草陰の虚像(2)
続きです。
学校に来ると、いつも通りどらこちゃんとみこちゃんが話していた。
「おはよう」
「おはようニャ」
どらこちゃんの席に近寄り、声をかける。
「あっ、おまえらどこ行ってたんだよ。あの後みこがアイス買ってくれたのに......」
「えっ?アイス?」
あの後邪魔が入らなければアイスが食べられたというのか......。
背中からさくらに、呪詛を送っておいた。
「でもなんでアイスなんか......?」
あの後、そのままアイスを買って食べようなんて流れにはなかなかならないはずだ。
自信満々でみこちゃんが答える。
「優しいを知るために、まず優しくないを知るんです!人にアイスをたかるのは優しい人のすることじゃないはずです!」
鼻息荒く言っているが、それでいいのか感が拭えなかった。
まぁなんであろうと、私がアイスを逃したということに変わりはない。
「アイス......アイスかぁ......」
「おまえアイス引っ張りすぎ......」
どらこちゃんが、頬杖をついて呆れる。
「それで......あの後どうしたんだ?」
「あぁ......それが......」
私が言いかけたところに、ゴローが割って入る。
「待つニャ。どらこが超能力をもう持ってない以上、巻き込むのは危険ニャ」
その言葉をしっかりと聞いていたどらこちゃんが、目を瞑る。
「なるほどね。襲撃されたわけか......」
「あっ......」
急いで口を塞ぐゴローだが、一度出た言葉が引っ込むことはありえないのだった。
「でもそっか......危ないかぁ」
宝石が壊れた以上、超能力から身を守る術は何も無い。
「あれ?改名戦争って意外と危険?」
「今更かニャ......」
「でも、ほんとに大丈夫なんですか?こんなことしちゃって」
みこちゃんがゴローの顔を覗くが、ゴローの反応は渋い。
「人に人を超えた力を与えてしまうわけニャ、当然こんな風に行われていいものじゃないニャ。だけど改名戦争を始めたのはボクじゃないから、ボクにはどうしようも出来ないニャ」
どらこちゃんが付け足す。
「それに、あの......なんちゃらサウルスだって人を襲う。あんなのが普通にうろうろしてんだ。こんなのが看過されるべきじゃないのは確かだ」
思ったより難しい状況みたいだ。
何も考えずに「名前を変えさせたくない」なんて言っていたけど、そもそも超能力自体あってはならない。
悪用する人だってきっといるんだろう。
「早く終わらせなきゃね......」
言いながらゴローを見つめる。
「私が優勝......?したら、私の超能力はそのままとか出来るのかな」
「何言ってるニャ。出来ても、するべきじゃないニャ」
「そう......だよね」
ゴローの首元の赤い宝石が輝く。
「どうしたニャ......?」
「なんでもない」
首を傾げるゴローから逃げるように、視線を逸らした。
「まぁ、いずれにせよ。目の前の敵は片付けなきゃな」
どらこちゃんが会話の軌道を戻す。
「あたしに出来ることなら、何を言ってくれたって構わない。一体、どんなやつに襲われたんだ?」
その言葉を聞いて、視線だけスライドさせる。
さくらと視線が交わってしまう。
さくらは待ってましたとばかりに、意地の悪い笑顔を見せ手を振った。
「まぁ......あれ......」
顔をしかめながら、どらこちゃんに向く。
「なるほどね」
「能力は......まだよく分からないけど、姿を消すことが出来るみたいニャ。襲われることは......まぁ無いだろうけど、気をつけるニャ」
「どらこちゃんは私が守ります!」
みこちゃんが、机に身を乗り出して言う。
「まぁ......。少なくともみこに危険が及ぶことがないようにはするよ」
どらこちゃんが、みこちゃんの肩に手をまわす。
「むぅ......」
みこちゃんが頬を膨らますが、どらこちゃんに宥められて渋々姿勢をただした。
続きます。




