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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
11/547

My name is...(11)

続きです。


「「キミは......」」

彼女はゆっくりと瞳を閉じ、息を吐く。

「蒼井きらら......ね?」

「そう......だけど?」

少女が腕を組む。

「あたしの名前は......言わなくても分かるよね。今回は見逃してあげる」

「今回はって......?」

出来れば仲間に引き込みたいのだが......?

「改名戦争のルール知ってるでしょ?次会うときは敵同士だから」

そう言って再び翼を広げてしまう。

「あ、ちょっと!」

強風と共に落ち葉が舞う。

思わず身構えてしまうが、すぐに風は通り過ぎていった。

顔を上げても、もうその姿はどこにも見当たらなかった。



帰りの車でおじさんが話す。

「まさかお嬢ちゃんも超能力者だったとはね......」

あの後、竹林から抜け出して、そして彼女を呼び出したのだそうだ。

学校も同じだし、やはり家もそう遠くはないのだろう。

「もうすぐお昼だ。あんまり危ないことして婆さん困らせるんじゃないぞ?」

おじさんが私の家の前で車を止める。

何度も遠慮はしたが、結局家まで送り届けてもらった。

「ただいまー」

家に上がり込んで、台所へ向かう。

まな板を流していたおばあちゃんが振り返る。

「おかえり。家の中では帽子脱ぎな」

言われて頭の上の帽子のことを思い出した。

帽子を脱ぐと、竹林の土がパラパラと落ちた。

「まぁ、随分汚れたわね」

「ご、ごめんなさい......」

着ていた服にも土汚れが目立つ。

白い服を着たことを後悔した。

「お昼ご飯もう出来てるけど、ちょっとシャワーだけ浴びて着替えちゃいな」

「はぁーい」

お昼のお預けをくらいながらも、お風呂場へ向かう。

バッグからゴローがひょっこり顔を出して言う。

「この場合、ボクは脱衣室まで着いて行って問題ないのかニャ?」

鏡の前に立って、ゴローを凝視する。

「何ニャ?」

「ゴローってオス?それともメス?」

「メスだと思ってゴローって名前をつけたのかニャ?......性自認は男ニャ」

「政治人?」

「なんでもないニャ」

バッグを肩から外して、扉の外に置く。

「まぁ、男の子なら入っちゃダメ」

言いながら扉をピシャリと閉めた。



昼食を終え、ゴローも引き連れ部屋に戻る。

気がついたらゴローは家の中を普通に飛び回るようになっていた。

私がお風呂に入っている間に、おばあちゃんとも話したみたいだ。

部屋の電気は点けずに、ベッドに飛び込む。今日は色々ありすぎてどっと疲れた。

ゴローは、ここが定位置と言わんばかりに机の上に落ち着いた。

机の方からゴローの声が響く。

「それで......あの子、ニャ。キミが仲間に引き込もうと考えてた子なんだろ?」

手探りで枕を探す。

指先が触れたそれを胸の前で抱きしめる。

「そうだよ。竜の子どもって書いて......なんて読むと思う?」

「素直にいけばりゅうこニャ」

枕に鼻を埋める。

瞼が重くなるのを感じた。

「どらこ。ドラゴンだからね」

「なるほどニャ」

寝返りをうって、うつ伏せになる。

「そう言えばさ、どらこちゃんの宝石はネクタイに付いてたけど、あの場合ネクタイが喋るの?」

「たぶん喋らないニャ。ネクタイには発声器官がないニャ」

「ぬいぐるみにもないじゃんか」

「猫にはあるニャ」

「えぇ......」

そんなものなのだろうか。

「さっきから、どこか上の空ニャ」

なんだか呼吸が浅くなってるのを感じる。

「もう疲れたんだと思う」

ご飯の後だし、眠くなるのも仕方ない。

「ねぇ、ゴロー?」

「何ニャ?」

「明日学校に行こうと思うの。それで、どらこちゃんに会って決着をつける」

しばらく静寂が続く。

「どうやらよっぽど疲れたみたいニャ。今日は土曜日ニャ」

体がほとんど熱の塊のように感じる。

ベッドに意識が沈んでいく。

夢の中で、私は学校で大勢の前で胸を張ってこう言っていた。

「私の名前は蒼井きらら。輝く星って書いて、きららだ!」

きっと一歩踏み出せたんだと思う。

続きます。

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