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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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百鬼夜行(26)

続きです。

 嵐山が踏み出した一歩に地が揺れる。

瞬間、まるで弾け飛ぶような勢いで突進が始まった。


 槍が回転して、空気を掻き回す。


 みんなはほとんど同じタイミングで、左右に飛びのいた。


 突き出された槍が、私たちを分断する。

槍側に私とさくら、盾側にはみこちゃんとどらこちゃんが飛びのいた。


 嵐山は回避されたのを認識すると、すぐさまその突きを止める。

だが、その突きから別の攻撃に派生する前により早く動き出す影があった。


 地面から垂直に炎の柱が飛び上がる。

その中から飛び出したどらこちゃんが、嵐山の盾に拳を打ち込んだ。


「おらっ・・・・・・! どうだ!」


 だがその拳打は硬質な盾に容易く弾かれてしまう。

しかしどらこちゃんは退かない。


「・・・・・・そんならコイツで・・・・・・!」


 弾かれた拳をもう一度握りしめる。

その拳には、渦を巻くようにして炎が集っていった。


「だぁ・・・・・・ッ!!」


 技名も叫ばずに火炎もろともその拳を体重を乗せて突き出す。


 瞬間、炎が膨れ上がった。

炎が影となって躍動する。

熱風が吹き荒ぶ。


 その炎の広がりは息をつく暇もなく、盾を呑み込み、その内側までその手を伸ばそうとする。


「ふっ・・・・・・」


 しかしその攻撃に、スバルは笑って答えた。


「早速お披露目だ。回転式拡散盾の・・・・・・力の!!」


 スバルが高らかに言い放つと同時に、炎が吹き飛ぶ。

まるで振り解くみたいに、炎は切り裂かれ、散っていった。


「なん・・・・・・」


 どらこちゃんがその光景に目を見開く。

その体を嵐山は盾で突き飛ばした。


「どらこちゃん・・・・・・!!」


 みこちゃんが吹っ飛ばされるどらこちゃんを目で追いながら叫ぶ。


 どらこちゃんは体勢を立て直す間もなく、誰もいない観客席に墜落した。


「回転式拡散盾・・・・・・かニャ」


「あ、ゴロー・・・・・・」


 やっと喋れる程度には回復したようで、私の肩付近を飛んでいたゴローが呟く。

そのゴローは視線で私に嵐山の盾を見るように誘導していた。


 ゴローの視線を謎って盾を見る。

その盾は回転していた。


「ようは回転してあらゆる攻撃を受け流そうってことね・・・・・・。盾の溝はその為か・・・・・・」


 さくらが分析している間にも、その盾は回転を止める。


 そしてぐりんとこちらに頭を向けた。


「きらら、来るわよ!」


「う、うん・・・・・・!!」


 さくらが言うのと同時に、槍が薙ぎ払われる。


 巨大な槍が、目前に迫る。

無数のトゲを生やしたそれはこの上なく攻撃的で、更に振るわれる速度も素早かった。


 危なくトゲに足を引っ掛けそうになるが、ジャンプでそれを飛び越す。


 いくらロボットと言えど、あれだけの大きさのものの重さを制御するのはそう簡単じゃないはずだ。

だから、もう一度こちらに戻ってくるにしたって必ず制動が必要になる。


 その隙を突くために、着地と同時に嵐山の懐に飛び込んだ。


「な・・・・・・」


 だが、視界で嵐山の胴がそのまま回転する。

予想外の動きに言葉を失う。

そしてその胴の回転に伴ってやってくるのは・・・・・・。

どらこちゃんを突き飛ばした巨大な盾だった。


 嵐山は制動の隙を作らない為に、逆に勢いそのままその場で回転することを選んだのだ。


「きらら・・・・・・!」


 賢明に距離をとっていたさくらが叫ぶが、私の反応が追いつかない。


「ぐぅ・・・・・・」


 勢いのままやってきた盾に体の側面を打たれて、その衝撃が体を突き抜ける。

ゴローの首元から赤い宝石のかけらがこぼれた。


 衝突から一拍置いたタイミングで、気がつけば私も観客席まで飛ばされてその椅子の隙間にハマっていた。

完全にどらこちゃんの二の舞だった。


「いててて・・・・・・」


「痛いのはこっちニャ」


 痛くもない後頭部をさすりながら背もたれに手をかけて立ち上がる。

とりあえず宝石はまだ大丈夫なようで安心した。


 観客席から舞台を見渡すと、さくらが嵐山の後ろで踏ん張っているのが見えた。


 触手が不可視な所為で何をやっているのかは分かりづらいが、必死に嵐山を拘束しようとしているのだろう。


 さくらに綱引きされている嵐山は、多少ぎこちない動きだがこちらへ向かって来ている。

と言っても嵐山にとっては精々二歩程度の距離だ。


「くっそ・・・・・・なんだよアイツぅ・・・・・・。私狙い・・・・・・?」


「どうもそうみたいニャ」


 どのみち戦わねば勝てないのだ。

ならば逃げることもない。


 観客席の椅子の隙間を駆け抜けて、迷わず舞台へ飛び降りた。

続きます。

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