黒の再来(4)
続きです。
「あたたたた・・・・・・」
「うっさいわね・・・・・・ちょっとくらい辛抱しなさい」
「だって・・・・・・この綿ポンポン意味あるわけ?別に怪我はしてないし」
「雰囲気よ。全く意味は無いけど」
座敷にノワールを迎えて、そしてさくらに手当てをしてもらっていた。
その綿が当てられている場所に生傷があるわけでもなければ、当然薬を塗っているわけでもない。
さくらの言った通り、完全にただの雰囲気だ。
さくらに雑に手当てされながら、どらこちゃんと話すノワールの声に耳を傾ける。
「あー・・・・・・つまり、あの日のあの後にあんたの妹が襲われたわけだな?」
「そうだ」
どらこちゃんの言葉にノワールが頷く。
そのノワールにみこちゃんが持ってきたペットボトルを渡した。
もう既に手当てを放棄しているさくらの膝の上から、その会話に割り込む。
「とりあえず・・・・・・それは私じゃないよ。私は・・・・・・その、なんで泣かれたんだろ・・・・・・」
思い返してみても、その理由は判然としない。
その答えを持っているのはブランだけなのだろう。
「・・・・・・しかし、そうだとすれば・・・・・・じゃあ誰が・・・・・・?」
ノワールが歯軋りをして自らの膝を叩く。
その答えはこの場の誰も持っていない。
「・・・・・・あの、ブランさん本人はどう言っていたんですか?」
みこちゃんが恐る恐る手を挙げる。
それにノワールは静かに答えた。
「ブランは何も覚えちゃいない。襲われたときの記憶だけ綺麗さっぱりなくなってる」
「なんか・・・・・・犯人を特定するヒントみたいなもんはねーのか?」
どらこちゃんは眉を寄せてそんなことを言う。
私じゃないなら、誰なのか。
ああ、首突っ込んでるな・・・・・・私たち。
「・・・・・・そう言えば、私がブランを見つけたとき・・・・・・辺りに光の粒が・・・・・・」
「それって・・・・・・?」
首を突っ込んでいるのを自覚しつつも、先を促す。
ノワールはフードを下ろして答えた。
「たぶん・・・・・・キラキラ粒子だ。いや・・・・・・間違いなく」
となると襲ったのは能力者で間違いなさそうだ。
それ以外は分からないままだが・・・・・・。
「ねぇ・・・・・・てかさ・・・・・・」
いきなり口を開いたさくらに視線が集まる。
私も膝に抱えられたままその顔を見上げた。
「それって・・・・・・葉月のときと同じやつなんじゃないの?」
葉月。
前に私たちが助けた・・・・・・かは微妙な少女だ。
確かにあの子も記憶をなくしていた。
「あれって、なんか事件に名前つけられてませんでしたっけ?」
みこちゃんが顎に手をやって思い出そうとする。
「「ああ・・・・・・バール事件」」
その言葉にどらこちゃんとさくらが答えた。
あのとき以来、同一犯と思われる被害が多発していることと、凶器が鉄パイプで確定したということらしいが、それ以上の進展はない。
「ああ・・・・・・そうだ。確かそんな具合の話もした・・・・・・」
そしてノワールはまるで忘れていたかのように事件と関係があるらしいことを肯定した。
「もう・・・・・・あれね。なんで最初にきららを疑ったのか・・・・・・」
「事件の犯人がきららだと思ったんじゃね?」
さくらが呆れる。
それにどらこちゃんはため息をつくようにして笑った。
「ん・・・・・・?何やら君たち、私を馬鹿にしているな?」
「そうね」
さくらはノワールの台詞を否定しない。
そこに実はさっきまで湿布を探させられていたゴローが現れた。
「持って来たニャ・・・・・・って、どしたの・・・・・・?」
開いた障子から覗くゴローは、また少し変わった空気に困惑しているようだった。
続きます。