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きらきら・ウォーゲーム  作者: 空空 空
きらきら・ウォーゲーム
10/547

My name is...(10)

続きです。

「アンキラサウルスはキラキラ粒子の力でしか倒せないニャ」

「つまり......?」

ゴローに答え合わせを求める。

「この場に、奴らを倒し得る力を持っているのはキミだけ。狙いはキミにあるニャ」

その言葉を聞いて、シートベルトを外す。

「おじさんは......逃げて」

おじさんが何か言う前に、ドアを押し開いて外に飛び出す。

「ゴロー!あいつら着いてきてる?」

落ち葉を鳴らして、竹林の奥へと進む。

「ちゃんと両方着いてきてるニャ」

何が出来るかなんて分からなかったけど、今は緊急事態だ。やれることをやるしかない。

「どうするニャ?すぐに追いつかれるニャ」

「戦う......。元々そのために来たしね」

怯えてばかりもいられない。

「わかったニャ。奴らの攻撃ダメージもボクに来るから大丈夫ニャ。落ち着いて。キミなら出来るニャ!」

勇気を振り絞って振り返る。

竹の隙間を縫ってくる奴らを迎え撃つ為に、退かない。

仁王立ちで堂々と待ち構える。

震えが止まらない体が頼りなく感じるが、それでも今はやらねばならない時だ。

視界には二頭の獣。

二頭ともギリギリまで引きつけて、超能力で......超能力で......?

「ゴロー......超能力ってどうやって使うの?」

「危ないニャ!」

アンキラサウルスの頭が振り下ろされる。

ゴローの声に反応してなんとか横に退避したが、衝撃で隆起した地面に浮かされる。

空中で身動きのとれない私に鞭のような尻尾が迫る。

「ふっ......」

思わず目を閉じる。

尻尾は直撃し、吹き飛ばされ更に竹に身を打ちつける。

「いた......くない......!」

これがダメージの肩代わりというものか。

ゴローは空中で器用に身悶えしているが、震える腕で親指を立てている。

「だ、大丈夫......ニャ」

「ゴロー......」

アンキラサウルスと私の間の距離は十メートルを超えるだろう。

それだけの苦痛をゴローは味わっているわけだ。

「痛そー」

後で言うこと一つ聞いてやろう。

こうして吹き飛ばされたわけだが、距離をとることは出来た。と言っても既に埋まり始めているが。

こうなると超能力頼りになるわけだが、肝心の使い方がわからない。

迫り来るアンキラサウルスの向こうでゴローが叫ぶ。

「超能力を使うっていうのは、生えてない尻尾を振るようなものニャ!想像力にものを言わせるんニャ!」

だが肝心のアドバイスは感覚的過ぎて、土壇場で実践出来そうもなかった。

「どうすれば......」

空いた距離もとうに埋まり、眼前で二頭とも頭を振りかぶる。

尻尾の無い私に出来ることは......。

足元の小枝を拾う。

「尻尾を生やすしかないじゃない」

小枝に光の粒が集う。

その光にアンキラサウルスは咄嗟に一歩下がる。

光の粒は形を成し、小枝を一振りの剣に変えてみせた。

再度アンキラサウルスが踏み込み今度こそその頭を振り下ろす。

「ふんっ!」

それを剣で受け止める。

強い衝撃と共に、足が腐葉土に少し沈む。

しかし、ゴローにダメージはない。

「いける......!」

もう一頭の頭も振り下ろされるが、今度は剣撃で応戦する。

斜めに振り抜いたそれは、見事にハンマーを切り落とす。

衝撃で怯んだアンキラサウルスに更に畳み掛ける。

前転で懐に潜り込み、腕の付け根に突きを一つ。

確かな手ごたえと共に刃が貫通する。

「ここから更に......!」

剣を持つ手に力を込めるが、そう一筋縄ではいってくれない。

アンキラサウルスは自ら仰向けになる。

視界が半周して、遠心力によって振り払われる。

今度は比較的近くの竹にぶつかってしまい、距離も開かない。

しかし、幸いなことに剣は私の手にしっかり握られている。

体を起こしている途中のアンキラサウルスに駆け寄る。

「だ、ダメニャ!」

「へ......?」

2頭目とのやりとりに集中するあまり、完全に一頭目を視界から追い出してしまっていた。

頭突きが迫ってくるが、人間の伝達速度では対応出来ない。

「マズイ」という思考が渋滞する。

分かっているのに動かない体がもどかしい。

そして......。

私に迫っていたアンキラサウルスは、頭を砕かれた。

「なっ!?」

状況に理解が追いつかない。

やがて頭を砕かれたアンキラサウルスは粒子となって霧散する。

その光は真っ直ぐに巨大な翼を広げた少女に吸い込まれていく。

その少女のネクタイの結び目には赤い宝石が光っていた。

体を起こしたアンキラサウルスが吠える。

声に驚いて咄嗟に振り抜いた刃が喉を掠め、先程と同じように光となって散る。その光の行く先はゴローだった。

少女が赤い飛膜を畳みながら、地面に降りてくる。

頭の右側で縛ったサイドテールに、少し吊り上がった目。

間違いなくその姿は......。

「「キミは......」」

少女と私の声が重なる。

こうして、もう一人のキラキラネームの子と再会を果たす。

お互いに視線を交わしたまま、まんじりとも動かない。

唾を飲み込む音が頭に響いた。

「......何だニャ?この微妙な空気」

続きます。

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