デュア達、一行の前に現れた魔族 1
本当にゴメンとピュティアが念を押して詫びる。デュアが代表になって目は口ほどにモノを言う感じの笑顔を見せた。
「……アンタら一応確認させてもらうが後をついてきてなかっただろうな!?」
あなたが過去話に夢中の時、一時的にロキさんに入れてもらっただなんて正直にいう必要はないだろう。余計な諍いはごめんなので否定しておけばバレる心配は無いと踏む。
「い……嫌だなぁ、私達はそんなマネしません。断じて!」
メイにどこか怪しい雰囲気を感じた気もしたが、気にする程度の事ではないだろうとディリーが話を打ち切った。
「そうか、ならいい。ただ聞きたかっただけだ」
結局は話に踏み込んでいなかったメイ(デュア達全員共通の話だが)はディリーの性質が気になってしまい、心の内をのぞいてみたい衝動に駆られてしまう。
(どうしてこの人、こんなに暗い感じなのかしら……。過去に何かがあったんだろうけど? マインドスキャンで読み取りたい……)
グレイはメイがうずうずしているのに気づき、手を握って、目だけでダメだという視線を投げかけた。
メイは上目遣いで「ちぇっ」というように残念そうな表情を浮かべる。
誰もが遠慮して当然な話なのだが、話して欲しい気持ちが先行してしまうトムはディリーにみんなが聞きたがっていた事を質問する。
「なぁ、ディリーさん。どうしていつもそんなにつらそうな顔を見せることがあるんだ?」
困った様子でディリーが「そ……それは……」と息がつまりそうになっている。
「その理由は……」
思い出すのも辛いといった表情をディリーがしたので、デュアは何かを悟った。
「やめなよ! トム。言いづらいことも、言いたくないような話も誰だって持っているものでしょう? トムだってあんな事やこーんな事があったじゃないのー」
やはり付き合いの長い仲間の事を(しかも年も近いし)、知りたそうに興味を持った双子ちゃんがデュアに聞き返した。
「ねぇねぇ。あーんな事やこーんな事ってなーにー? デュアはトムと幼なじみだから恥ずかしーことやら何やら知ってるんだろうなーっ」
一呼吸置いて、双子ちゃんがほぼ同時に「聞きたい聞きたーい」と矛先をトムに移す。
「っだぁーー!! うっ、うるせーうるせー!! どうでもいいだろっ、そんなことぉ~~!!」
ギャーギャーワーワー騒いでいるデュア達をみている内にディリーはニヒルな笑みを浮かべた。
(なんか……次から次へと話が飛ぶ奴らだな……。フッ、まぁ、たまにはこういうのもいいな。俺はまだ……心から笑うという出来事には出会えそうにないが)
そのディリーの微笑みを見逃さなかったデュアが思ったまま口にする。
「わぁ、ディリーさん可愛い顔もするんですね」
「か……可愛……!?」
その言動がおかしくてピュティアが遠慮のない感じで笑った。
「ナ……ナイスボケねっ、デュア。ディ……ディリーの事をそんな風に言……っ。あはははは!! も……もうダメェ~~!」
笑い転げているピュティアに「笑うなんて」とデュアが恥ずかしがっていると、ディリーが「笑うな」と彼女の頭にげんこつした。ピュティアが痛がりつつ頭をおさえる。
「もおーっ、殴ったりしないでよねーっ。ディリーの馬鹿!!」
そんな悪口に彼はしれっとした顔でさらりと
「馬鹿という方が馬鹿だろ」
聞えよがしな小声でつぶやく。その後で話を軌道に戻した。
「さて、話を再開しようか。どの話だったかな……」
その時、近くに来た不気味な存在が「……何ですかねぇ、その話って」と聞いてくる。
!! 気配がないも同然だったので只者ではなさそうだとディリーが先頭に立って構える。それからそいつに怒鳴りつける。
「誰だっ!! お前は!!」
不敵な笑みを浮かべた魔族が改めて名乗った。
「嫌ですねぇ、忘れてもらっては……。ルシファーですよ皆さん」
「いや、マジで忘れていたかも。影が薄いんじゃないか、どうなんだかな?」
魔族は言葉をつまらせながらも、重要な事を聞くかのような訪ね方で質問してくる。
「う……っ。そ……そんな事はどうでもいいのです……! ところで唐突に聞きますがあなた方は『友』というものを信じますか?」
何を聞いてくるかと思ったらという感じでみんなそれぞれの意見を告げる。当然信じないなんて言う者がいるはずない。
「は? 『友』? ……って信じるに決まってるじゃ~ん」
「そうね、私も信じるわ」
「私もデュアと同じく」
「僕も」
デュア達はそうした考え方だが、何か思う事があるのかピュティアは信じない時期もあるような言い方をした。
「私はどっちかと問われれば信じられない事もある……かも」




