最大風速(8)
続きです。
屋根を打つ雨音を聞きながら、みこちゃんの部屋に集まっていた。
風が家の外壁にぶつかり、砕ける。
そのたびに軋み、激しい風の音を聞いた。
一人減ったが、先程と同じように何をするでもなく時間を過ごす。
何もない空間を意味もなく視線が泳いだ。
おばあちゃんには、泊まるという連絡を問題なく出来た。
電話をしたら「そっちの方が安心」なんて言ってきて、私がそっちのこと心配だっていうのに・・・・・・。
今頃家ではどうなっているのだろうか。
台風に備えて、今からでも出来ることをしているのだろうけど・・・・・・。
「うーん・・・・・・」
みこちゃんが座るベッドに飛び込む。
見上げると、こちらを不思議そうに覗くみこちゃんの顔があった。
「なんでもなーい・・・・・・」
ベッドからずり落ちる。
床に落ちると、頭がかくんと揺れた。
「なんだ・・・・・・きらら?さっきから奇行が目立つぞ?」
「奇行て・・・・・・」
どらこちゃんが座るイスをくるりと回す。
確かに私のやっていることは奇行と言えば奇行だった。
「なーんか・・・・・・暇だなぁ・・・・・・」
ベッドを背もたれに、照明に向かって呟く。
こう、やることがないと色々なことが気になってしまうのだ。
私が心配したってどうしようもないのだけど、けれども不安は拭えない。
「そうですね・・・・・・。確かに退屈と言えば退屈ですよね」
「こう、天気が悪いと何かやる気も起きねーのがなぁ・・・・・・」
どらこちゃんの言う通り、退屈だけど何かをする気も起きない。
体が重いというか、なんというか妙に気怠いのだ。
「まぁこの雨じゃ仕方ないニャ。帰れれば宿題やらせ放題だったけど」
「そこら辺は助かった」
「全然助かってないニャ。キミ、自分が追い詰められていってる自覚ある・・・・・・?」
夏休みが残り何日か数える。
途中まで数えてやめた。
心によくない。
「あや・・・・・・?何あれ・・・・・・?」
何を見るでもなく視線を泳がせていると、本棚のファイルに目が止まる。
絵本や図鑑に紛れ込んだピンク色のファイルは汚れや傷のようなものが見られず新しいことが一目で分かる。
「あ・・・・・・何だろな?そういやいつの間にかあったけど・・・・・・」
どらこちゃんも私が何について言及したか察したようで、椅子から身を乗り出して本棚を眺めた。
バランスを崩しそうで、ちょっと危なっかしい。
「ああ、これですね・・・・・・。これは・・・・・・っと・・・・・・」
言いながら、みこちゃんはその本棚に歩み寄った。
指を伸ばし、棚からそのファイルを抜き出す。
そしてそれをベッドまで持ち帰った。
「これ・・・・・・私の友達。あ、下級生なんですけど・・・・・・その子から貰った写真です」
「「写真・・・・・・?」」
どらこちゃんと一緒に首を傾げる。
わざわざ貰うような写真って・・・・・・一体なんだろう。
それにみこちゃんは笑って答える。
「別に特別なものじゃないですよ。ただその子が猫を飼い始めて、それで見に行ったとかに撮った写真です。私が写っちゃってるのもありますけど、可愛いですよ」
そう言って、ピンク色のファイルを丁寧に開いた。
続きます。