに言われたように推測に過ぎないのもまた事実。
慎重かつスピーディーに。
僕らは多少無茶しなければならない状況にあるのだった。
続きます。