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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
222/547

最大風速(7)

続きです。

 部屋に入ってきたお母さんの頭からは雨粒がポタポタ垂れてくる。

自分の足跡がついていないか気にしながら、頭にタオルを乗せてやって来た。


「いやぁー、濡れた濡れた・・・・・・」


 そうは言うが、車で送っただけでそんなに濡れるだろうか。


「興味本位で外に出てみたけど・・・・・・やぁー失敗だったね。風もびゅーびゅー吹いてて大変だったよ・・・・・・」


「お母さん・・・・・・」


 みこちゃんが呆れた様子で、お母さんに駆け寄る。

そのまま二人で洗面所に消えて行った。


「こりゃあたしはまた泊まりだなぁ・・・・・・。ま、最初からそのつもりだったけど」


「どらこちゃんはどらこちゃんで慣れすぎ・・・・・・。何、家庭環境が複雑で帰りたくないの・・・・・・?」


「きらら・・・・・・そういうことはあんまり聞くもんじゃないニャ」


「聞かなきゃ分かんないよ・・・・・・」


 ゴローに叱られて、ちょっと拗ねる。

バツの悪い気持ちを誤魔化すように、テーブルにうつ伏せになった。


 そこから見る景色には、座るどらこちゃんがうつる。

どらこちゃんは仕方なさそうに笑っていた。


「はは・・・・・・別にんなこたないよ。ただ・・・・・・なんだ?なんでこんなに居座ってんだろ・・・・・・。ま、それはいいか。でも、まぁ今みたいのは気をつけるべきだと思うぞ?たぶんな」


「はーい・・・・・・」


 テーブルの下で、足の指を擦り合わせる。

それをどらこちゃんが優しく踏んづけた。


「すみません。待ってました?」


 みこちゃんが洗面所からとたとた戻って来る。

それにどらこちゃんは手招きだけして答えた。


 遅れてお母さんもやって来る。

さっきとは服装が変わっていた。

頭のタオルも一回り大きなものに変わっている。


「いやいや・・・・・・こりゃ、ちょっとしんどいね。どらちゃんはまた泊まってく?」


「はい・・・・・・そのつもりで。あとその呼び方はちょっと引っかかるんでやめてくださいって」


「なーんでぇー?いーじゃん。ウチに置いてる服にポケットつけたげよっか?」


「お母さん・・・・・・」


 ニヤニヤしながら、頭を拭く。

そうして私の隣の椅子に座った。


「きららちゃんはどうする?」


 横から伸びて来た手のひらに、頭をわしゃわしゃされる。

頭をぐわんぐわんされながらも、声を出した。


「私は・・・・・・とりあえず帰れるなら帰る方向で・・・・・・」


 あまり心配をかけるわけにもいかないし、単純に迷惑だろう。


「なるほどね。て言うことは泊まってもいいわけだ」


「えぇ・・・・・・そうなる・・・・・・?」


「まぁまぁ・・・・・・冗談、冗談」


 いまいち冗談に聞こえないのだけれど・・・・・・。


 ゴローが窓の外を見に飛んで行く。

今の空模様を確認しに行ったのだろう。

ゴローは屋根からボタボタと絶え間なく落ちる水滴を見て、難しそうに唸っていた。


「結構酷いっしょ?」


 みこちゃんのお母さんがゴローの方を向いて言う。

それにゴローはゆっくり振り返った。


「これは・・・・・・今日は泊まっていくのが賢明そうニャ」


「えっ・・・・・・うそ、そんなに?」


 ゴローがあんまり真面目に言うものだから、少し気になって私もゴローの隣に並ぶ。

確かに天候は悪化しているようだが、それ程激しく変わっているようにも見えない。


「これなら・・・・・・帰れる、くない?」


 まだ昼過ぎだが、外はすっかり暗い。

分厚い雲が渦巻くように空を覆い、弾丸のような雨粒を放っていた。


「そう・・・・・・かもしれないけど、なんだか変ニャ・・・・・・」


「変って・・・・・・何さ・・・・・・」


 ゴローのヒゲがピクピク揺れる。

雨は変わらず、激しく窓を打った。


「まぁ、猫ちゃんもそう言ってることだし」


 両肩に背後から手が乗せられる。

振り返るとニッと口角を上げたお母さんの顔があった。


 どうやらもう決まってしまったようだ。

家のことも気になるが、ゴローの言うことも少し引っかかる。


「分かった・・・・・・そうする・・・・・・」


 私が観念するのを、みこちゃんたちが面白そうに覗いていた。

続きます。

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