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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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草陰の虚像(7)

続きです。

「どういうことだったんだろ......?」

自室のベッド。

寝転がって絆創膏の端を引っ張りながらゴローに尋ねる。

「たぶん......」

「さくらがやっつけたとか?」

私の攻撃は届いていなかった。

つまりとどめを刺したのが私ではないということだ。

「それは有り得ないニャ。そしたらキラキラ粒子はさくらに回収されるはずニャ」

「じゃあ......」

ゴローが一息置く。

「自ダメージニャ。たぶんだけど」

ゴローの言った聞き慣れない言葉に首をかしげる。

「自ダメージ......?」

「おそらくあの咆哮......体への負担が大きいのニャ。つまり自らとどめを刺したってわけニャ」

絆創膏が剥がれそうになり、慌てて手を離す。念のため上から圧迫しておいた。

「それって、なんか......バカじゃない?」

「アンキラサウルスの知能は実際にそれ程高くはないニャ。もちろん高いやつも居るだろうけど。でも大体はその場で相手を追い詰める為の最善手しかうたないニャ。だから人相手みたいな読み合いは発生しないニャ」

「でも、結局一番いい手ならバカじゃないってことでオーケー?」

「相手を追い詰める為の最善手ニャ。自分の体力は計算外ってことニャ。それにある程度どういう状況でどういう攻撃をするかが決まってくるから、それを利用して誘導することも出来るはずニャ」

「えーと......結局?」

「まぁ、そこそこバカってことニャ」

つまり私はそこそこバカな相手に苦戦していたというわけだ。

「あれ?もしかしてバカにされてる?」

「そんなことないニャ。......ただ次からはもっと観察が必要かな......とは思うニャ」

「観察......」

さっきの戦いを思い出す。

確かに私は相手の動きに反応して、対処していただけだ。

アンキラサウルスと何も変わらない。

「まぁ、ここらへんは経験がものを言う領域ニャ。大切なのはこういう振り返りの時間ニャ」

そう言ってゴローは私のお腹の上に乗っかってくる。

その重さがなんとも言えないが丁度良かった。

「振り返りかぁ......」

「振り返りは大事ニャ」

体育の授業の件も心残りだ。

結局私は何故速く走れなかったのだろう。

足が遅いからと言ってしまえばそれでおしまいだが......。

「なんで私足遅いんだろ......」

天井からぶら下がる照明が少しチカチカする。

「そっちの振り返りかニャ......。まぁとりあえず明日にでもどらこに訊いてみたらどうかニャ?速かったんだろう?」

「あ、そっか」

ゴローの言葉にそう言えばと納得する。

身近なところに居るじゃないか。

「......しかし、キミ意外とプライド高いんだニャ......」

ゴローがしみじみといった感じで言う。

「だってさ......悔しいじゃん」

今のところ負けっぱなしだ。

あの日からずっと。

だから......。

「だからさ......勝ちたいなってさ」

「なるほどニャ。今回の戦いはどうも個人的なものみたいニャ。あーだこーだの為じゃなくて、勝ちたいから勝つ。早い話がケンカニャ」

ケンカなんて言葉を使っているが、ゴローの声は咎めるような調子ではない。

むしろ昂ぶっているようですらある。

「混じりっけなしの純粋な勝負ニャ。拳と拳で語り合うってやつニャ!」

「何......?そういうの好きなの?」

「嫌いではないニャ」

好きみたいだ。

ただもちろんあーだこーだにあたる部分も大切ではある。

これにも個人的な事情が関わってはいるのだが、「咲楽」って名前は、その......結構いい名前なんじゃないかと思っているのだ。

さくらには似つかわしくないくらい綺麗な名前だと思う。

「それをあんなに馬鹿にして......」

少しもったいないと思う。

だからその大切さも思い知らせてやりたい。

「何か言ったかニャ......?」

私が呟いた言葉にゴローが反応する。

「なんでもなぁい」

ゴローを抱き寄せて少し眠った。

続きます。

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