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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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百鬼夜行(8)

続きです。

 外を見る。

少し位置が上がった太陽が、道路と重なって影をつくっていた。


 さくらはこれ以上もう話に加わるつもりはないらしく、部屋の隅に移動する。

どう声をかけたらいいか悩んで、結局何も言わなかった。


『さて、じゃあ君たちの準備は・・・・・・出来ていなさそうだね』


 目玉のカメラが私に向く。

その視線の意味を探ろうと自分の体を見下ろすと、自分が未だに寝間着姿なのを思い出した。


「あ・・・・・・」


『いや、まぁ準備の時間をあげよう。僕も出来るだけ長く生きていたいからね』


 私が何かを言う前に、スバルが着替えの時間をくれる。


「あ、じゃあどうせならちょっとシャワーだけ・・・・・・」


 もうすっかり寝汗は乾ききっているが、その所為で肌はベタついている。

まぁどっちにしたってこれから汗はかくのだろうが、どうにか出来るならそうしたかった。

寝癖だって直せるし。


『ああ、それくらいなら構わないよ。ただあれこれ理由を作って、ゲームを有耶無耶にさせるつもりはないから。そのつもりでいてね』


「う、うん・・・・・・」


 とりあえず入浴は許してもらえたので、浴室に向かう。

そんな必要ないのに、何故だか足は勝手に急ぐのだった。




「おい、さくら・・・・・・本当にいいのか?」


 部屋の隅でただじっと疎外感に沈んでいると、頭上から声が投げかけられた。


「いいのよ。いいの」


 本当にそれでいいのだろうか。

その疑問は当然私の中にもあった。

というかそれでいいわけないと、心のどこかが叫んでいる。

でも、私はやっぱりその気にはなれなかった。


「大丈夫よ」


 どうせアイツが死ぬつもりなはずがない。

これはきっと私たちの誘導を目的にしていて、その為のハッタリに過ぎない。

そうだったら、いいのにな。


 別にスバルが死ぬことに関しては本当に何も思わない。

どれだけ酷いことを言っていようが、アイツが死ぬことで私に働くマイナスはない。

それどころか・・・・・・。


 どらこが頭を掻きながら私から離れる。

こんな風に変な意地を張っている私にも、どらこは失望することはなかった。

その表情には諦めの色が表れない。


 それが嬉しくもあり、また苦しくもあった。


 でも、やっぱり私は揺らがない。

どんな形であれ、スバルの役に立ってやるつもりなんてどこにも無かった。


 今きららは能天気に入浴中だが、出たらきっとゲームは始まる。

私はただこの部屋でその結果を待つ。


 本当にそれでいいのだろうか。

再びその疑問が渦巻く。


 よくない、けど・・・・・・それ以外の選択肢は私には無かった。


 自然と口数が減る。

その分逆に周りの音には注意が向く。

様々な音が私を包んでいた。


 やがて、きららが入浴を済ませる。

いつもの似たような雰囲気の服を着て、髪を湿らせたまま部屋に戻って来た。


「ちょっと湯ざましみたいな? その時間貰ってもいい?」


『ダーメ』


「けち」


 きららの悪あがきが不発に終わる。

そして、ゲームは始まる。




『それじゃ、よーい・・・・・・スタート!』


 スバルが何の躊躇いもなく、ゲームの始まりを宣言する。

「えぇ、そんないきなり!?」と、多少焦るが、その焦っている時間すら惜しかった。


 その始まりの合図と一緒に、再び映像が映し出される。

私たちはまだスタート地点に立ってすらいないのに、スタートのポイントから嵐山は既に出発していた。

嵐山を表す点が、点滅しながら見取り図上を移動している。


「えっとこれ・・・・・・私たちもあの場所からスタート?」


『いや。君たちはどこから道に入っても構わないよ。もちろんゴール手前で待ち伏せっていうのも構わない。まぁその短距離で嵐山が止められる自信があるならだけど・・・・・・』


 そう言うスバルは止められない自信があるみたいだった。


「え、えぇ・・・・・・みんなどうする?」


 もうちょっと心の準備とか、そういうのが欲しかった。

焦るばっかりで、思考はここからどうしようより先に進まない。


 そうやってあたふたしていると、部屋の隅のさくらに目が止まる。

そしてすぐに気まずくてその目を逸らした。


「とりあえず嵐山の移動速度と、道の長さからしてそこそこ猶予はありそうニャ」


 ゴローが映像を睨んで言う。

確かに道の長さを考えると、そこまで早く着くということも無さそうだ。


「ひとまず徒歩じゃ流石に無理ですよね?」


 みこちゃんもゴローの横からひょっこり顔を出す。

流石に歩きじゃ電車に追いつくのは不可能だろう。


「じゃあ・・・・・・」


 あいにく小学生なので車の免許は持っていない。

どうやら久しぶりに自転車の出番のようだった。

超能力である程度性能は上げられるだろう。


 考えもまとまらないうちに部屋を出る。

階段を駆け降りて、自転車のある庭へと向かった。


 きっと今は悠長に考えている時ではない。

ゲームに参加したはしたけど止められませんでした、では余計に気分が悪い。


 だから思いついたことはすぐに行動に移す。


 とりあえずは分からないながらもどらこちゃんたちが着いて来ているのを確認して、今度は靴をちゃんと履いて、家を出た。

続きます。

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