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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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点滅(3)

続きです。

 バルスがスバルの声を背に受けて、牙を剥くように口角を吊り上げた。

その瞬間、バルスの体が光に包まれる。


「な、何・・・・・・?」


 何が起きるか分からないが、何にでも対応できるようにとある程度迎撃する姿勢をとっておく。

剣で体を防御するように、斜めに構えた。


「何って・・・・・・そりゃあ、能力・・・・・・だろうな」


 どらこちゃんの炎が勢いを増す。

それは単なる灯りとしてではなく、命を燃やす為の猛火としての姿だった。


「何か・・・・・・来ます!」


 バルスの纏う光が一際強くなる。

白く、闇を蝕む。

みこちゃんはその光を受けてじりじりと後ろへ下がった。


「人相手ならこれが使えるわね」


 さくらはそういい残して、影一つ残さず姿を消して隠れた。


 各々が迎え撃つ為の準備を済ませると、見計らったようにバルスが纏っていた光が霧散する。

その中から姿を現したのは・・・・・・。


「な、何ニャ・・・・・・これ・・・・・・?」


 光の中から姿を現したのは、機械仕掛けの鎧を身に纏ったバルスだった。


 いや、その姿は鎧と言うよりスーツと言った方が適しているかもしれない。

水着のようにぴっちりと体に張り付き、関節や胸部などの重要な場所は金属製の装甲で保護されている。

何よりも目を引くのは、全身に血管のように流れている光の筋だった。

胸部の装甲から光は始まり、そこから手足、指先へと分岐している。

その光の強さは一定ではなく、やはり流れているという感じだった。


 その青白い光を見つめていると、突然闘技場のスピーカーからスバルの声が響く。


『能力の発現を期待したかもしれないが、残念だけどこれは僕が着せた強化スーツだ。複雑な機能をつけてもバルスには難しすぎるから、単純に強化だけを担っているよ。あと・・・・・・シールド付き』


 何故か最後の一言だけ小声だったけど、スバルの高性能なマイクはしっかりその声も拾ったようだった。


「これが活用ってわけね・・・・・・」


 さくらが納得したように呟く。

思ったより近くから声が聞こえて少しびっくりした。

その反応を面白がったのか、ほっぺたもつつかれた。


「やめてよ・・・・・・」


 口ではそうあしらいながらも、頭の中ではスバルの言ったことでいっぱいだ。

主に最後の小声の部分。

シールド付き、の部分だ。


 今まで散々苦しめられてきたシールド。

それを持っていると言っていたのだ。

今まであれが壊せた試しがあっただろうか。


「いや、無い・・・・・・」


「何言ってるニャ・・・・・・?」


 私の記憶が正しければ、確か一度として破壊出来なかったはずだ。

散々スバルが説明していたバルスの破壊のセンスだが、果たして彼女はシールドを壊せるのだろうか。


 その本人は、余裕の出立ちで手のひらを握ったり開いたりしている。

何をしているのかと思ったら、おもむろに背中に手を回した。


 ガキン、と何かのロックが外れる音と共に、バルスはまるで背中から剣を抜くような動作をした。


 その観察は概ね正しかったようで、その動作の途中で姿を消していた刀身が姿を現す。

たぶんロックが外れると透明化が解除される仕組みなのだろう。


 その武器は、スーツと同じく機械仕掛け。

こちらもメイドインスバルのようだった。


 バルスの身長など当たり前のように超えている巨大な金属の剣。

その内部には歯車のようなものが覗ける。

直線的で鋭角に曲がった刃は、赤熱するように薄らオレンジ色の光を発していた。


 それをバルスは肩に担ぐようにして持つ。

その怪力は能力由来か、はたまた強化スーツ由来か、それは分からなかった。


「破壊することに破壊以外の意味を持たせるのはナンセンスだ。私たちは戦う為に戦う!」


 バルスが一旦は肩に担いだ刀身を振り下ろし、その切先を私に突きつけ戦線布告する。

構えていた剣には触れなかったので、いきなり奇襲を仕掛けるような性格ではないらしかった。


 発言内容は正直かなりトんでるが、その拘りからか卑怯には出ない。

ただシールドをその身に纏うことはポリシーには反していないようだった。

くそが。


「・・・・・・でも、いいよ。受けて立つ」


 バルスが突きつけた切先に沿わせるように、私も剣を突きつけた。

私の剣の切先は、シールドに触れその接点のエネルギーが可視化される。

なんだかこちらだけ先に攻撃してしまったみたいな感じになっているが、見えていないんだから仕方ない。

破壊しか頭に無いバルスもそれは分かってくれたみたいだった。


 そして、私の変身も始まる。


「久しぶりだけど・・・・・・」


 そっちがそういう感じならば、こちらも合わせねばならない・・・・・・わけじゃないが、なんとなく合わせる。


 目の前の少女と鏡写しに、私の着ていた服が同じ強化スーツへと姿を変えた。

ただ光の色だけは赤色に変えさせてもらった。

性能まで模倣出来ているかは不明だ。


 更に、バルスに突きつけた剣もその姿を変える。

金属を研いで出来ていたいわゆる片手剣は、雰囲気を崩さぬようにその刀身を迸るエネルギーの流れに変化させた。

いわゆるレーザーソード。

色はもちろん装備と合わせて赤色にした。


「なかなか似合ってんじゃねーか。ただきららのイメージカラー水色じゃなかったか?」


 どらこちゃんが私の変身を見て、首を傾げる。


「仕方ないじゃん。水色にするとなんか微妙に本家と色被るんだもん!」


 思えばさっきは私が模倣される側だったが、今回は模倣する側という事か・・・・・・。

さっきの戦闘の結果から、少し良くないジンクスが思いついてしまうが知らないフリをした。


 私のレーザーソードの光を受けて、バルスが嬉しそうに頬を歪める。


「いいね。・・・・・・始めよう!!」


 バルスが声を上げるのと共に、お互い地を蹴って距離を開けた。


 どらこちゃんの炎の光から遠退くが、その強化スーツの青白い光のおかげでよく見える。


 暗闇の中、私たちの光と、バルスが放つ光が互いを蝕みあった。

続きます。

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