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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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ゆーま(29)

続きです。

 黒い鱗粉が煙のように舞う。

体に触れたそれはやはり絡みつくように付着する。

指でこすると、煤のような黒色が広がった。

触れた感触はサラサラしていて、見た目のように粘つくような感じはしない。

静電気か何かで纏わりついているような感じだった。

 アンキラサウルスは吠えるでもなく、その腰を折り曲げ私に視線を合わせる。

不気味な赤い瞳が私の目を覗き込んでいた。

 その瞳に嫌悪感を覚え、目を逸らし枝を握る手に力を込めた。

 手の中の枝の材質が変わるのを確かに感じる。

問題なく剣に変わったようだ。

「ふっ・・・・・・」

 肺から空気を押し出して、血を蹴る。

刃をアンキラサウルスの眉間へ・・・・・・。

 その瞬間、アンキラサウルスが素早く動いた。

突然の素早い動きに少しびっくりするが、そのまま攻撃を受け入れるわけもないので当然だろう。

 アンキラサウルスが身を翻すのと同時に鱗粉が飛び散った。

「う・・・・・・」

 視界が突然黒一色に染まり、息が詰まるような感覚を覚える。

著しく視界が制限されている状態。

これは・・・・・・。

 瞬間、体が黒を切り裂いた翼に弾き飛ばされる。

 しかしこちらも来ると分かっていた攻撃。

すぐに体勢を立て直すことが出来た。

 着地し、再び距離をつめる。

鱗粉が煙幕のように立ち込めているが、赤く光る目玉で居場所は丸わかりだった。

 鱗粉が体に纏わりつくのも構わずに、その目玉を目指して駆ける。

「らっ・・・・・・!!」

 そしてその目玉に向かって再び刃を突き出した。

しかし刃は届かない。

おそらく腕に阻まれてしまった。

「くそ・・・・・・」

 腕に弾き飛ばされる。

「・・・・・・まだ!」

 しかし翼程の力強さはない。

地面の苔に指を食い込ませ、勢いを殺す。

衝撃を踏ん張って押さえ込み、そして無理矢理土を蹴った。

 地面と反発するように私の体が飛び上がる。

相手の反応は・・・・・・。

「追いつかない・・・・・・!」

 再び刃を防ごうとする腕をすり抜けて、肩を斬りつける。

確かな手答えを感じたが、アンキラサウルスは呻き声の一つも上げなかった。

「・・・・・・効いてるなら効いてるって言ってよ・・・・・・」

 手のひらに感じた手答えとは裏腹に、ダメージを与えられた気がしなかった。

 しかしここで止まるわけにはいかない。

肩を飛び越え背後に回った私は、振り向く勢いを利用して剣を突き出した。

 刃は咄嗟に出てきた腕に軌道を逸らされてしまったが、その腕と脇腹を斬りつける。

 そこから立て続けに無理矢理刃を振り抜く。

しかし、それは完全にいなされてしまう。

そして仕返しとばかりに翼が起こした風に吹き飛ばされてしまった。

「うぐっ・・・・・・」

 背中が木の幹に打ち付けられる。

痛みこそ無いが、衝撃は大きなものだった。

 視線を上げると目に映るのは、アンキラサウルスの不気味な姿。

「くそ・・・・・・!」

 もう半ばやけくそになって再び距離をつめようとするが、突然翼が発光したのを見て急ブレーキをかける。

「何・・・・・・?」

 その光は鱗粉を伝わり、拡散する。

電流のようにも見えた。

「まさか・・・・・・!?」

 慌てて攻撃範囲内から逃れようとするが、黒い鱗粉は辺り一面に充満している。

つまり逃げ道は、無い。

 私の足が動くのより速く、弾けるような光は到達する。

 視界が真っ白に染まり、気づいたときには地面にうつ伏せに倒れていた。

 アンキラサウルスが電流の残滓を身にまとい、ゆっくりとこちらへ近づく。

 立ち上がらねばならないのに、体には全く力が入らなかった。

電流に痺れてしまったのかもしれない。

 アンキラサウルスが細長い腕で、剣を弾き飛ばす。

私の手から離れたそれは、鱗粉の向こうへ消えてしまった。

 アンキラサウルスが地面に手をついて、私の上に覆い被さる。

「あ・・・・・・」

 その体はあまりにも大きく、あまりにも不気味で、引っ込みかけてた涙が再び滲んできた。

 怖い。

それはさっきのチュパカブラの時にもうっすらと抱いていたものだった。

 今までのアンキラサウルスよりずっと、不気味で恐ろしい姿をしている。

今の私は電流云々関係なく動けなかった。

「助けて・・・・・・」

 本来は私がやらなければならなかったこと。

今この場で、私しか出来なかったこと。

救いはなかった。

 アンキラサウルスのその腕が私を抱き抱えるように、私の体に触れる。

強張った体の上をするすると細い腕が撫でた。

 呼吸が乱れ、鼓動がうるさいくらい激しくなる。

「・・・・・・あ・・・・・・あ」

 歯の隙間から漏れた情け無い声が、闇に吸い込まれていく。

そしてその闇を、オレンジ色が引き裂いた。

「え・・・・・・?」

 アンキラサウルスの腕が私の体から離れる。

持ち上げられていた私の体は、地面に雑に落とされた。

 黒い鱗粉がオレンジ色に侵食・・・・・・いや、焼かれている。

鱗粉の隙間から現れたその姿は、燃える私の剣を握ったどらこちゃんだった。

続きます。

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