ゆーま(2)
続きです。
ゴローに用意させたリュックサックを背負う。
「大丈夫・・・・・・?忘れものない?」
「大丈夫!おばあちゃんこそ・・・・・・一人だけど気をつけてね」
家の前には既にみこちゃん家の車が迎えに来ている。
丸っこくてかわいい車だ。
玄関でおばあちゃんと手を振って別れ、熱気が立ち込める外へ踏み出した。
「お・・・・・・お邪魔します・・・・・・」
「おーおー・・・・・・いやぁ、予定が合ってよかったよ。久しぶり・・・・・・でもないか。これから残りの二人も迎えに行くからね」
ゴローを抱えて車内に乗り込むと、みこちゃんのお母さんが出迎えてくれた。
その目は嬉しそうに輝いている。
本当に行きたかったんだなぁと改めて思った。
「す・・・・・・すいません」
「あはは」
助手席のみこちゃんは申し訳なさそう。
これについては笑うしかなかった。
車内の空気は既に冷え、車外とは大違いだ。
まだどらこちゃんやさくらの姿はなく、後部座席はがらんとしている。
「あ、荷物は後ろにやっちゃってください」
「え・・・・・・後ろ・・・・・・?」
「トランクニャ」
ゴローが椅子の後ろを覗き込む。
それを目で追って私も後ろを見た。
「ああ・・・・・・」
座席の後ろには荷物を置く・・・・・・いわゆる荷台のスペースがある。
そこには既に二人分の荷物が置いてあった。
ゴローの手を借りて、それらの隣に私のリュックサックも送る。
私のリュックサックは二人のに比べるとやけにパンパンで重かった。
「ゴロー何か余計なもの入れた?」
「無いよりは有ったほうが安心ニャ」
「備えあれば嬉し・・・・・・」
「憂いなし・・・・・・ニャ」
「はい・・・・・・」
ふざけて言ったのだけれど遮られてしまった。
それとも安易なボケは許さないということだろうか。
「そろそろ出すけど、いいかしら?」
「あ、はい」
みこちゃんのお母さんに言われて、姿勢を正す。
その少し後に、車は走り出した。
見知った景色が、窓の外をするする流れる。
これから違う場所に行くと思うと、そんないつも通りの景色でさえ新鮮に感じた。
「相変わらず何にもないニャ・・・・・・」
地元愛が足りないゴローは、後ろの荷台に放り投げておいた。
すぐ戻ってきたけど。
「きららちゃんは最近どうだった?みこから聞いた話しか知らないからさ」
みこちゃんのお母さんがハンドルを握りながら、話を振る。
「どうだった・・・・・・って、まぁ・・・・・・普通?ですかね・・・・・・」
流石にずっと自堕落な生活を送ってましたと答えるわけにはいかないだろう。
「そかそか・・・・・・。まぁ、普通が一番!」
そう言ってニカっと笑う。
前を見ろ前を。
何と言うか・・・・・・相変わらず元気な人だなぁと思った。
それから車は知らない経路で知ってる場所を巡り。
「おまたー・・・・・・」
「こっちこそお待たせしました!」
途中一回道を間違え。
「ほんとに行くのね・・・・・・旅行」
「ガッツリ荷物揃えとるやん」
そうして、全てのメンバーを拾い終えた。
さっきまでは車の走行音が一番大きい音だったのに、今では私たちの声の方がうるさい。
「結局どこ行くんだ?」
「あっ、そう言えば・・・・・・」
「あんたら知らないで着いてきたの・・・・・・」
車は既に町を出ている。
あんなに田舎なのに少し車を走らせれば色々なお店が立ち並ぶ道に出るのは少し不思議な感覚だった。
まぁその建物の裏側には田んぼに農道にと田舎の片鱗が溢れているが。
「・・・・・・てか、さくらも知らないでしょ。行き先」
喧騒を乗せた車は、午前の日差しの下どこかを目指し駆け巡った。
続きます。