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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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点滅(6)

続きです。

 私の接近をバルスは素早く捉える。

私がその側にたどり着く頃には、既にその瞳はこちらを向いていた。


「お帰り。楽しくなりそうだ・・・・・・!」


「ただいま」


 バルスはどらこちゃんを弾き飛ばしながら、私の再来を喜ぶ。


 それに私は斬撃で応えた。

バルスはそれを防ごうともしない。

そうする必要がないと分かりきっているからだ。


 私のレーザーソードはシールドに阻まれ、バルスには届かない。


「ま、分かってる」


 しかしすぐ次に転じる。

私とて今の一撃が通るなんて最初から思っちゃいない。


 どらこちゃんの動きを真似るようにして、その一撃を加えた後にバックステップで離脱した。


「はぁ・・・・・・君もか」


 だがバルスはそれを許さない。

私が後退するのとほとんど同時に、こちらに距離を詰めて来た。


「反射速度が異常すぎる・・・・・・」


 そうしている間にも、既に頭上ではオレンジ色が煌めく。

巨大な刃は、私を真っ二つにしようとその影を落としていた。


「くっ・・・・・・」


 反応が追いつかない。

来ると分かっているのに、体が追いつかない。

戦闘に集中することで加速した意識には、この体が重すぎた。


 咄嗟に防御姿勢を取ることも出来ず、刃の熱が迫る。

そして頭上で、炎が弾けた。


「わっ・・・・・・」


 その眩しさと熱、爆風に驚かされて尻餅をつく。


 何かと思ったが、その爆発の衝撃でバルスは剣に引っ張られるようにすっ飛んでいった。


「大丈夫か・・・・・・?」


「なんとか・・・・・・」


 頭の上から降り注ぐどらこちゃんの声に答える。

その声を聞いたどらこちゃんは、すぐさまバルスの追撃に駆けて行った。


 私もすぐに立ち上がって首を回す。

そうやって視界に収めたバルスは既に体勢を立て直しており、どらこちゃんとその熱をぶつけ合っていた。


 拳と刃が触れる度に火花が散り、お互いに大きくのけ反る。

しかしシールドがある分やはりどらこちゃんの方が不利だった。


「待っとけよ」


 数歩移動しながら攻撃を交わす二人の方を見て呟く。

レーザーソードも持ち直した。


 狙うは一点。

どこだっていい。

みこちゃんの射線が通る場所ならどこだって。


 みこちゃんに無茶をさせることになるのは承知している。

あの巨大な刃の下に潜り込まなければならない都合上、リスクも大きい。


 だが、今まで散々助けられたみこちゃんの腕と、そしてさっき聞いたさくらの「守る」という言葉を信じて地を蹴った。


 ぐん、と体が前に伸びるような感覚を覚える。

加速した体は空を裂いてバルスとの距離を縮める。

その間はずっとゴローに念を送るようにしていた。


 大して開いてもいなかった距離はすぐに消え失せる。

腕を伸ばせば触れられる位置にバルスが居る。


 バルスは当然こちらに気づいているが、私の横槍を問題にしていない。

今はどらこちゃんと戦うのが楽しいみたいだった。


 だが、そのシールドに対する過信が命取りになる・・・・・・はず。


 その隙だらけの姿に、レーザーソードを突き出す。

無事私の念は届いたようで、それと同時に発砲音も響いた。


 レーザーの赤い光の先端が、シールドに触れる。

シールドはその光を消散するように、光の波を展開させた。


「いけ・・・・・・!!」


 レーザーソードを握る手に力を込める。

先端がシールドの光の波に沈む。

そこに弾丸も合わさった。


 ぐに、と歪むようにシールドが変形する。

レーザーソードの先端は更に深く沈んだ。


 確かな手答えを腕の筋肉に感じる。

それは私に壊せそうだという予感を与える。


 だが・・・・・・。

それ以上はどれだけ力を加えても先には進まないのだった。


「残念だったね」


 バルスの眼球がきろりとこちらに向く。

その表情は確かに残念そうだった。


 一向にシールドを破れそうにない私たちに失望したとでも言いたそうな、諦めの目。


「くそ・・・・・・!!」


 そんな目で見られるのが嫌で、無駄だと分かっていても刃を押し当て続けた。


 シールドの反発力で、レーザーソードの先端がブレる。

力が分散する。


 が、それをカバーするように新たな力が加わった。

私の刃のすぐそばに打ちつけられた、黄金色の拳。

その籠手は、推進力を高めようと激しく火を噴いていた。


「どらこちゃん・・・・・・!!」


「いいから集中しろ!」


 見ると、どらこちゃんは左手でバルスの大剣を掴んでいる。

その左手はバルスとの力比べで震えていた。


 いつ押し負けてもおかしくない。

逆に耐えられているのが不自然なくらいだ。


 しかしそこに更にさくらも加勢する。

またいつの間にか近くに湧き出して、そして漆黒の短剣をレーザーソードに沿わせるように両手で押し込んだ。


 一箇所に三人も集まっているものだから、流石に窮屈で、でもシールドの歪みは確実に大きくなっていった。


 歪みが強くなるのに合わせて、レーザーソードが触れるその一点の光の強さも増す。

見たところ土俵際のねばりといった様子だ。


 いける。

もう少し、あと少し・・・・・・。


「きららちゃん! 頭倒してください!!」


 望んだままに、最後の一押しがやってくる。

みこちゃんの慣れない大声に、私は全力で頭を横に傾けた。


「いった・・・・・・!!」


 ごちんとさくらの頭に思い切りぶつかるが、この一瞬は耐えてもらう。

私も耐えるから。


 そして、私の頭のあった位置をプスンと小さな弾丸が貫く。


 瞬間、バルスの眉がぴくりと動きその表情を変えさせた。


 ぐっ、とシールドの反発力が最大に高まる。

私たちも負けじと押し込むが、しかし遂にシールドが砕けることはなかった。


「いやでも、少しまずいかもと思ったよ」


 バルスがどらこちゃんの手のひらから大剣を引く。

その瞬間押さえていた力が無くなったどらこちゃんは体が前のめりになって、そして顔面からシールドにダイブした。


「んだぁ・・・・・・ッ!!」


 それが歪んだシールドの復帰と重なり、不運にも弾き飛ばされる。

カエルみたいなポーズで地面にビターンとなった。


 それをチラッと見るだけで済ませて、バルスはもう一度繰り返す。


「本当に少しまずいかもと思ったよ。まさかあんなので壊されかけるとは思わなかった」


「あんなのって・・・・・・」


 どうやら私たちのやっていたことはかなり頭の悪いゴリ押しだったらしい。

それを戦うことしか頭に無い人に指摘されてしまうとは・・・・・・。


 しかしあんなのなんて言ってはいるが、それはバルスから失望を取り除くには十分だったらしい。


「いいね・・・・・・いいよ!」


 一度は真一文字に結ばれた口も、再びニタニタと闘争の喜びを噛み締める野蛮な曲線に変わっている。


 バルスが目を閉じる。

隙だらけだが、攻撃は届かないというのがなんとももどかしいところだ。


 そして興奮を抑えるように、ゆっくりとその目を再び開いた。

続きます。

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