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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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草陰の虚像(10)

続きです。

社会の授業は案の定寝てしまった。

しかし、さくらのちょっかいの所為......というかおかげでどらこちゃんの手を煩わせることはなかった。

六時間目の時は、机の引き出しにゴローを忍ばせておいて時々鉛筆で太ももを突いてもらったのでそもそも意識が飛ぶことがなかった。

まあ地肌に鉛筆はそれなりに後悔しているが......。

ともかく、今日も無事に一日を終えることが出来たのだ。

今日もそそくさと帰ろうと周囲を窺う。

「あれ?」

いつもならまだ座ってるはずのさくらが、既に出口付近に居るのを見つける。

少し不思議に思って見ていると、その姿は廊下へ消えてしまった。

「どこ見てんだ?おまえ」

「うぇひっ......!?」

突然のどらこちゃんの声に肩が跳ねる。

肩ごしに覗くどらこちゃんの瞳は訝しげだ。

みこちゃんもどらこちゃんの後ろからひょっこり頭を出した。

この二人いつも一緒に居るな......と密かに思った。

「あ......なんでもない」

別にいつもより帰るのが早いことなんて大したこともないだろうから、特に話すことはなかった。

「ふぅん......」

どらこちゃんは目を細める。

まだ疑いが抜けきらないみたいだ。

「ほんとになんでもないって......」

割とこう言う状況あるあるだと思うのだがそれでいて対処法が開発されていないなぁ......とかどうでもいいことを考えていると、どらこちゃんが表情を変える。

「まぁ、いいけど」

そのままみこちゃんを連れて教室の外に出て行ってしまった。

「あぁ......」

たまには私も一緒に帰りたかったのだけれど置いてかれていってしまった。

「今からダッシュで行ってなぁなぁで合流するニャ」

私の情けない声を聞きつけたゴローが机から生えてくる。

「なんかそれ情けなくない......?ていうかなんで分かったの?」

「まぁ大体分かるニャ......キミの性格的に」

「はぁ」

というわけで、情けない手段を選んで教室を出る。ちょっと早歩きで。

トイレの前を通り過ぎて、階段を下りる。

頭の中では速く走るイメージトレーニングをしておいた。たぶん効果は薄い。

「全然いないなぁ......」

昇降口の前まで来て、立ち止まる。

辺りをきょろきょろ見回すが二人の姿は見えない。

流石にまだ校舎から出るほど時間は経っていないはずだ。

「逃げられた......?」

今居ないなら全力疾走で逃げられたとしか思えない。

「いやなんでやねん......」

一人でオールドタイプの突っ込みをかます。

ともかく誰もいないんじゃ仕方ない。

とぼとぼ下駄箱に向かおうとするその時、保健室に入って行くさくらの姿が視界の隅に映った。

なんだろうと思い、そちらへ向かう。

もししょうもない理由で怪我をしたとかだったら入っていってやろうかと思っていたが、内側から聞こえるくぐもった声は思いの他真面目な感じで扉からは手を引いた。

別にそうする必要もなかったのだろうけど、聞き耳を立てて少し扉から離れた。

しばらくすると保健室からさくらが出てくる。

慌てて掲示物を見る振りをしたが、さくらは私のことなど気にも留めないで歩いて行った。

その長いスカートが目が釘付けになる。揺れるたびに、ドキッとする。

「やっぱ何かあったじゃん」

「うひぁっ......!」

どらこちゃんが私の肩に手を回す。

「私らも協力したいって言ったろ?何だったんだ?」

どらこちゃんがニヤリと笑う。

「なっ、どこから!?」

その答え合わせはみこちゃんがしてくれる。

近くのトイレから出てきたのだ。

「で......!何隠してたんですか?」

みこちゃんが歩み寄る。

「今から訊くとこ」

どらこちゃんはそう言うが、私は聞いたことを言うべきではないと思っていた。

ゴローも同じ考えらしく助け船を出してくれる。

「ほんとに何でもないニャ」

「ん?そなのか?」

根が素直なのと、ゴローは基本的に信用されてるみたいでわりかしあっさりと納得しそうになる。

ところがそれも開く保健室の扉で遮られる。

「あなたたち......もしかして聞いてたの?」

そう言う保健室の先生は、なんとも言えない複雑な表情をしていた。

続きます。

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