最大風速(33)
続きです。
「このバカちんどもがぁ・・・・・・!!」
「あだっ」
「あうっ、私もぉ・・・・・・?」
ずびしずびしと、どらこちゃんと私の頭に手刀が振り下ろされる。
それは全員でみこちゃんの家に帰り、入浴を済ませた後の出来事だった。
リビングルームで正座させられている私たちの前に、みこちゃんのお母さんが腰に手を当てて立っている。
お風呂上がりということもあって、湯気が立ち上っていた。
それは私たちも同じことで、濡れた髪からは体内に籠った熱を上らせている。
「まったく・・・・・・二人ともさぁ・・・・・・。流石に今回ばっかりはいけないよ!」
「「は、はい・・・・・・」」
火照った体に多少汗ばみながらも、頭を下げる。
この動作が自然に出る辺り、すっかり怒られ慣れてしまったなぁと思った。
実際、学校でも私たちは結構問題児扱いだし・・・・・・。
毎日騒いでばかりで、おまけに成績も芳しくない。
完璧なまでの問題児だと、自分でも思った。
みこちゃんのお母さんが両の手のひらを使って、どらこちゃんと私の髪をわしゃわしゃする。
「はぁ・・・・・・。もう・・・・・・髪ちゃんと拭きなよ・・・・・・?」
「「はい。おっしゃる通りで」」
「反省してる・・・・・・?」
こちらをジトッと見つめながらも、ソファの上に座る。
私たちは全力で視線を横に逸らした。
そしたらその視線の先にも、腕を組んだゴローが待ち構えている。
「さぁ次はボクの番ニャ・・・・・・」
そう言うゴローの顔を、むずと捕まえた。
そのまま、ゴローの向きを変える。
ゴローの背中が私の正面に来ると、頭の上に手をポンと置いて止めた。
「うん」
「うんじゃないニャ」
そう言いつつも、手をどかしても振り向くことはなかった。
みこちゃんが女の子の手を引いて部屋にやって来る。
女の子はもうすっかり元気みたいだった。
猫が見つかっていることを伝えたときは何故だか恥ずかしそうにしていたけど、そんなことよりやっぱり安心したみたいだった。
みこちゃんと女の子は、もう疲れたようで、眠そうに目を擦る。
「もう私たちは寝ますね・・・・・・。どらこちゃんたちも、疲れたんじゃないですか?」
「そうだな・・・・・・まぁ流石に疲れてないって感じじゃないな」
みこちゃんたちが、寝室へ向かう。
お母さんもあくびを噛み砕いていた。
私はというと、疲れているはずなのにどうにも眠くない。
風呂上がりの熱が冷めきらず、まだふわふわするような感覚が残っていた。
きっと単純に暑いのだろう。
「二人も・・・・・・猫ちゃん、は寝るのかわかんないけど・・・・・・そろそろ寝な。私ももぉー眠、いから・・・・・・」
お母さんはそう言いながら、言葉の途中であくびをした。
「寝るか」
「そだね」
どらこちゃんと顔を見合わせて立ち上がる。
その瞬間ふらついたので、やっぱり疲れているなと実感した。
どらこちゃんに寄りかかって、その背中を押すようにしてみこちゃんたちの居る部屋へ向かう。
「あ、待ってニャ」
ゴローもすぐに追いついてきた。
こうして、今年の一風変わった台風は過ぎ去ったのだった。
続きます。