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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
3/547

My name is...(3)

続きです。


「こ、これ......あれ?この......あのやつ」

「そんなに慌ててどうしたね?一旦落ち着いて話してごらん」

部屋に入ってきたおばあちゃんは、私の要領を得ない説明に、穏やかに対応する。

その姿を見て、こちらも少し落ち着いたのか、頭が低速ながら回り出す。

「その......猫のぬいぐるみが喋った......」

「これかい?」

おばあちゃんが、ぬいぐるみを指でつつきながら言う。

ぬいぐるみは少し揺れるだけで、再び喋り出したりはしない。

おばあちゃんが、不思議そうにあちこちをペタペタ触る。

「特に......何もないみたいだよ?」

おばあちゃんが不安げな顔で、私を覗き込む。

「そんなこと......」

とは言いつつも、ぬいぐるみが喋ったことを未だに信じきれない自分もいる。だから自然と言葉も尻すぼみになる。

おばあちゃんが、私を安心させようと笑いかける。

「まぁ......また何かあったらお呼び。おばあちゃんいつでも来るから」

「う、うん......」

おばあちゃんが部屋を出て行くと、再びぬいぐるみと私だけの静寂が始まる。

体は硬直したままで、立つことも視線を逸らすことも出来ないでいた。

「やぁ」

整いかけていた呼吸が止まりそうになる。さっきと同じ声だ。

唾を飲み込んで、思い切って話しかけてみる。

震えた声が空気を揺らした。

「あなたは......誰?というか、何?」

ぬいぐるみは無表情のまま答える。

「ボクはマスコット。そんなに怖がらないで欲しいな。せっかくこんなかわいい姿をしてるんだから、もっと無警戒に接してくれよ」

「マスコット......?かわいい姿って言ってるけど、なんか喋り方微妙に可愛くないし......」

「ボクは改名戦争でキミをサポートする大切な仲間ニャ」

「いきなり語尾変えられても......」

私の言葉を受けてのテコ入れであることが明け透けだ。距離の詰め方が雑すぎて、警戒心は高まる一方。

ぬいぐるみは首を傾けて何ごとか考えている。

しばらくして、再び口を開く。と言っても顔のパーツは全く動かないが。

「ボクは改名戦争でキミをサポートする大切な仲間ニャ」

「......は?」

全く同じ台詞を吐かれてしまった。

何がしたいというのだろう。

「ボクはキミに色々と説明しなきゃならないんだけど、キミが質問をしないから話が広がらないニャ」

なんとも困ったような声色で言う。声の表情は豊かなようだった。

「質問......質問って?」

「キミ、ボクの話聞いて何も疑問に思わなかったニャ......?」

「かいめいせんそうがなんとかーってやつ?」

「よくぞ訊いてくれたニャ!」

別に何かを訊いたつもりもないけれど、勝手に一人......一匹(?)で盛り上がり出した。

「まず最初にキミは変な名前をしてるだろ......ニャ」

雑に語尾をつけながら、失礼なことをのたまってくる。

「別に変じゃ......」

「いーや、変ニャ!くそダサいニャ!」

「なっ......」

しばらく名前に関しては何も言われない生活を送っていたので、少しムッとする。

「ともかく、キミの名前は言ってしまえば呪いも同然ニャ。一生付きまとって、キミを苦しめ続ける。違うかニャ?もしかしたら今も何か悩んでることがあるんじゃないかニャ?」

「それは......」

開きかけた古傷と、そして今負っている傷が重なる。

「キミの顔を見れば大体分かるニャ。でも心配はいらないニャ!」

ぬいぐるみの声が明るくなる。

それに伴って私の気持ちは沈む。

「心配なんて、してないよ......」

私の声が小さすぎて聞こえなかったのか、話を続ける。

「キミが改名戦争に勝利すれば、キミは自分の名前を変えることが出来るんだニャ!どうだい?魅力的だろ......ニャ」

「私は名前を変えたくなんかない......」

鼻の奥がジーンとして、目頭が熱くなる。表情筋が震えて、いじけたような気持ちになる。

唇を噛んで、顔を上げる。

そこし涙が滲み出した視界には、猫のぬいぐるみ。

また首を傾けて、ぬいぐるみが話す。

「どうしてニャ?そんなに拘らなくたって......」

「お母さんからもらったものだもん。お母さんが私の為に考えてくれたものなんだもん」

感情が先行してしまって、思考が追いつかない。自分でも何が言いたいのかよく分からないまま、ただボロボロと言葉がこぼれる。

直感的に「あ、泣く」と言うことだけははっきり感じた。

「......分かったニャ。キミの気持ちは分かった。そんな顔がさせたかったわけじゃないニャ」

ぬいぐるみが机を飛び降りて、顔の前で浮遊する。

少し声色を優しくして続ける。

「だとしたら、キミは負けるだけでいいニャ。じきに改名戦争が始まる。キミには戦う理由は無いから、負けるだけでいい。心配はいらないニャ」

先程とは真逆の意味の“心配はいらない”。

ぬいぐるみの真意は見えないが、わけもわからないまま嗚咽が溢れ出した。

ぬいぐるみが恐る恐る私の頭に手を置く。すぐにその手は離れていった。

「一つだけ訊きたいことがあるニャ」

ぬいぐるみが言うが、私はまともに喋ることができそうも無い。

それを察してか、言葉を続ける。

「キミの名前はなんて言うのかニャ?」

知らなかったんだと思いつつも、かろうじて口を開く。

「き......らら」

「やっぱり変な名前だニャ」

「......」

「でもダサくなんかないニャ。キミが大切に思ってるから、ちゃんと、良い意味でキラキラしてるニャ」

続きます。

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[良い点] 喋り方が微妙に可愛くない……でコーヒー吹き出しそうに( ^∀^)ブフォ そして微妙に媚びるところに( ^∀^)ブフォ
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