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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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救世主II(21)

続きです。

 どれだけ歩いたか分からない。

けれども、流石に違和感を覚え始めていた。


「おかしい・・・・・・」


 きららを探して家の中を彷徨い続け、そしてまだ見つかっていない。


「失敗したわね・・・・・・」


 一つ、確実に失敗だったと言えることがある。

それは何かと言えば、まぁ言わずもがな・・・・・・きららを追って単独行動に出てしまったことだ。


 そこまで広くないだろう・・・・・・なんて侮っていたが、そんなことはなかった。

単純に広く作るだけなら大した労力も要らないのだろう、知らんけど。


 この家は私が思うよりずっと広大で、そして単調。

どこへ行っても同じ景色の繰り返し。

何度も廊下の突き当たりを曲がる内に、気がつけばどこから来たのかどこに居るのかさっぱり分からなくなってしまった。


 楽観的すぎた。

こんなデタラメな構造の家できららが迷わないはずもなく、また私が同じように迷う確率も低い。


「しかし・・・・・・本当にアンキラサウルスなんて居るのかしら・・・・・・」


 また何度目かの曲がり角を曲がる。

これだけ自分の住処を踏み荒らされて、それでもそれを容認しているなんてあり得ることなのだろうか。


 家の構造や広さをこんな風にぐちゃぐちゃに出来るなら、その中を歩く人の位置が分かるように出来ていて不思議じゃない。

というかそうでないとむしろ不自然なくらいだ。


 それなのに私は出くわさない、襲われない。


「まぁいつでも返り討ちにする準備は出来てるけど・・・・・・」


 自分の足音が耳に張り付く。

何の気配も無く、音も少なく、まるで現実じゃないみたいに廊下は続いている。

きらら程派手に怯えることはないが・・・・・・。


「まぁ・・・・・・少し不気味というのも分からなくはないわね」


 その気味の悪さは電気が点いていようとも払拭されるものじゃない。

おそらく私の恐れの根源にあるものはきららと違う。


 この何も無さが不気味というか、恐ろしいのだ。

何も無いはずはないのに、拍子抜けするくらい何も起きない。


「あるいは既に何か起きているか・・・・・・」


 スバル達の方と既に接触して、そこで足止めされている・・・・・・という意味ではない。

既に敵の手のひらの中というか、もう策にハマっているんじゃないかということだ。


 奇妙なことにそんな感覚が確かにある。

勘が鋭いとか、そういう風に自分のことを思ったことは無いが、その感覚を頭の中から排除出来ない。


「はぁ・・・・・・」


 歩きながら天井を見上げる。

細長い電灯がぶら下がっている。

それがずっと続いている。

到達するべき目的地も、その果ても見えてこない。


「一旦・・・・・・休むのも手かもしれないわね・・・・・・」


 こう変化の無い景色をずっと見せられていると、なんだか息も詰まる。

きららを見つけないと、と足は急いていたが、今はたぶんどれだけ歩いても見つからないだろうという無力感の方が強い。


 だったら足を止めてみるのも一つの手だ。

とにかく流れを変えなければならない。


 今一番近くに見えるドアまで早歩きで向かう。

最初の頃こそこの扉の向こうにきららが居るかもしれない、あの扉の向こうにきららが居るかもしれないと思っていたが、今はどの扉の先にも誰かが居るかもという期待は湧かない。


 だから、誰も居るはずがない・・・・・・そう思って、ドアノブを捻った。


「わ・・・・・・」


 すると今までと違う景色が飛び込んでくる。

今までどの部屋の電気も何故か点いていたが、この部屋は闇に満ちている。

そしてその向こうに、誰かの息遣いを感じる。


「・・・・・・」


 期待と恐れ半分ずつで、少し汗が滲む。

ただ奥に居るのがきららだろうと、救世主だろうと、はたまた幽霊だろうと、ドアを開けてしまった時点で後戻りは出来ない。


 だから。

迷わず電気のスイッチを入れる。

照明が点滅しながら闇のモヤを払う。

そして闇の奥の人影の正体をあらわにした。


「・・・・・・さくら?」


 光に照らされた少女が不安そうに上目遣いでこちらを見上げる。

部屋の隅で膝を抱えて丸まっている少女。

その姿は間違いなくきららのものだった。


「よかった・・・・・・」


 ひとまずはその姿を見て安堵する。

そして今までの疲労がドッと押し寄せてくる。


「ほんとに・・・・・・何やってんのよ・・・・・・」


 胸の内には「よかった」が反響しているが、それとは関係なしに口は悪態をつく。


 勝手に駆け寄りそうになる足をなんとか制御して、きららのそばに歩み寄った。


「さくらぁ・・・・・・!」


「うっさいわよ、バカ! もう・・・・・・」


 ドカッときららの横に腰を下ろす。

そうしている間にも、変な笑いが込み上げてきた。


「流れが・・・・・・変わった」


 そう小声で呟く。


「さくら・・・・・・?」


 きららは聞こえなかったようだが、それでいい。

あんたに話したんじゃないんだから。


 幸運だ。

と同時に問題も残っている。


「あとはどうやって戻るかね・・・・・・」


 現在地は見知らぬ家の見知らぬ部屋。

東西南北なんか分からないし、星も見えない。

星を見て何かが分かる程の知識も無い。

そもそも真昼だし。


 ただひとまずは・・・・・・。


「ちょっと休憩」


 予定通り、休むことにした。

続きます。

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