救世主(18)
続きです。
昨日を置き去りにして、また日は登る。
時間は戻らない。
未来へのカウントダウンが始まったのだ。
その日、私は朝早く目覚めた。
寝ている間に再びあの夢を見ることはなかったけれど、鮮明に覚えている。
「・・・・・・まずは」
手っ取り早く支度を済ませる。
朝食は摂らなかった。
まずはなんにしたって芹に会うことだ。
そして・・・・・・出来れば離れたくない。
未来を変え得る可能性があるのは、未来を知る私だけなのだ。
「いや・・・・・・」
胸中の不安は拭えない。
私のこの行動さえ、ただ未来までの過程をなぞっているに過ぎないのかもしれないのだ。
かと言って、これでこの行動を取りやめるようでも最初からそう決まっていたのかもしれない。
「・・・・・・いや、いや・・・・・・!」
頭を振って、無駄な思考を振り払う。
そんなこと考えるだけ無駄だ。
だから、出来ることをするしかない。
朝からドタバタ忙しそうにしている両親を背に、靴に足を通す。
最後に一度背後を一瞥して、玄関から出た。
日はまだ低く、明るくなりきっていない。
気温も控えめで、ちょっと涼しく感じるくらいだった。
何も持たず、手ぶらで街に繰り出す。
朝の街にも既に出歩く人がいくらか居て、この街もとっくに起きているんだと思った。
昨日アンキラサウルスと戦った場所も、まるで何も無かったかのように知らん顔をしている。
その代わり映えのなさが、逆に異質なものに感じた。
何人かの人々とすれ違いながら、小走りで芹の家を目指す。
やがて、あのスーパーの前までたどり着いた。
「あ・・・・・・」
そのスーパーを見て、あることに気がつく。
スーパーに人気はなく、店内も薄暗い。
そう、まだ開いていないのだ。
となると、連絡も無しに家に行っていい時間でもないだろう。
急いでいた足が止まる。
今更そんなことを言っていられるかとも思うが、しかしどう説明したものかも分からない。
「いや・・・・・・大丈夫、なはず・・・・・・」
夢で見た景色は夜だった。
出来るだけ早く会いたい気持ちもあるが、まだ時間に猶予があると思われる。
今日の夜に起こるかだって分からない。
がらんとしている駐車場に立ち入り、芹と座ったベンチに腰掛ける。
私は待つことを選んだ。
「晴れ・・・・・・か」
あの時は雨が日光に照らされ輝いていたが、今日は雨が降りそうな感じはない。
「・・・・・・あれ?」
少し残念に思っている自分に気づく。
私は雨の方が好きなのだろうか。
その答えは分からないさ、今はどうでもよかった。
続きます。