竜の泪(6)
続きです。
「暇だ!......しかし、それは全て自業自得なのであった!」
「何言ってるニャ」
ゴローが枕元で横槍をいれる。
昨日寝たときは抱いていたけれど、朝起きたら枕元に座っていた。
寝ている間に何があったのかは、ゴローにはっきりとついたシワが物語っていた。
「とにかく暇なの〜」
今まで不登校だった時と違い、あまり自由に動き回るわけにもいかないだろう。
まだ痛いと言えば痛いし。
「まぁ......あれニャ。せいぜいゆっくり休んでおくニャ」
ゴローがあぐらをかく。
「ゴロー......」
「何ニャ」
横を向いて声をかけると、ゴローが素っ気なく答えた。
「あー......えぇ、あー......」
特に何も考えていなかったので言葉に詰まる。
まだ朝食を終えてそれほど経っていない。
一日はこんなに長かっただろうか。
「そんなに退屈なら、テレビでも見るニャ?」
この部屋には無いが、居間にはテレビがあるのだ。
あまりテレビ好きってわけでもないが、それなりにお世話になっている。
「平日だから面白いのやってないよぉー」
「じゃあ本でも読んでるニャ」
ベッドの上にうつ伏せになる。
体勢を変えるたびに、掛け布団が捻れていった。
本なんて言ったって、小さい頃の絵本くらいしかない。
字を読むのは、どうも苦手だった。
なんなら今以上に読書は退屈かもしれない。
手足を伸ばして、欠伸をする。
肘の関節がベキベキ音を立てた。
「りんご」
あくびをした口が閉じきらないうちに、声を出す。
ちょっと変な声になってしまった。
「?」
察しの悪いゴローが首を傾げる。
「りんごぉ」
「な、何?どうしたのニャ?食べたいの?」
枕に顎を沈めて、頰を擦り付ける。
「しりとり」
私の言葉でやっと納得いったようで、ゴローが続ける。
「それならそうと言って欲しいニャ。......ゴキブリ......ニャ」
何故その言葉を選んだのだろう。
もっと他にあると思う。今は思いつかないけど。
「ヤシの木」
「......えっ?筋肉......ニャ」
「や......や......ヤギ?」
「なるほどニャ......ギンザメ!」
「ヤンバルクイナ」
「......ルールの説明が欲しいニャ」
しりとりを放棄して、また姿勢を変える。
今度は仰向けだ。腕枕をして、天井を見つめる。ゴローに肘がぶつかった。
そして、また振り出しに戻る。
「暇だ!」
「何言ってるニャ......」
続きます。