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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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ドッペルゲンガー(8)

続きです。

 私の肩に手を回したまま、ノワールは水晶玉を覗いている。

先程まで手のひらの上にあったはずのそれは今では宙に浮かんでいた。

 こんなことも出来るのかと、私もその水晶玉を見つめる。

水晶玉に映るみんなは、本腰を入れて真面目に勉強しているみたいでただ傍から見てるぶんには退屈だった。

「あの・・・・・・全然動きないですけど・・・・・・。ていうか、私の偽物がやってるワーク、あれ完全に私のじゃないですか・・・・・・」

「勝手に課題が進むんだ。悪い話じゃないだろう?」

 ノワールはそう言ってまたくつくつと笑う。

「いや・・・・・・宿題の意味ないじゃないですか」

「欧米の研究では既に・・・・・・」

 ノワールが宿題嫌いの人がよく言う屁理屈をこねる。

これって結構多くの人が言うけれど本当なのだろうか。

 今まで似たようなことを言ってきた人の顔を思い出す。

・・・・・・たぶんただの屁理屈だろう。

「・・・・・・しかし、何だ・・・・・・まぁ、退屈だな」

 ノワールがあぐらをかいて腕を組む。

さっき“私でも演じやすい”と言っていたから、てっきりノワールが偽みこを動かしているものだと思っていたけれど、この様子だと違うのかもしれない。

「あの・・・・・・偽物の私って誰が動かしてるんですか?ブランって人ですか?」

「・・・・・・?無論私だが?」

 ノワールは何を今更というような顔をして眉を持ち上げる。

 とても目の前の少女が問題を解いているようには思えない。

それでも偽みこを操っているのは自分だとノワールは言う。

「あの・・・・・・ノワールさんって凄く頭がいいとか、そういうのあります?」

「まぁ・・・・・・知能というのは物差しの一つでしかない。だから、それだけで人を評価するのは早計だ」

 いまいち返答が噛み合わない気がするけど、たぶん特別頭がいいわけではなさそうだ。

話してるときの表情にきららちゃんに似たものを感じたから、もしかするとむしろ・・・・・・。

「今解いてる問題の正答率ってどんな感じですか?」

「まぁ・・・・・・まぁな」

「いや、どうなんですか・・・・・・」

「大切なのはやってるように見えることだよ」

 ということは・・・・・・。

 どうやら頭がいい悪いの話以前の問題らしい。

「やって、ないんですね。それ結局宿題進んでないじゃないですか・・・・・・」

 まぁどうせ後でやり直すつもりだったけれど。

「・・・・・・スゥー・・・・・・」

 ノワールが視線を逸らしてカッスカスの口笛を吹く。

そのまま唇の隙間を空気が通り過ぎる音がしてるだけだった。

「はぁ・・・・・・」

 敵に監禁されているという状況なのに、何故だか緊張感が抜け落ちてしまっている。

萎縮していた手足も伸ばし、深く息を吐いた。

 きっと気づいてくれるという期待もまだ無くならないし、ノワールにも妙に気を許してしまっている自分がいる。

そんな空間で緊張感なんてあるはずもなかった。

「お。動きがあったようだね」

 水晶の中で集中力のきれたきららちゃんが倒れる。

 やっと動きがあったので、ノワールは声を上げた。

 水晶のきららちゃんは後頭部を思い切り畳にぶつけているようだけど、痛くないのだろうか。

「さて、どうなるかね」

「どうなりますかね・・・・・・」

 ノワールはやっと仕事が出来そうだと、指を鳴らしていた。

 見ていることしか出来ない私は固唾を飲んで見守る。

 すると、突然どらこちゃんが立ち上がった。

きららちゃんがそれについて言及するが、どらこちゃんはお茶を濁す。

 やがてどらこちゃんは部屋を出ていき、姿を消した。

 それを見たノワールの口角が吊り上がる。

「何笑ってるんですか?」

「いやぁ・・・・・・ね?実は彼女だけ少し問題があったんだ。けれども君も聞いただろう?玄関の戸が開く音を。つまり彼女は外へ向かった。隙ができたのだよ」

「・・・・・・?はぁ・・・・・・」

 よく分からないが、どらこちゃんが居なくなるのは好都合らしい。

さっきかかってきた電話の内容と何か関係があるようだ。

 再びノワールの携帯が鳴る。

ノワールはそれにすぐさま応えた。

「やぁ、用件は分かっているよ。大丈夫。このぶんなら私だけで問題ないだろう。もし万が一があればかけ直すさ」

 そのノワールの言葉には自信が満ちていた。

 ノワールが通話を終えて、携帯を上着のポケットにしまう。

そして、テレビに食いつく子供のように水晶に顔を寄せた。

 水晶の中ではきららちゃんが「寝よう!」と言っている。

「何・・・・・・!?寝るだって!?ますます都合がいい!」

 ノワールの自信は最早確信に変わったようだ。

「・・・・・・そうだ。寝よう!是非寝よう!」

 水晶の中の私が、渋るさくらちゃんにぐいぐい迫る。

もう掴みかかってしまいそ・・・・・・あ、掴みかかった。

 あまりにも自分と違う行動に、流石に・・・・・・と思う。

「あの・・・・・・バレちゃいますよ?・・・・・・ていうか最早誰ですか、アレ?」

「大丈夫。いける、いける!君なら出来る!やれる!大丈夫だって!」

 こちらのノワールも最早誰状態に陥っている。

 そして・・・・・・。

「そうだ・・・・・・!」

 さくらは承諾した。

私が偽物であることに気づかないままに・・・・・・。

続きます。

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