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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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最大風速(23)

続きです。

 分厚い雲に覆われた空からは、月明かりすら届かない。

雨に掻き消されてしまいそうな程頼りない街灯の明かりだけが、私たちを上から照らしていた。


 しかし、アンキラサウルスは既にその光の下に居ない。

アンキラサウルスは街灯の高さを容易く追い越し、胸の高さで街灯を光らせていた。


 とりあえずそこで巨大化は止まったようだが、果たしてこいつをどう倒したものか。

いや、その前に女の子の救出もしなければならない。


 女の子はどこだ、と辺りを見回す。

アンキラサウルスの周りにアメンボは沢山いるが、女の子を抱えているものは見当たらなかった。


「どらこちゃん・・・・・・女の子、どこだか分かる?」


 視線はまだ女の子を探して彷徨う。

しかしその視線を遮るようにアンキラサウルスが佇んでいるので、すぐによく分からなくなってしまった。


「いや・・・・・・見失った。あの群れの中に紛れてるとは思うんだが・・・・・・」


 どらこちゃんも、私と同じくその姿を見つけられていないようだ。


 アンキラサウルスが星を捕まえるように、空に手を伸ばす。

その指先が何かに触れることはないが、自分の体の近くに複数の水球を出現させた。

その球は、重力に従って垂直に落下する。

落下地点では水が弾けて飛び散った。

その様はまるで爆弾だ。


「ゴロー・・・・・・女の子を探して」


「わ、分かったニャ・・・・・・」


 ゴローは特に反対もせずに空へと飛び立つ。


 少なくとも、一つのことに集中した方がいいだろう。

ならば、探すのは一旦飛べるゴローに任せて、私たちはこいつを倒す。


「どらこちゃん・・・・・・」


 爆弾の落下地点を避けながら、どらこちゃんに声を掛ける。

どらこちゃんは未だ女の子の姿を探しているようだった。


「何だ・・・・・・?」


 降ってくる爆弾を蒸発させるという荒技をやりながら、どらこちゃんが答える。

拳が水球を捉える度に、ほとんど自分の体と同じサイズの水球が湯気に姿を変えた。


「探すのはゴローに頼んだ。だから私たちはあれを・・・・・・おっと・・・・・・!?」


「よっと・・・・・・」


 私が話している途中に、水球が頭上に落下する。

空気の読めない水球はどらこちゃんの手によって葬られた。


「あ、ありがとう・・・・・・でさ!あのデッカイのやっつけないとって思うの!」


 どらこちゃんは少し悩む。

しばらくの間、無言で爆弾を壊しながら考えていた。

そして、やがてその口を開く。


「まぁ・・・・・・実際このままじゃ探す余裕もないもんな・・・・・・。仕方ない・・・・・・か」


「うん・・・・・・ごめん」


 何と言ったものか分からず、俯いて謝る。


「まぁ、巨大化は負けフラグだ。なんとかしてやるさ!」


「あぅっ・・・・・・」


 そんな私の背中を、どらこちゃんが平手で叩いた。

服に雨水が染み込んでる所為で、べちゃっという音が鳴る。

どうせならもっといい音が聞きたかった。

割と痛かったし。


 一度戦うと決めたら、どらこちゃんは早い。


「フレイムボルト!」


 もう何度目か分からないその技名を叫び、アンキラサウルスに向かって駆け出した。


 両の拳に炎が灯る。

オレンジ色の光は、雨なんかに負けないで街灯よりもずっと確かに輝いた。


 赤い炎が、闇を切り裂く。

その光は、アンキラサウルスの前まで来て跳躍した。


 どらこちゃんが空中で身を翻せば、火炎がオレンジ色の軌跡を描く。


 全体重を乗せて、どらこちゃんは二発の拳打を打ち込んだ。


 アンキラサウルスの体に衝撃が波となって広がる。

その波の中心に、二本の炎の杭が差し込まれた。


「どうだっ・・・・・・!?」


 どらこちゃんがダメ押しにもう一発と、利き手を打ち込む。

炎は杭を形作ることはないが、命中と同時に爆発した。


 大量の湯気が発生して周囲を覆う。

その中からどらこちゃんは飛び出した。


 自分が引き起こした爆発に吹き飛ばされたにも関わらず、どらこちゃんは器用に着地する。


 湯気は風に巻かれてすぐに散る。

その中から姿を現したのは、変わらぬ姿のアンキラサウルスだった。


「くっそ・・・・・・今のでダメか・・・・・・。やっぱ火は相性わりーのかな・・・・・・」


 どらこちゃんがその姿に舌打ちして、手のひらを握ったり開いたりする。


 私はその手のひらに触れ、無断で炎を抜き取った。


「あ、おい!・・・・・・またかよ」


「いいじゃん、減るもんじゃないし」


 相性が悪いだなんて言ったって、今の私たちには火しかない。

水は切ることが出来ないからね。


「そうは言うがな・・・・・・気持ち的にはなんか減ってるぞ?たぶん」


「とにかく!借りるよ」


 きちんと事後承諾もして、再び赤熱した剣を作り出す。

さっきまで持っていた炎の消えた方はとりあえずアンキラサウルスの体内に不法投棄しておいた。


「さて・・・・・・」


 剣を少し格好つけて構える。

ドリルは使わない。

さっきのどらこちゃんの攻撃を食らってピンピンしてるなら、ドリルでも厳しいだろう。

使い切りだから連発も不可能。


 だったら、この炎の剣は防御用だ。

水爆弾ならこれでも十分。

一回使っただけで火が消えることもないはずだ。


 やっつける方法は・・・・・・戦いながら考える!


 風に負けないように、勢いのまま走りだした。

続きます。

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