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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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ゆーま(14)

続きです。

 騒がしい蝉の鳴き声に包まれて、大きな吊り橋の上を歩く。

橋の上には周りの景色の写真を撮る人や談笑しながら歩く人が散見された。

橋の先の林道の奥にはさらに多くの人の姿が見えた。

 橋の下にはこれまた川が流れているようで、どうやってあそこまで行くのかは分からないが釣りをしている人が居た。

「ねぇ・・・・・・なんか、周りの人見ると結構ガチっぽいって言うか・・・・・・なんかちゃんとしてるけど・・・・・・こんなで大丈夫?」

 服の裾を引っ張って、みんなに尋ねる。

というのも、道行く人々は皆、登山用の装備をある程度整えている。

それに対して私たちは近くの河原に散歩に出かけるくらいのノリの半袖半ズボンだ。

「まぁ・・・・・・そうね。確かに他の人を見るとちょっと不安にはなるかも・・・・・・」

 さくらも吊り橋に揺られながら、周りの様子を窺っていた。

それにどらこちゃんが答える。

「まぁ大丈夫だろ。・・・・・・つか、行き先が同じとも限んねーし」

「あ、同じです・・・・・・たぶん」

 みこちゃんが付け足すと、どらこちゃんはニカっと笑って誤魔化した。

「まぁ・・・・・・どこに行くかも伝えられてなかったわけニャ。この装備でもまだマシくらいに思うしかないニャ」

「うるさい猫ちゃんだなぁ・・・・・・」

「ぬいぐるみニャ」

 唇を尖らせるみこちゃんのお母さんに、ゴローがお決まりの言葉で応じる。

いいかげん猫なのかぬいぐるみなのか、どっちかに落ち着いて欲しい。

「猫のぬいぐるみであり、ぬいぐるみの猫ニャ」

 ・・・・・・だそうだ。

「もう・・・・・・そんな登らないから大丈夫だって・・・・・・!」

 しょうがないんだから、とお母さんが手のひらを上に向ける。

しょうがないのは一体どっちなんだか・・・・・・。

そんなこんなしてる間に、橋は抜けてしまった。

 橋の先の道は、針葉樹に挟まれている。

砂が固まって出来た道には、石が混ざっており平ではない。

しっとりとした冷たい空気を感じた。

いかにも森の空気って感じだ。

蝉が止まるタイプの木ではないのか、ここら一帯は静か。

風に木の葉がそよぐ音が心地よく鼓膜を揺らした。

「あそこに建物があるでしょ・・・・・・?」

 みこちゃんのお母さんが、指差した方向にみんなの視線が誘導される。

木々の隙間から覗くのは、白い壁だった。

角ばった形のその建物に先行したグループが吸い込まれていく。

「あれって・・・・・・何の建物?」

 聞くと、それにみこちゃんが答えた。

「あの建物の反対側に出口があって・・・・・・そこから出ると、山の方に入れるんです。麓から標高の低い位置を見て回る道と、天辺まで登る道、二つありますが・・・・・・私たちが行くのは最初のやつです」

「ま、そんな高い山でもないから登ろうと思えば行けると思うよ」

 この格好でもね、とお母さんが念押しした。

「で・・・・・・結局、あの建物はただの通り道なのか・・・・・・?」

 どらこちゃんが頭を掻く。

さくらは首を伸ばして、早くも建物の向こう側に思いを馳せているみたいだ。

「あぁ・・・・・・っと、ただの通り道ってことはないけど・・・・・・あんまし面白くないよ?」

「そうですか・・・・・・?」

「面白くなかったじゃん」

「面白かったですよ?」

 親子が言い合っている間にも、建物に近づいていく。

面白いかどうかも入れば分かるだろう。

まぁ・・・・・・認めたくはないが、どっちかって言うと私の感性はお母さんに近いらしいから、同じ感想になるかもしれない。

 建物の周囲はある程度舗装されているようで、脇には駐車用のスペースとして白線が引かれていた。

肝心の車が入ってくる道が見当たらないけど。

 建物の入り口には漢字で施設の名前が書いてあった。

読めないわけではないけれど、目を逸らした。読めないわけではないけれど。

 建物の扉を押すお母さんの背中を追う。

中からひんやりとした空気が溢れてきた。

 お母さん、みこちゃん、どらこちゃんの順番で建物に入り、それに私も続いた。

さくらは一番後ろだ。

 白っぽい照明に照らされた室内には、ガラスのケージのようなものがありその中に野鳥などの剥製や昆虫の標本が並んでいた。

ケースの外側にはそれぞれのものに説明が添えられている。

 博物館みたいなものなのだろうか・・・・・・?

それにしては規模が小さいというか、地味な感じがして、確かにそれほど面白い感じではなかった。

「あ、水槽・・・・・・!」

 しかし、興味を惹かれるものもある。

それは壁に埋め込まれた水槽だった。

そこには剥製ではなく、生きた魚姿があった。

どうせなら動いてた方が面白い。

「あ、それはちょっと面白いよね。隣の水槽にはカエル居るよ」

 水槽に駆け寄った私に、みこちゃんのお母さんが追いつく。

やっぱり、ちょっと感性が近いらしい。

「うへぇ・・・・・・」

「何そのリアクション。なんか失礼なこと考えたでしょ・・・・・・?」

 水槽の中には、小さいけど見たことのない魚が泳いでいた。

綺麗とかそんな感じでもないけど、かわいい奴だ。

隣の水槽には、言った通りカエルがいる。

水に濡れた体がツヤツヤ光っていた。

「ほんとに・・・・・・あんたらは・・・・・・」

 呆れながら、さくらたちも追いついてきた。

三人はちゃんと展示物を一通り見てきたみたいだ。

「お・・・・・・そろったね」

 みこちゃんのお母さんが水槽を覗いていて曲げていた腰をぴょこんと伸ばす。

「じゃ・・・・・・メインディッシュ、行こうか!」

 元から大して広い建物でもないけれど、この水槽たちがあるのは一番奥。

横の方に出口も見えていた。

「わ・・・・・・何ここ・・・・・・?」

 背後の扉から、若い女の人の声が聞こえる。

丁度後続も来たようだし、入れ替わるにはいいタイミングかもしれない。

「まぁ・・・・・・見るもんは見たわね」

「んじゃま・・・・・・行くべ」

「はい・・・・・・!」

 みんなの声を聞いて、今度は私が出口の扉を押した。

続きます。

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