夜に這う獣(12)
続きです。
「で、どうするつもりなんだい?」
モニターの上に踵を乗せて、少女は椅子を傾けて後ろの気配に言葉をかけた。
もう完成間近の秘密基地。
その研究室には、再び三人の少女が揃っていた。
「たぶんあの子たち・・・・・・来るよ」
ヘッドホンの少女がつまらなそうに椅子を揺らす。
足を乗せるモニターには、ノワールときららという名の二人の少女が映っていた。
今や裏切り者の少女と、長髪の少女ユノが執着する少女。
二人はこれで繋がってしまった。
「・・・・・・」
画面の光に照らされて、ユノは黙っている。
「ユノ・・・・・・?」
いつも笑顔のアイドル少女ミラクルは、心配そうにその顔を覗き込んだ。
その顔にユノは涼しい顔で応える。
「問題ない。こっちから捕らえようとしていたくらいだ。・・・・・・というか、元はと言えば君の所為なんだからね」
その言葉に、ヘッドホンの少女は舌を出した。
「まぁ・・・・・・仕方ないだろ?得体の知れないものの言うことを聞くことは僕には出来ないよ。これも人件費の一つだと思ってくれ」
「まぁ・・・・・・そうだな。ふふっ・・・・・・」
「ユノ・・・・・・大丈夫なの?」
「来ると分かっていれば、準備も出来る。それに・・・・・・場所を知られることはあまり問題ではないからね。やることをやるだけさ」
「その準備・・・・・・僕がやるんだけど・・・・・・」
モニターから足を下ろし、椅子を回転させる。
少女はヘッドホンを外して机に置いた。
「いいだろう?彼女たちが来るなら、きっと君の目当てもおまけでついてくる」
「それは・・・・・・そうだけど・・・・・・。やれやれ、人使いが荒いね。僕もう何日寝てないか分かる?」
それにユノは淡々と答えた。
「睡眠不足は頭が曇る。何よりも避けないといけないことだ。君の言ったことだ。今まで寝ない日があったのかと、逆に聞かせてもらおうか」
「ていうかスバルちゃん・・・・・・作業ってほとんど機械任せだよね・・・・・・」
ミラクルが頰を掻く。
再び椅子は回転し、ヘッドホンの少女は二人に背中を向けた。
「ま、そういうことだ。僕の睡眠時間はともかく、また仕事が増えた。約束・・・・・・ちゃんと守って貰わなきゃ困るよ、救世主さん?」
「ふっ・・・・・・考えておくよ」
研究室から、二人の少女が立ち去る。
入り口の自動扉は、二人の足音が離れきらない内に閉まった。
「・・・・・・さぁて、どうしたものか・・・・・・」
椅子を一回転させて、ヘッドホンで耳を塞ぐ。
少女にとって問題は三つあった。
一つは、先程増えた仕事のことだ。
そして残りの二つは・・・・・・。
「ユノはどうするつもりなんだかね」
少女は目を閉じて、考えるのをやめた。
続きます。