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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
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海といろいろ(12)

続きです。

 ゴツゴツした岩の塊の上をバランスをとりながら歩く。

足の裏に触れるそれは、浴びた熱を蓄えていて暖かかった。

「よっ......と」

 一足飛びで、隣の岩に飛び乗る。

そちら側の岩は少し濡れているようだった。

「あんまりぴょんぴょんやってると危ないわよ?」

 と言いつつも、さくらも同じルートで追いついてくる。みこちゃんも、どらこちゃんも躊躇うことなく飛び移って来た。

 基本的に露出した岩肌は乾いており、ところどころに海水が溜まっていたり海と直接繋がっていたりしている。

海を縁取るように広がっているが、砂浜とは違い入り組んでいた。

海底を覗けば、そこにも石ばかりで景色が全く違う。

 海と言えば砂浜のイメージが強かったが、こういうところもあるのかと改めて思った。

 海の匂いはだいぶ前に慣れてしまってほぼ感じなくなってしまっていたが、ここは更に匂いが濃いようで鈍った嗅覚でもちゃんと潮の匂いを感じる。波の音も心なしか違って聞こえた。

「あ、みこ。またナマコ居たぞ」

「や、やめてくださいよ!」

 どらこちゃんたちが水溜りの周りでしゃがんで話し始める。

さくらもその横にしゃがんで、岩の間に挟まっていた木の棒でナマコをつつき始めた。

 私もその場でしゃがむ。

水溜りを覗くと、岩には小さな貝がたくさん張り付いていた。

時折、小さな生き物が動き積もった砂が少し舞い上がる。

跳ねるように泳いでいるその小さな生き物は間違いなく魚だった。

「おぉ......」

 捕まえられるかな、と水の中に手を突っ込む。

すると素早い動きで逃げてしまい、あっという間に見失ってしまった。

「......おぉ」

 何だかもったいない気がしてしまって、往生際悪く魚を探す。

しかし、そうやって静かに眺めていると、存外似たような姿の魚が居ることが分かった。

動かないとなかなか見つけられないのだが、既に四匹はその姿を確認できる。

 四匹も居れば......と思うが、さっきの素早さを思い出すと一匹も捕まえられそうになかった。

 そのまま水中を静観していると、途端に暗くなる。誰かの影が被さったのだ。

 振り返るとそこに立っていたのは、どらこちゃんだった。

「見ろよ......カニ、カニ!コイツ、食えるかな......?」

 誇らしげにカニを眼前に突き出してくる。

思ったより可愛らしいカニの瞳と目が合った。

威嚇のつもりなのか、ハサミを誇示するように持ち上げている。

「私も触っていい......?」

「いいけど、気をつけろよ。普通に挟むかんな。あたしは挟まれた」

「えぇ......」

 多少臆しながらも、どらこちゃんの補助のもと小さなカニの胴体をつまむ。

まるで虫みたいに手足がうごめくが、そのハサミは私の指に届かなかった。

「大丈夫ですか......?」

「大丈夫。そんなに痛くねーよ」

 どらこちゃんたちの会話が聞こえた。

 掴んでいるカニを眺める。

この持ち方だと、何かの拍子に落としてしまいそうだったが、どう持ち直したものか分からなかった。

 茶色っぽい色に、硬い体。

よく見ると結構虫みたいな見た目だが、やはりカニは食べ物の印象が強いようで自然と思考はどらこちゃんと同じように「これは食べられるのだろうか?」に傾いた。

「ちょっとかわいいかも......」

 カニの口元が細かくもぞもぞ動く。

そこからは泡が膨らんでは弾けてを繰り返していた。

その様に少し嫌な予感がする。

「さ、さくら?カニって内臓吐く......?」

「は?」

「口から泡が......」

 私の言葉にさくらが軽く吹き出す。頬がピクピクしていた。

「何言ってんのよ。カニは内臓吐かないわよ......吐くわけないじゃない」

「そ、そうなの......?」

 どうやらカニは内臓を吐き出すようなことはないらしい。

ナマコって不思議なヤツだ、としみじみ思った。

「まぁ言われてみれば、カニって絵本とかでもよく泡出してるもんね」

 カニのそのちょっと間抜けな顔に人差し指を伸ばす。

しかしそれが迂闊だった。

「っっっったい!」

 カニに指を挟まれる。

案の定カニは落としてしまった。

水に音を立てて沈み、岩の隙間に潜り込んでしまう。

「馬鹿だ。馬鹿がいる」

「うっさいなぁ」

 人差し指を水につけて冷やす。

けれども、水溜りの水は生温く、冷やせるわけもなかった。

さくらが笑いを堪えている横をどらこちゃんが通って来る。

「大丈夫かぁ?」

「血は出てない」

「だろうな」

 どらこちゃんですら半笑いだった。

 正直びっくりしたのが大きくて、どれくらい痛かったかとかは覚えていない。ただまぁ痛かった......と思う。

「あたっ......」

 少し離れた場所でみこちゃんの声が上がる。みこちゃんもカニに挟まれたみたいだ。

「大丈夫か!?」

「ちょっと......大丈夫?」

 二人とも心配そうに様子を窺う。

みこちゃんは「大丈夫です!」と笑って答えた。

「いや、扱いの差......」

「あんたはまぁ何だかんだ大丈夫でしょ。知らないけど。あと自業自得」

「それはみこちゃんもでは......?」

 最後の文言について文句を言う。いや、本当は前半についても言いたいくらいだ。

 さくらが私の文句に軽くチョップして答える。

まぁカニのハサミよりは痛くなかった。

続きます。

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