救世主II(5)
続きです。
エアコンの恩恵をフルで受ける為に、服を少し捲る。
すると冷たい空気がヘソを撫でた。
「そんなゴロゴロして・・・・・・今日どうしたのよ?」
「どうしたって・・・・・・?」
寝返りをうって、さくらの方に向く。
自分の髪が視界に垂れた。
「なんかやけに今日グダグダじゃない。夏バテ・・・・・・?」
「あ、あぁ・・・・・・なるほどね」
さくらのその疑問の答えとなるものには、心当たりがあった。
というのも単純に寝るのが遅かったというだけの話だ。
「ちょっと寝不足なのさぁ・・・・・・」
言っている内にも欠伸が出てくる。
確かにちょっとボーっとしてるかも。
「なんでまた?」
さくらに問われて、何だったけと考える。
一番最初に思い出されたのはゴローとだべっていた記憶だった。
ただメインはそっちじゃない。
私が昨晩やっていたこと、それは球の改良だ。
「あの、ほら・・・・・・球あるじゃん? あれ改良してたの」
「ああ、あれ・・・・・・」
さくらもすぐにピンときたらしく、納得する。
「で、出来たんか・・・・・・?」
するとそこにどらこちゃんが混ざって来た。
その言葉に少し痛いところを突かれた・・・・・・気がした。
昨晩は時間ばっかり過ぎていって、結局成果は無い。
私の発想力では、とてもじゃないが強化には繋がらなかった。
というかそれ以外のことについて考えてた時間の方が長かった。
それで気づいたら寝落ちしていた。
「出来て・・・・・・ないです・・・・・・」
誤魔化しようもないので、正直に白状する。
どらこちゃんは「別に責めてるわけじゃねーっつの」と軽く笑った。
しかし実際完成させねばならないことに変わりはない。
それもおそらく締め切りも近い。
「・・・・・・というわけでスバル、どすか? なんかスバルの力で強く出来ない?」
パッと体を起こしながら、みこちゃんに端末の解説をしているスバルに向く。
完全に丸投げだが、昨日の時点で既にスバルに頼ってみるという考えはあった。
スバルは私の言葉に一旦解説をやめて、そしてニヤリと笑みを浮かべて頷く。
そして紙コップに麦茶を注いで、一気に飲み干した。
「お、おお・・・・・・?」
どういう意図なのか分かりかねて、少し戸惑う。
そうしている間に、スバルは紙コップを勢いよく床に置き、口元を腕で拭った。
「要は君らのあの武器の改良に手を貸してほしいわけだ」
「あ、うん・・・・・・そう、だけど・・・・・・」
「実は君らのあの武器も解析済みでね・・・・・・。丁度いい。他の話にも関わることだから話をしようか。あと・・・・・・改造なら任せてくれて構わないよ」
私の言葉はスバルの何かしらのスイッチを押したらしい。
その言葉が止まる気配はもう既に無い。
「あの・・・・・・まだきゅうけ・・・・・・」
まだ休憩が始まって十分も経っていない。
飲み物も来てこれから本格的にダラダラって感じだったのに・・・・・・。
「まずはね・・・・・・」
スバルはまるで私の言葉なんか聞こえていないように振る舞う。
というか実際に聞こえていない。
「諦めなさーい」
さくらが私の姿勢を正すように肩を引く。
そうして、話を聞く姿勢を無理矢理作らされた。
「まぁ聞きましょう」
みこちゃんが慈悲の心で麦茶を注いだコップを渡してくれる。
その後みんなにも配っていた。
集まった時はどうしてバルスが来ていないのかなんて思ったけれど、その理由が今分かった気がする。
バルスの大の苦手、長く小難しい話が始まる。
それは私も苦手なものなのであった。
続きます。