プロローグ
オークっていろいろな解釈があるみたいですが、今回のはブタ顔の肥満体です。
僕達勇者パーティーは、魔王城の前に辿り着いた。
「ついにここまで来たね」
僕は呟くように言った。
これまでの長い旅路を思えば感慨深ささえあった。それほどまでに過酷な旅だったのだ。
魔王が現れてから勇者としてたくさんの魔物と戦ってきた。人類最強とまで呼ばれた僕だけれど、仲間がいなければここまで辿り着けなかっただろう。
「魔王城に辿り着いたからって気を抜くなよレオン。魔王を倒すまでがアタシらの使命なんだからな」
そう言って手綱を締めてくれるのは女戦士のアデリーナだ。
肩までかかるほどの赤い髪に気の強そうな目をしている。実際に剣を持った彼女はどんな敵が相手でもひるむことなく前へ出て仲間を鼓舞してくれる。僕達パーティーの前衛の要だ。
女の身でありながら国では最強の剣の使い手なのだ。アデリーナの強さは僕が背中を預けられるほどに信頼できる。彼女にそう伝えると顔を真っ赤にしてしまうので実は恥ずかしがり屋なところがあるのを僕は知っている。
「そうやな、ここにいるのは人類の宿敵である魔王や。今までの敵とは比べもんにならんやろ。でも魔王さえ倒せればうちらの旅も終いや。そん時はいっしょに飲もうなレオン」
僕に向かってウインクするのは女魔法使いのパウラだ。
緑髪を束ね、豊満な体を見せつけるように胸元が開いたローブに身を包んでいる。そんな気さくさと大胆さを兼ね備えた彼女は魔法のエキスパートであり、僕達パーティーの頭脳と呼べるほどに頼りがいがある。
少し珍しいしゃべり方だけれど、勇者パーティーに入るまで彼女は師匠とずっと二人きりで修行していたのだそうだ。その師匠のしゃべり方が移ったとのことだ。そんなパウラは愛嬌があり、いつも僕を和ませてくれる。
「ちょっとパウラ! 言ってる傍から終わった後のことを口にしないでよっ。レオンが気を緩めちゃったりしたらどうするの!」
冗談めかしたパウラをたしなめるのは女僧侶のトワネットだ。
ウェーブした金髪に雪のような白い肌。パウラいわく厚めの法衣でわかりづらいがかなりの巨乳なのだそうだ。……こほんっ、そんなのはどうでもよくて、彼女は僕達勇者パーティーを支える回復担当なのである。
聖女と呼ばれるほどにトワネットは神の加護を受けている。それは神聖魔法の強力さが物語っていた。どんな傷でも回復させ、毒だろうが病だろうが呪いだろうが、彼女に治せないものはない。
そして勇者パーティーの良識人でもある。パウラだけじゃなく、僕やアデリーナでさえたしなめられたことがあるのだ。
そんな彼女達と僕、勇者レオンは魔王討伐の旅をしてきた。
苦しいこともつらいこともあった。けれど、その度にみんなとの絆を深められたと思う。
変な話だけれど、僕はずっとこのパーティーで旅をしたいと思った。苦しいこともつらいこともあったけど、それでもそれ以上にみんなといるのが楽しかったのだ。
でも、それもここで終わりだ。
魔王が侵攻してきたせいでたくさんの人々が死んだ。ここまで来る道中で見てきたことを僕たちは忘れないだろう。
人々の悲しみをここで絶つ! それが勇者として与えられた僕の使命なのだから。
短く呼吸をする。気持ちを落ち着けるためにはそれだけで充分だ。
「みんな」
呼びかけに応じてアデリーナが、パウラが、トワネットが、みんなが僕を見た。そして頷いてくれた。
「行くぞ! 魔王を討伐して世界に平和をもたらすんだ!!」
すべての悲劇の幕を下ろすために。僕達勇者パーティーは魔王城へ突入した。




