ゆーま(4)
続きです。
「おおぅ・・・・・・」
テーブルに置かれたラーメンを前にして、割り箸を割る。
夏休みということもあって、サービスエリアとやらはとても賑わっていた。
まだ正午前だが、私たちと同じくお昼を食べている人が多い。
立ち上る湯気を眺めていたら、みこちゃんとそのお母さんが全員分の水を汲んできて持ってきてくれた。
「あ、ありがとうございます」
みこちゃんのお母さんからコップを受け取る。
それをそっとプレートの上に置いた。
「あ、すみません」
「ありがとな、みこ」
水の分配が終わったところで、全員が席に着いた。
広い窓の外に見える駐車場には沢山の車が停まっている。
大型のトラックがいくつかあるが、それ以外は皆家族連れのものと思われた。
「色々あるからいつも何にしよって思うんだけど・・・・・・結局麺類なのよねぇ」
みこちゃんのお母さんが箸を割りながら言う。
テーブルの上に並ぶ料理はみこちゃんのお母さんを除いてみんなラーメン。
お母さんは七味に埋もれてよく見えないけどたぶんソバだ。
どらこちゃんがそれを見て引いてる。
「ふむ・・・・・・」
ラーメンの黄色っぽい麺を箸の先で摘んで持ち上げる。
絡まった細麺を伝う黄金色のスープが滴った。
その汁が落ち切る前に一息に啜る。
予想以上の熱さに思わず噛み切ろうとしてしまうが、耐えて啜り切った。
確か麺類は途中で噛み切っちゃうと行儀が悪いのだ。
口の中にその温度と、麺に絡んだスープが広がる。
その熱気と香りは鼻から抜けていった。
美味しい。
料理の質の良し悪しなんて分かるほど繊細ではないけれど、それでもこのラーメンは美味しかった。
無言で二口目、三口目と啜る。
途中でメンマやらも噛みながら、無心に啜る。
気がつけば、どんぶりの中にはスープに少しネギが浮いているだけになってしまった。
他のみんなも誰かに急かされたわけでもないのに、せっつくようにして食べている。
どらこちゃんは私より早く食べ終わって、コップの水を流し込んでいた。
「なんか麺類って一気に食べちゃうわよね・・・・・・」
箸を置いてさくらが言う。
言われてみれば確かにと思った。
プレートを返却口に戻す。
みこちゃんが食べ終わるのを待って、売店に向かった。
「物資調達っと・・・・・・。みんなオヤツとか飲み物持っといで」
「「はーい」」
そこで各々適当なものをいくつか買う。
さくらは相変わらずケミカルな炭酸飲料を買った。
そう言うのが好きなのだろう。
みこちゃんがおつまみ系統のものを買ったのはちょっと意外だったが、聞けばどらこちゃんに餌付けするためらしい。
嬉しそうにどらこちゃんが選んだものと同じ商品を買っていたが、気のせいかもしれないので黙っておいた。
色んなものが詰まって凸凹したビニール袋と一緒に車に戻る。
「あっついニャ・・・・・・!!」
ドアを開けると籠った熱気と、置いてきぼりにされたゴローが私たちを出迎えた。
すっかり暑くなった車内で、みんな元の位置に座る。
どらこちゃんは早速ビニール袋を漁り、二つある同じ商品に困惑していた。
「さて・・・・・・こっからは長いから・・・・・・ジャジャーン!!」
みこちゃんのお母さんが何かをみんなに見せびらかす。
「何これ・・・・・・映画?」
さくらの言う通り、それは映画のようだった。
パッケージに刷られた絵は額を撃ち抜かれてどろりとした血液を垂れ流すゾンビ。
「なんていうか・・・・・・すごいB級臭・・・・・・」
「同感ニャ」
自分じゃまず借りないだろうって感じの奴だった。
「え、そうかな・・・・・・?」
「そんなことないですよ?」
そう言う風に親子は力説するが、苦笑いで応えた。
妙に陽気なオープニングが流れる中、車は再び走り出した。
続きます。