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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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秘密基地侵攻(20)

続きです。

 おそらく二機とも状況は同じ感じ。

そうだと踏んで、視界に収まる片方だけに注意を向けていた。


 磁石は突き飛ばされた時に手から離れた。

今はくっついた装甲と一緒に無重力旅行している。


 どうにかやりようは無いかとリュックを漁る。

手のひらに当たる感触に、翻弄される。

その一方で問題なく姿勢を立て直すロボットに気は急く。


「ああもう・・・・・・なんでもいい!!」


 時間をかけて吟味している猶予なんて無いのだった。


 リュックの肩紐をむんずと掴む。

もうなんだっていい。

どうにでもなれ。

半ばやけくそで、リュックの中身を全てぶちまけた。


 飛び散った小道具たちが、スペースデブリよろしく宙を舞う。

こうして見るとなかなかカラフルで面白い。


「じゃなくて・・・・・・!!」


 遅れて焦る。

道具を道具のままばら撒いたって囮にもならないじゃないか。

後、単純に水筒とかは磁石とは違ってそんな風に捨てるような真似をしてしまうのは勿体なかった。

中身だってまだ入っているのに・・・・・・後で回収出来るだろうか。


「あー・・・・・・えっと、ととと・・・・・・」


 だが今慌てて拾い集めるわけにはいかない。

ならばこのまま押し通す!


「い、いしつぶて・・・・・・!!」


 長考・・・・・・の時間は無いから、どこかで聞き覚えのある技名が口から飛び出す。

ばら撒かれた道具たちに触れることは出来なかったが、技名に反応してしっかりと大小様々な石に化けてくれた。

タオルを除いて。


 私に襲いかかろうと足を折りたたむロボットに、意思を持ったかのように高速で石が吸い寄せられる。

この速度ならほとんど銃弾と変わらないだろう。


 バラバラと機体に石がぶつかる音が響く。

こっちとしては残りの物資を全部使った技だったが、それは装甲に細かい傷をつけるだけだった。


 しかし、当たりどころが良かったのか水色の右腕の関節からは火花が散っている。

上手く指先が動かないのか、薙刀が手から滑り落ち・・・・・・はしないけど、その手を離れた。


 右腕の機能に異常をきたした水色と、相変わらずほとんど無傷の黒色が迫る。


 その二機の隙間を縫って、追い討ちをかけるように水色の右腕に刃を突き刺した。


 ズガガガ、と振動が骨に響く。

剣を握る手を更に上からもう片方の手で押さえて、絶対に離してやるものかと耐えた。


 剣はその刃よりずっと太い骨組みを砕いていく。


 目の前で火花が血液のように迸る。

頬にそれが触れると、ピリッと熱かった。


 やがて機体が完全に通り過ぎる。

私の体もその勢いに引っ張られたが、刃は間違いなく肘から手のひらにかけてを縦に割いていた。


「いける・・・・・・」


 攻撃が通じる。

その手応えに確かなものを感じながらも、警戒は怠らない。


 視線の向きを変えれば、すぐに黒が視界に映った。


 私が身を翻しきる前に、その肩が私に突き刺さる。


「ぎゃ」


 くの字に折れ曲がった状態で吹っ飛ばされた。

だが相方が傷を負わされて怒っているのか、攻撃の手を緩めない。


 勢いそのままに距離を詰め、私が自分の慣性を制御出来ていないところに薙刀の刃が割り込む。


 今度はそれが巻き起こす風ではなく、刃そのものが叩きつけられる。


 まず最初に衝撃がやってきて、壁にぶつかるまで追いやられた。


「くぅ・・・・・・」


 脳が縦向きにでもなりそうな衝撃に額を抑えながらも、目は状況を把握しようと機能する。


 綺麗にスパッと切りつけられた服から、自分のヘソが見えた。


「あー・・・・・・服がぁ!」


 分断こそされていないが、まぁそれはもう隠しようのない傷を作られてしまった。

これが宝石がなかったら私の胴体がすっぱりだったわけだ。


 黒色が方向転換をしながらまたこちらを目指す。

水色も使いものにならなくなった腕を左手で引っ張ってもいでいた。


「くっそ・・・・・・よくも・・・・・・」


 おばあちゃんに怒られるの確定だ。

その怒りを込めて、空を蹴る。


 突撃しようとしている黒色に一直線で迫った。

黒色もそれを真正面から受け入れる。


 私が構えた剣と、黒色の薙刀が擦れ合って火花を散らした。


 お互いにその刃を押し合って、少し距離が開く。

それでも逃げもしなければ逃しもしないと、一回転して剣を横に薙いだ。


 黒色の薙刀と再び交錯する。

攻撃範囲の差からして、このままチャンバラするのは少し不利だった。

実際に、私の刃はもう機体には届かない。


 黒色の三撃目の衝撃を利用して離脱する。

やはり私が打てる手は、一気に詰め寄ってズバーンだった。


 しかし脅威は黒色だけではない。

忘れちゃ困るぜとばかりに水色の右腕が投擲された。


 ぐるぐる回転しながら右腕が迫る。

それを避けると、案の定水色本体も追随していた。


 その本体を引っ掴む。

なるべく手の届きづらそうなところの突起にしがみついて、その体に取り憑いた。

これで黒色も手を出してづらい・・・・・・はず。


「ゴロー・・・・・・大丈夫!?」


 泳ぐ水色に振り落とされまいとしながらダメージの確認をする。


「切腹が終わったから介錯待ちって感じニャ。正直後どれくらいもつか・・・・・・!!」


 ドリルやらレーザーやらにひーこら言いながらも、声を張り上げて答える。

半分何言ってんだって感じだったけど、余裕は無さそうだった。


 ここからどうするか・・・・・・。

どう勝つか。

そう考えると自然と表情も険しくなるのだった。


「まず・・・・・・」


 これ以上攻撃は喰らえないなんて考えていたそばから、しがみつく私に影が被さる。

その巨大な影は黒色のものだった。


 器用に刃に引っ掛けるように、私の体を引き剥がす。

水色を傷つけることなく簡単に剥がされてしまった。


 おまけにとばかりに服にも傷が増える。

いよいよもう後は無さそうだった。


 もう攻撃は喰らえない。

かと言ってこいつらもしっかり倒さねばならない。


 とにかくミスなく、完璧に。

そんなこと・・・・・・。


「出来る・・・・・・?」


 私に、私なんかが完璧な仕事をこなすことが出来る?


 それは・・・・・・。


「やるしかない・・・・・・」


 等身大では敵わない。

ここで踏ん張る。

身体測定じゃないけど、今は背伸びが必要なときだった。

続きます。

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