最大風速(6)
続きです。
テレビを点けて、みんなで食卓につく。
さくらはみこちゃんのお母さんの車に乗せられて、一足先に帰った。
椅子にどらこちゃんと向かいあって座る。
キッチンではみこちゃんが何やら準備をしているようだった。
「みこちゃん、料理出来るの・・・・・・?」
私も手伝ったりはするが、一人で料理なんて到底出来ない。
包丁の扱いも大雑把で、切り方なんていうのは分からないし分かろうという気もあまり無かった。
「いや・・・・・・まぁ、少しだけなら・・・・・・」
「この前は失敗してたもんな・・・・・・」
「あぅ・・・・・・はい・・・・・・」
そうやって苦笑いしながら、みこちゃんもテーブルにやって来た。
その手には作り置き感満載のタッパーが握られている。
「へぇー・・・・・・結構ガチなんだ・・・・・・。てか・・・・・・どらこちゃん本当に来てばっかりなんだね・・・・・・」
失敗だの何だのと言う話を聞きながら、私のおままごととはまるで違うんだなと感じる。
同時にどらこちゃんの常連ぶりに笑った。
三人で複数のタッパーを囲んで、それをつまむ。
ご飯は私が座っている間にどらこちゃんが盛ってきてくれた。
ちょっと量が多い。
食事の間も天候は悪い方へ傾いていっているらしく、風の音はどんどん強くなる。
「だいぶ酷くなってきたニャ・・・・・・。台風は明日のはずなんだけど・・・・・・」
ゴローのその言葉を聞いて、どらこちゃんがテレビのチャンネルをニュース番組に変えた。
すると、その番組は都合よく台風についてやっている。
「ん・・・・・・まだ来てないな」
「はぇー・・・・・・近づいてきただけでこれですか・・・・・・」
二人の言うように、どうやら台風はまだここら辺にはたどり着いていない。
テレビが正しければ、まさしく丁度明日くらいの到達になるのだろう。
既に台風の脅威に晒されている地域の荒く波だった海や、激しく風に揺れる木の枝が画面に映し出される。
それは窓の外の状態と大きく変わらないような感じがした。
「なんか・・・・・・結構やばくね・・・・・・?これ今日、私帰れるかな」
台風は明日来ると聞いていたし、まだ準備も整いきってない。
だから家のことも少し心配だ。
「泊まっていきます?」
「え、とまっ・・・・・・て、いく・・・・・・?」
「別に出来ると思いますよ。きららちゃんなら、私の服も入ると思いますし・・・・・・どらこちゃんみたいに用意が無くても・・・・・・」
確かに体格で言えば私がいちばんちんちくりんなので問題はないが、しかしそうだとしてもいいのだろうか。
「ゴロー・・・・・・どうしよう?」
「ま、最終手段ニャ。おばあちゃんも心配だし、出来るだけ帰る方向で考えよう」
「そうだね・・・・・・」
こうなってくれば、宿題云々で騒いでもいられない。
ますます天気は悪くなっていくだろう。
食事を終えると、水溜りを切るタイヤの音が外から聞こえてくる。
「あ・・・・・・帰って来ましたね」
みこちゃんが音の方を見て呟く。
すると、さくらを送り終えたお母さんが、雨粒から逃げるように玄関に飛び込んできた。
続きます。