百鬼夜行(11)
続きです。
太陽が薄い雲の上でジリジリ輝く。
その熱を如実に感じながら、陽炎ゆらめく道路を走っていた。
この道路は思った以上に高低差があるらしく、未だ電車・・・・・・嵐山の姿は見えない。
上空を見れば、青の中に小さくみこちゃんたちの姿が見える。
そっちからは嵐山は見えているのだろうか。
そっちを見上げて手を振ってみるが、距離が離れすぎていて反応はなかった。
まぁあったとしてもこっちから読み取れないだろうけど。
「てかさ・・・・・・なんとなくそうなるんじゃないかとは思ってたけど、やっぱりずっと着いてくんのね」
どこまで伸びているかすら定かではない路面を滑りながら、車体に並ぶ目玉を横目に見る。
『まぁね』
非常に鬱陶しい。
「なんで着いてきてんのさぁ・・・・・・」
『ナビだよ、ナビ。僕はいつでも地図を出せるからね。それで早く見つけてくれってこと』
ぶんぶんバイクの周りを飛び回る。
動きがうるさいからせめて同じ位置にとどまっていてほしかった。
でも、地図か・・・・・・。
「だからそーゆーのは早く言ってって! 見せてよ」
風に流されないように大声で言う。
『ほいさ』
するとすぐに目玉は私より少し前に出て、例の見取り図を展開した。
嵐山を表す点は二本の道が上下に重なっているところを丁度通過していた。
「いや現在地が分かんないんだけど」
『早く見つけてくれないと僕死んじゃうよ?』
などと言いつつも、スバルは現在地の説明をしない。
どうやら自分で考えろということらしい。
「もう・・・・・・役立たないなぁ・・・・・・」
愚痴りながらも加速する。
とりあえず今走っている道は今のところ一本道だった。
曲がるかどうかはそのタイミングで考えればいい。
見つめるのは真正面の奥の奥。
この道がどう続いているのか、それが現在地の把握には大切だ。
「ん・・・・・・?」
耳元でびゅうびゅう鳴る風の音にも負けない音が地響きのようにこちらに届く。
『君の仲間が接触したみたいだね』
「そうみたい」
スバルが言うのと同時に、風に火の粉が混じる。
炎のオレンジ色は見えなかったが、その爆発音は左側から聞こえてきた。
曲がる時は左。
それを忘れないようにとどめたまま、更に加速する。
それに伴って風の音も、エンジンの音も大きくなった。
たぶんもう会話は出来ないだろう。
そうして走っている間も、ズドンズドンと爆発音は断続的に響く。
もしかしたらどらこちゃんが場所を知らせるつもりでわざと派手にやってくれているのかもしれない。
見据えた路面が、緩くカーブを描き始める。
都合のいいことにその向きは左向きだ。
視線を傾けると、スバルが気を遣って地図を見やすい位置に移動してくれる。
嵐山との距離がそう遠くないことを考えると、なんとなく現在地も分かって来る。
それが合っているなら、このカーブが終わった後に再び直線に・・・・・・。
「ビンゴ」
道が真っ直ぐになった。
とすれば・・・・・・。
左前を向いて目を凝らす。
やがてその視線の先には、嵐山の一番後ろの車両が現れた。
見取り図には先頭車両しか無かったから、一体いくつの車両が連結しているのか分からないが、しかしその姿を捉える。
色は艶のない黒だった。
後はこの先の分かれ道で左に行けば合流出来る。
轟く音と一緒にやってくる火の粉が、バイクの風避けにぶつかる。
そしてやってきた分岐点に、思い切り車体を傾けて急カーブで滑り込んだ。
続きます。