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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
332/547

救世主II(3)

続きです。

 窓に映る木の葉の影が、部屋の床に投影される。

風はあまり吹いていないらしく、動きは小さかった。


「さて・・・・・・。まぁ出し惜しみするようなことじゃないから、前置き無しに言うよ」


 スバルは真面目な瞳でそう前置きする。

しとるやん、前置き。


「まず模倣犯というのは、簡単に言えば真似っこだよ。ユノの真似をして、人を襲っているんだ。それが僕の言う救世主。彼女はそう自称しているからね」


「いやユノも自称してたし、それならもっと分かりやすい呼び名にしてよ・・・・・・」


 そんなわざわざややこしい呼び方をしないでも・・・・・・。


 しかしこれで話は見えてきた。

ユノを仕留める前に、その真似っこからやっつけると、そういうわけだ。


 そんなの勝手にやってくれよと言いたいところだが、実際に被害が出ているようだし仕方ない。


「ああ・・・・・・それだが、ユノは絶対に救世主を自称したりしないよ。色々訳ありでね・・・・・・。ユノは救世主って言葉が大嫌いだ」


「ああ・・・・・・そうなの・・・・・・」


 一旦そう飲み込みかけて、引っかかる。


 ユノは救世主を自称しない。

しかし私の記憶とはそれが合致しない。

何度目の接触だったか分からないが、確かに救世主を自称していたはずだった。


「あれ・・・・・・?」


 見間違うはずもなく、確かにあれはユノだったはず。


「ユノ、救世主って言ってなかった・・・・・・?」


 首を傾げてさくらの顔を覗き込む。


「少なくとも、私は・・・・・・聞いたこと無いわよ?」


 さくらの反応はいまいち。

果たして単なる記憶違いなのか、それともさくらがたまたま居なかっただけなのか。


 その問いに答えを出したのは、今は本棚の上のぬいぐるみの隣に落ち着いているゴローだった。


「確かに自称してたニャ。その時一緒に居たのは、確かノワールだけだったニャ」


「あ、ノワールか・・・・・・」


 いまいち思い出しきれないが、ゴローが言うにはそうらしい。

つまり、私の記憶違いではなさそうだということだ。


「だそうだけど・・・・・・?」


 どらこちゃんが億劫そうにスバルに向く。


「なんかまた隠してんじゃねぇだろうな? 一応あたしらが勝ってんだけど」


「ああ、いや・・・・・・そんなつもりは決して」


 どらこちゃんが威圧すると、途端にスバルは曖昧な笑みを浮かべて取り繕った。


「まま、聞いてくれ。その模倣犯だが、姿はユノと同じだ。それだから、君がその時会ったのは模倣犯の方になる」


「同じ・・・・・・ですか?」


 みこちゃんがスバルの言葉に、少し考える仕草をする。

そりゃ普通は同じ姿の人間が二人居るなんて普通有り得ない。


 だが、そこはみこちゃん。

成り代わり経験者なので、答えを見つけるのにそう時間はかからなかった。


「となると、やっぱり超能力者ですか・・・・・・」


 まぁ私たちに戦いを頼むわけだから、自動的にそうなるだろう。

てか普通の小学生にそんな何人もの人を傷つけるなんて出来ない。


「いや」


 ところが、スバルの返答は違う。


「そこが一番重要なところなのだよ。模倣犯の正体は、能力者ではなくアンキラサウルスだ。僕がユノを解析した情報を奪って、ユノの力を模倣したアンキラサウルスなんだ」


「え・・・・・・」


 思考が滞る。

完全に予想外の答えだった。

しかもユノの力を取り込んだということは・・・・・・。


「あんた、余計なことしてくれたわね」


 私の同じことに考えが至ったさくらが舌打ちする。


「まぁ、予行練習には丁度いい、カモヨ・・・・・・」


 さくらに迫られて、スバルの目が逃げる。

実際出来てしまったのだから、まぁ仕方ない。


 ユノと同じ力を持ったアンキラサウルス。

まず間違いなく苦戦を強いられるだろう。


 しかしそこにスバルは更に難題を付け足した。


「そ、それでなんだが・・・・・・ね。コミュニケーションが取れるアンキラサウルスということで、君らには退治ついでに対話を試みて欲しいんだ」


「はぁ!?」


 さくらの怒りが噴火する。

ただでさえ勝てるかどうかってところなのに、流石にそれは・・・・・・。


「まぁまぁ、さくら。話が出来んなら戦わんでも済むかもしれんじゃないか」


「それは・・・・・・そう、ね」


 どらこちゃんに宥められて、さくらの怒りがちょっとおさまる。


「でも、そうか・・・・・・」


 どらこちゃんの言うように、確かに戦わなくても済むかもしれない。

もしかしたら仲間にだって・・・・・・。


「ま、そういうこと・・・・・・」


 スバルがひとまず落ち着いたさくらに胸を撫で下ろす。


「実際君たちだって気になるだろ? アンキラサウルスがなんなのか。これはそれを知る数少ないチャンスなんだ」


 アンキラサウルスとは一体何者か、それは私が昨晩考えたことの一つだ。

もう何度も戦っているが、知ってることは無いに等しい。


「分かった。・・・・・・みんなも、やってみようよ」


 スバルの条件に頷いて、みんなの顔を見回す。


「まぁ、そうですね」


「つかそれしかねーわな、結局」


 みこちゃんとどらこちゃんは好感触。

そしてさくらは・・・・・・。


「まぁ、きららが言うなら。スバルの役に立ってやるのは不服だけど」


 なんだか余分なのも付いてた気がするけど、それで問題無いみたいだった。


「よし・・・・・・満場一致だね。ならこの際だ、色々知ってることは話そう」


 そう言ってスバルはチラリと時計を見る。


「・・・・・・そうだね、ちょっと長話になりそうだから、一旦休憩でもしようか」


「あ、うん・・・・・・」


 時刻はまだ昼前。

考えてみたら朝っぱら・・・・・・というほどの時刻でもないが、こんなに大勢で集まってなかなか迷惑な客かもしれない。

まぁみこちゃんのお母さんだし大丈夫だとは思うけど。


 ともかくそんなわけで、一旦休憩という運びになった。

続きます。

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