ディリー、ピュテイアの元に戻る(自然とデュア達とも再会)
まんざらでもなさそうではあるが、当然の仕事を遂行しただけだとロキが言い切る。
「んにゃ。それには及ばねえよ。俺の仕事だからさ」
(私よりクイにやってもらった方が良かった)
その思いが顔に浮かんでしまっていたのか、魔祓い師ロキに心配されてしまった。
「どうしたんだ? そんなに浮かない顔をしてよ……。せっかく祓ってやったんだからもうちょっとスッキリした表情をしてくれよ」
申し訳なさそうに恐縮しながらも、ジルヴィアが「でも……」と本音を漏らす。
「ですが、私より弟の『魔』の方が厄介なもので」
「弟?」
話を聞いてくれているのが稀代の魔祓い師という事でジルヴィアは依頼を出した。
「ええ……クイというのですが……。どうか弟を救ってやって下さい」
頭に手をおいたロキは少し困ったような表情をしつつも前向きに検討すると安心させる。
「んー、まあ考えとく。それよりアンタ、疲れているだろ? 休めよ」
「はい。お言葉に甘えて……。もう一休みさせて頂きます」
静かに目を閉じたジルヴィアが静かに寝息を立て始めた。それだけ魔族から人間の体力に戻ってしまったという反動による疲れが残っているということだろう。
それで寝ているのを確認してからディリーがロキに謝罪する。
「? 謝る必要なんてないぜ。お前の事だからあまり話したくなかったんだろ? 予想がつく事なら問題ないさ」
魔祓いにはそれ相応の体力と精神力が必要ある。摩耗しているのは見ているだけで明らかだ。やる事をしてもらったし、休息してくれとディリーは言い残し、この場を後にした。
(変わってないな、ディリーは……)
ロキの家に行く前にこの場で待機していろとピュティア達を待たせている場所に戻ったディリー。
(む?)
ここで間違っていないはずなのだが、誰の気配も感じられない。ここではなかっただろうかとわずかに不安を覚えたディリーが名前を呼ぶ。
「ピュティア……?」
その小さな、しかしはっきりした声も誰にも届いていなさそうである。あの女がいないならと思いついて内緒話のような小声で本名の『美琴』と呼んでみた。
目に見える範囲だが、遠くの方から「ちっがーう!」という声が返ってきた。
ずかずかというような音がしそうな足取りでピュティアが戻ってくる。
「んもーぉ! ディリー!! その名前を呼ぶなって言ってんでしょお!?」
結構な金切り声である。耳をふさいでそっぽを向いた。
「もーぉ!! 聞いてんの!?」
(うるさい……)
怒りの矛先を変える、またはこちらの主導権にしてやるとディリーがピュティアを批難した。
「それよりどこに行っていたんだ? 勝手なものだな」
それにはピュティアも黙っていられない。一度ロキの家に入れてもらった事は隠して(バレていないっぽいし)今までは休息を取るための場所を探していただけだと言い返す。
「な……! 勝手なのはディリーの方でしょっ! 私達は宿屋を探していただけよ! 何か文句あるの!?」
ピュティアの気迫に押されて黙って心中だけでひとりごちた。
(文句って……。ある訳がないだろう)
そこでデュア達の姿を見かけないので彼らについて尋ねる。
「そういえばアイツらはどうした?」
まるで他人のように扱うのがピュティアには気に入らない。
「アイツらですって!? デュア達のことかしら?」
「そ・う・だ」
何故かゆっくりな口ぶりで言ってて来たのが気になった。
(どうしてスローモーション状態で言うのかしら?? ま、いいか)
「先に宿屋で待っているわよ。さっ、行きましょ」
「ああ」
―宿屋―
「ふわあ~ぁ。あー退屈ねえ。ほとんどボス戦ばかりしているって感じぃ~? まったく作者もフツーの魔物を増やしなさいよね、疲れるし」
目をこすりながら作者に文句をつけるメイのメタ発言。そういう内容にしたので謝罪するくらいが関の山ではないだろうか。
「ありゃ? ピュティアさんはどこに行ったんだろ?」
物語の進展に話を移すメイの問いかけに、デュアも言われて気づいたかのように応じた。
「そーいえばいなくなっているわね。どうしちゃったのかしら?」
「ああ。巫女さんなら先刻外に出て行ったけど?」
「フーン、そっか」
言った矢先に用でも足しに行くかとドアをトムが開けた。そのタイミングで何かに当たる音が聞こえる。偶然ぶつけられた状態でバッテンのバンソーコーをつけたピュティアと相も変わらず仏頂面のディリーが久しぶりに彼らのもとに姿を現した。「やぁやぁ」と照れ笑いしながらピュティアが謝罪の言葉を口にする。
「あっははは。ごめんねえ、勝手に行動しちゃって……。ついディリーと2人きりの時と同じようにしていたもんだから……」
「ああ、いやいや気にせんでくれよ」




