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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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救世主II(10)

続きです。

 ガタゴトと揺れる車体の外に青空が流れる。

広がる町並みはまだ見覚えのある姿をしていた。

もっとも駅周辺となれば私たちの住む町よりはだいぶ発展してるので、見覚えがあると言ってもそこまで馴染み深いわけじゃない。

せいぜい親の買い物に着いて行くくらいの用しかない。

小学生にとっての遊び場としては少し遠すぎるのだ。


「まぁ間に合ったね・・・・・・」


 スバルがそう言って一息つく。

どうやら電車の時間は結構ギリギリだったらしい。


 電車内はみこちゃんの言った通り涼しく、また人もまばらなので快適だった。


 五人というのは結構な人数なので、さくら、私、スバルの順で並んで座り、みこちゃんどらこちゃんは向かい側に座っていた。

一応なんとなくは人数のバランスをとるために、ゴローは今はどらこちゃんの頭にしがみついている。

どらこちゃんはすごく邪魔そうだ。


「さてさて、それじゃ転の説明といこうか。この先少しずつ人も増えるだろうし、乗り換えだってある。まぁ落ち着いていられる内にってわけだ」


「転って・・・・・・さっきの?」


 なんだか勝手にいかにも凄そうな名前を付けられてしまった。

見た目がそんなに変わっていないのを見ると、たぶんそんなに手を加えてはいないのだろう。


「説明って言ったって・・・・・・前のと使い方同じだろ?」


 どらこちゃんがゴローを引き剥がそうと奮闘しながらスバルを見る。

スバルはそれに腹側に抱えた荷物を漁って、一枚の紙を取り出した。

横からちょっとその紙を覗いてみると、大した文量でもないが文字が書いてあるのが見える。

図などは無いが説明書のようなものだろうか。


「まぁそれで使えないことはないんだが、製作者としてはどうせなら正しいプロセスで起動してほしいんだ」


「いや私が製作者・・・・・・」


 私の呟きを無視してスバルは続ける。


「禁忌武装・転は、さっきも言ったと思うが何より万人に扱えるというのが肝だ。その手軽さ故にまさに禁忌といった感じになってしまうかもしれないが、しかしただ強度を高めるだけじゃつまらなかったから」


「そんな理由で要らん改良したのね・・・・・・」


 スバルの言葉にさくらが呆れる。

私もいつも呆れられてばかりなので便乗して「ほんとほんと」と呆れておいた。


「まぁそう言わずに・・・・・・。あって損するものじゃないだろう?」


「得もしないのよ」


「つまらん奴め・・・・・・」


 互いに視線も交わさないまま、水が流れるようにスバルとさくらが言葉を交わす。

事情を抜きにした場合、案外相性いいのかもしれない。

もしくは最悪かのどっちかだと思う。


 二人の無駄話を咎めるように、電車が一度大きく揺れる。

スバルはそれに咳払いをして説明に移った。


「失敬。話が逸れたが説明に戻ろう。まぁ難しいこたない」


「どうだか」


 さくらがスバルをジトーっとした視線でなぞる。

特別な考えは無いが、なんとなくさくらに体を寄せた。


「さて、転の使い方は・・・・・・なんと簡単、その名前を呼ぶだけ! 禁忌武装・転、起動と言って貰えればそれに応えてくれる! 便利!」


 無駄に勢いよくスバルは言う。

その大袈裟っぷりというか振る舞いにどこか既視感があると思ったが、たぶんコマーシャルだ。

つまりスバルは自分の・・・・・・じゃなかった、私の発明を宣伝しているのだ。


「まぁ・・・・・・でも、別に無くてもいい・・・・・・ですよね・・・・・・」


 みこちゃんはそんなスバルを見て申し訳なさそうに頬を掻く。

そんな態度の割には発言は容赦なかった。


「はぁ・・・・・・まぁ結局君たちには無くてもいい機能よなぁ」


 スバルがあからさまに落ち込む。

肩を落として項垂れる。

その視線は何故か私の方にチラチラ向いていた。


「?」


「はぁ・・・・・・・・・・・・」


 その意図を掴みかねていると、スバルがわざとらしいため息をする。


「あ、慰め待ち?」


「そういうこと。分かったなら黙って慰めてほしかったよ」


 そう言ってスバルは体を起こす。

最初から期待もそこには無かったようで、既に落ち込んでる様子も無かった。


 線路は続く。

私の知らない街を目指して。

続きます。

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