秘密基地侵攻(22)
続きです。
苦し紛れにきららちゃんがばら撒いた礫が機体を打ち付ける。
跳ね返ってきたものが水槽のガラスを打つが、細かい傷すらつかないのだった。
「大丈夫ですかね・・・・・・」
意図せず、表情がかげる。
手のひらをキュッと握る。
その手のひらは空っぽで、拳銃は握られていないのだった。
「まぁ、なんとも言えないよな・・・・・・」
どらこちゃんが、ガラスに張り付いて眉間に皺を寄せる。
その言葉の通り、戦況は難しい。
「あ、でもあれ・・・・・・!」
水色の方のロボットの腕の動きがぎこちないのを見つける。
その関節からは青白い光が弾けていた。
「気づいたみたいだね。どうも阿形の方は右腕の調子が悪くてね。前に一度壊れたんだが、それが直りきっていないのかもしれない」
リモコンを握った女の子、確か名前はスバルと言っていたか・・・・・・その少女は苦い表情を浮かべて白状した。
「それって弱点じゃない・・・・・・」
さくらちゃんがそのスバルを責めるようにねめつける。
「ああ、弱点さ。だから教えるわけないだろう」
と、スバルは悪びれる様子もなく答えた。
水槽の中で、ロボットの影ときららちゃんの影が交錯し、そして何度も入れ替わる。
接触の度に火花を散らし、音はほとんど届かないにも関わらずその激しさを物語っていた。
きららちゃんがロボットの右腕を切り裂く。
ロボットはその腕を自ら引っこ抜き、放棄する。
そこから戦いはより一層激しいものになるのだった。
きららちゃんが、ロボットが、水槽の中を縦横無尽に駆け回り、その度に火花が明滅する。
しかし、それは突然起こった。
黒いロボットの反撃に、きららちゃんの体が軽々と吹き飛ばされる。
そこまでなら今までも何度か見た光景だったが、そこから先が明らかに今までと異なっていた。
きららちゃんが空中で身を歪めたまま、何かを堪えるようにしている。
表情までははっきりと見えないが、やはり様子がおかしいようだった。
「どうしたんですかね・・・・・・?」
心配ではあるけれど、きららちゃんのことだから何かの作戦のつもりかもしれない。
だから首を傾げるにとどめた。
しかし、どらこちゃんたちはそうもいかないみたいだった。
その表情に焦りが滲む。
きっと二人はきららちゃんが何をしたのか分かっているのだろう。
こんな時も、やっぱり私はみんなの居る場所から少し遠いみたいだった。
それが少し悔しくも、悲しくもある。
「おい! スバル!」
どらこちゃんが半ば怒りの色すら露わにして、開けろとガラスを叩く。
きららちゃんは一瞬それに気づいたようだが、構わずに羽がちぎれた虫が無理矢理に飛ぶみたいな不自然な状態でロボットに突っ込んで行った。
「あんのバカ・・・・・・!」
どらこちゃんは苛立ちを隠しもしない。
ガラスは開きも、割れもしなかった。
続きます。