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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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秘密基地侵攻(3)

続きです。

 階段を登ってみこちゃんの部屋に足を踏み入れると、まだクーラーを起動していないのに冷たい空気が私を出迎えた。

たぶんついさっきまで使っていたんだと思う。


 集合時間までそう何分と無いが、それまでの短い時間の為だけにみこちゃんは再びクーラーを起動した。

クーラーは低く唸りをあげ、やがて涼しい風を吐き出す。

私はその風を肩に浴びながら部屋の中をウロウロしていた。


「何やってんのよ?」


「何やってるニャ?」


 ゴローとさくらに、ほとんど同じタイミングで尋ねられる。


「え、いや・・・・・・ね」


 それ程言いづらいわけでもないはずだが、答えを濁して頬を掻いた。

そりゃ落ち着きなくウロウロしてないで、早く座ればいいという話だろう、向こうからすれば。

しかしそう出来ない・・・・・・そうしてもいいものかと悩む理由が私にはあった。


 ズボンと下着のゴムを引っ張って、冷たい空気を取り込む。

そう、この汗だくの体で座っちゃまずいだろというのが理由だった。

乾いてからじゃないとおそらく床に尻跡がつく。

それは・・・・・・まぁ、よろしいことではないだろう。


 チラチラとみんなからの視線を頂戴しながら、それから逃げるみたいにウロつく。

やがてみんなも慣れて、こっちを気にすることもなくなった。


「それで・・・・・・さっきも聞いたけど何持って来たのよ?」


 さくらが部屋に上がる前のことを思い出したのか、未だ立っている私のリュックの肩ベルトに指を引っ掛けて引っ張った。

みこちゃんとどらこちゃんは大して気になってもいないみたいでじゃれあっている。

ゴローも中身は知っているし、興味があるのはさくらだけだ。

もしかしたら中身が何かって言うより、自分が渡したものがちゃんと使われているのかを確認したいのかもしれない。


「えっとね・・・・・・」


 ベルトから腕を抜き差しして、リュックを体の前に抱えるような形にして中をゴソる。

割と適当に選出して入れたので、自分でも何を入れたかの記憶が怪しかった。

だがもう色々じゃ済まされないだろう。


 内容物を一つ一つ確認するように、ふんふん言いながらリュックを漁っていると、さくらが手際の悪さに痺れを切らしたのか私からリュックごと奪った。


「あっ・・・・・・」


 するりと器用にリュックを外され、あっという間に座っているさくらの手元に持っていかれてしまう。

何を思ったのか、少し匂いを嗅いでいた。

今はとにかく汗が気になるので、やめてくれと思った。


 それから、特に何も言わずに中身を確認し始める。

さくらは私のように中で確認しようとするのではなく、外に一つずつ取り出し始めた。


「まず水筒・・・・・・ね。さっき飲んでたやつ」


 ゴトリと、水筒が床に置かれる。

なんだか持ち物検査をされてるみたいで少しどきどきした。

持って来ちゃいけないもの持って来てないかな、なんて内心焦るけれど、そもそも何を持って来ても構わないはずだ。


「次は・・・・・・まぁいつものね」


 ぺチリと、取り出されたものが床を叩く。

いつもの。

何かと使い勝手のいい線引き君だった。

武器イコール剣というのは安直すぎるかもしれないけど、最初に使ったのがコレというのもあって一番馴染んでいた。

まさしく、いつものって感じだ。


「で、何コレ?」


 早くもさくらは別のものを取り出し、そっちの話題に移る。

さくらは訝しげに取り出したものを摘んでいた。


「いや・・・・・・なんか、要るかなって・・・・・・」


「要る・・・・・・かしら・・・・・・」


 さくらが眉をひそめる。

さくらがリュックから取り出したものは、理科の教材かなんかについて来たローマ字のユー字型の磁石だった。


「ほら・・・・・・相手が機械、だと思う、から・・・・・・なんかその・・・・・・効くんじゃない?」


 なんか確か電子機器に磁石はよくないみたいな話を聞いたようなそうでもないような・・・・・・ともかくそんなイメージがあったから持って来たものだ。

言ってて、自分で「ほんとに効くのか?」なんて気持ちになってくる。

正直昨晩は夜の謎の魔力で自信満々だったけど。


「まぁ、そう・・・・・・なのかしら?でも、機械が相手とも限らないわよね・・・・・・」


「そ、そうかも・・・・・・」


 ノワールからあわよくばロボットを奪うという話を聞いていたせいでその印象が先行しすぎてしまったかもしれない。

確かに、ロボットがあるからと言って戦う相手がロボットだとは言い切れない。

むしろ奪う予定のロボットを知らず知らずに壊してしまうかもしれない。


「どうしよ・・・・・・持ってかない方がいいかな?」


 不安になり、目が泳ぐ。


「さぁ?別にいんじゃない、そんなに気にしないでも」


 しかしさくらは大して問題にするでもなく磁石から次に移った。

そんなに軽く流してしまっていいのだろうかと、やっぱり不安になるが、しかしさくらが言うならまぁいいかという気もしてくる。

結果、とりあえずは何かの役に立つことを祈って入れておくことにした。


 その後もさくらの持ち物検査は続く。

ちょいちょいガラクタに文句を言われながらも全体的には問題なかったらしく、合格になった。

いや、本当に持ち物検査だったのか・・・・・・。


 最後に、さくらがリュックの底で丸まっていたタオルを私に投げる。


「あんた、さっさとこれ使えばよかったじゃない。汗気にしてずっと立ってたんでしょ?」


 さくらが見透かす。

気がつけば服に染み込んでいた汗はすっかり冷やされ、冷たくなっていた。


「いや、忘れてて・・・・・・」


 へへへ、と力なく笑いながらタオルを敷いて上に座る。

服と同じように下着もすっかり冷たくなっていた。


「えへへ・・・・・・」


 何かを誤魔化すみたいに後頭部を掻いて笑う。

さくらはそんな私を気にすることなくリュックから取り出したものを中に戻した。


 しばらくして、ピーっとクーラーが停止される音が鳴る。


「そろそろ時間だぜ」


 リモコンを操作するみこちゃんの隣で、どらこちゃんがこちらを向く。

その後みこちゃんの肩を支えに立ち上がった。


「ぃよし・・・・・・!!」


 べちんと膝を叩いて気合いを入れる。

まだ座ったばかりだったけど、タオルを拾って立ち上がった。

それに合わせるようにさくらもスッと立ち上がる。

最後にみこちゃんがリモコンをどらこちゃんに片すように頼んでから立ち上がった。


「じゃあ、行くかニャ・・・・・・!」


 ゴローがそう宣言する。

だからみんなで視線を交わして、頷く。

そこにはノワールなんか関係なく、もうこのメンバーだけで走り出してしまいそうな程の勢いがあった。

続きます。

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