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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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ドッペルゲンガー(14)

続きです。

 目を覚ましたさくらに状況を説明する。

さくらはとりあえずといった感じで、腕を組み私の言葉に耳を傾けていた。

「・・・・・・つまり、急にみこちゃんが錯乱したと思ったら、さくらが寝てて、それでスライムみたいなベトベトになって、ズボン脱がされて・・・・・・で、その・・・・・・何だっけ・・・・・・」

「説明能力に難有りね・・・・・・。上手く説明出来たらズボンを履くことを許可するわ。失敗したらパンツも脱ぎなさい」

「何でさ・・・・・・」

 さくらがおかしなことを言うが、そのおかげで多少落ち着きを取り戻すことが出来た。

それを狙ってのことかは定かでないが。

「はい、もう一回」

「だから・・・・・・その・・・・・・たぶんみこちゃんが偽物で、それに・・・・・・襲われた・・・・・・?かも、しれない」

「んー、三十二点ね」

 まだ寝ぼけてるのだろうか。

もう一度蹴ろうかと脚に力を入れるが、さくらは立ち上がりそれを遮った。

「・・・・・・けど、赤点はギリギリ回避よ。要は逃げたそいつを追いたいのよね?」

「そう・・・・・・!」

 流石に腐ってもさくら、理解が早くて助かる。

ここで寝癖がなければパーフェクトだったろうに。

 ある程度の説明を終えて、だから追おう・・・・・・と飛び出そうとしたら、さくらにその手を掴まえられた。

「・・・・・・な、何?早く追わないと・・・・・・」

「ズボン」

「あっ・・・・・・」

 ズボンを履き直して、二人で表に出る。

とりあえず勢いのまま道まで出てみたが、既にスライムの姿はなかった。

何せあの速度だ。

覚悟はしていた。

「時すでに遅し・・・・・・ね」

「あ・・・・・・うん」

 何だかさくらが言うが、よく分からなかったのでスルーした。

 どらこちゃんの庭の前を横切る道路。そこには何の痕跡も見当たらない。

スライムなら通った場所を溶かしていくとかしていって欲しい。

まぁスライムじゃないかもだけど。

 さくらも太陽の眩しさに顔をしかめながらも、辺りを見回していた。

「まぶしーね」

「そうね。ずっと室内に居たからでしょう」

 さくらと辺りを見回すが、やはり何かが見つかりそうな感じはなかった。

 痕跡を探る片手間で、思考はどらこちゃんに向く。

今日挙動不審だったのは、みこちゃんが偽物だと気づいていたからなのだろうか。

だとしたらどこへ向かったのだろうか。

庭には当然トイレなんてなかった。

 それに、おかしかったのはどらこちゃんやみこちゃんだけではない。

恐らく私たちも、だ。

思えば違和感を抱くタイミングはいくつかあったはずだ。

どれも些細なことだったような気もするが、軽く流しすぎた気もする。

考えてみれば、みこちゃんが私のズボンを脱がすわけがないことなどはっきりしていた。

にも関わらず、そのとき私はそれが本物のみこちゃんだと信じて疑わなかった。

スライムの姿を見るまで気づかなかったのだ。

 それが何故そうなったのかは分からないが、とにかくあり得ない事態が成立してしまっていたことは確か。

何かがおかしかったとしか言いようがない。

それは・・・・・・。

「きらら!上っ!!」

 思考がさくらの声に中断される。

 その鬼気迫る声に言われた通り、上を見上げる。

 白く光る太陽に、影が重なっていた。

フードのネコミミが揺れる。

真夏だっていうのに、長袖の上着を羽織った少女がどこからともなく飛び降りてきたのだ。

本当にどこから来たのか分からない。

 そのネコミミフードが私たちの前に立ちはだかるように着地する。

 白いフードの影から覗く顔はよく見えないが、その左目には眼帯がされているようだった。

もし仮にお洒落だとしたら、私は更にそこに包帯も合わせたいところだ。

ネコミミフードのファッションセンスはアリスから教わったものとも違うようで、上着の前は完全に閉じられている。

「私には分かるわ。あの変に凝った格好と、あの登場の仕方。間違いなく能力者ね」

 さくらが私の横に並びながら言う。

 私にも分かる。

流石にこれで一般人ってことはないだろう。

登場の仕方については、そういえばさくらもやたら高い場所から登場してたな、と少し懐かしくなった。

「ふっふっふ・・・・・・」

 フードが不気味な笑い声と一緒に揺れる。

そしてそのフードはその少女本人の手によって持ち上げられた。

 フードを脱いで、少女の顔が露わになる。

クリッとした丸い瞳に、小生意気な感じのニヤケ面。

どうやってフードに収まっていたのかすら分からない見事にツインドリルな髪型をしていた。

 その少女が手を振り上げる。

その手のひらは私たちに向いていた。

「我が名はブラン!貴様らを打ち倒す!ふーははははっ!!」

 その笑い声に合わせてドリルが揺れる。

「何よコイツ・・・・・・?」

「分かんない」

 まだ高笑いを続けるブランと名乗った少女を二人して冷たい視線で見つめる。

 すると、ブランは肩をすくめてみせた。

「おっと、失敬失敬・・・・・・。確定した勝利の前に喜びが隠せなくてね。もう一度言おう、我が名はブラン。貴様らをユノ様の名の下に救済する者だ」

 さっき打ち倒すって言ってなかったっけ。

 ブランが仕切り直すように、胸を叩く。

「さぁ・・・・・・我の力を前に屈服するといい」

 その瞳が太陽の光を受けて、ギラリと輝いた。

「ほんと・・・・・・何よコイツ?」

「分かんない」

続きます。

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