ディリーとピュテイア 4 挿絵あり
この話からディリーの昔話が入ります。
本編に入れるのはどうだろうと思いましたが、本編に深く関与させる予定もありますし。
そのまま進めちゃいますね。描写はまだ改善の余地ありかも
(ふう~っ、イテテ……ちっと深かったかもだが止血出来そうなだけマシか……いいや<よくないっちゅーの>)
やるべきことが終了したので外に出ているディリーをロキが呼んだ。
「おーい、ディリー。終わったぜぇ~~!」
家に戻ってきてディリーが「む……」と何かに気づいた感じになる。
「そうか……悪かったな。また……腕を切らしてしまって……」
沈痛な表情をディリーが見せる。そんな顔になるなとロキが笑い飛ばしていたのだが
「いやいや、そんな顔すんなディリー! お前らしくもない! ははは」
しかし、実はまだ止血しきれていなかったので表情に出さないように努めても一瞬顔を歪ませた。
(っくぁー、止まってね~~。血が止まってね―つの!)
血の匂いを察知したディリーがとっさにロキの手を引っ張る。
「ロキ! 腕……じゃねえ、手首を見せろ!」
強引な行動だった。
「……止まってないじゃないか」
自分の装備している白いマントのほんの一部を破いてきつくロキの手首に結んだ。
「ハハッ、サンキューな。ディリー、本当に良いやつだよお前って!」
誰にも見られないようそっぽを向き、照れているかのような声で
「べ……別に当然の事をしたまでだ」
話を真剣なものにするためか、ロキが目つきを変えて質問する。
「なあ……ディリー。聞きたい事があんだけどよ、お前の旅の目的ってルフラ……」
哀しみの目を帯びたディリーが口をふさいだ。
「その……質問は想定内だ」
一度遠い目をして――
「そうだ……俺は……俺は……ルフランを探すために旅に出た」
聞かない方が良かったかと思うロキが困惑の様子を見せる。
「やっぱりそうか。お前らは『親友』って仲だったからな。羨ましいほど……」
目を閉じて
「ロキ……お前は知っているはずだ……俺の右目が見えない理由をな……」
「ああ、知ってるさ。俺もあの光景を目にしたんだから」
罪悪感を感じたのかしょんぼりしたロキを、ディリーが気にしないでくれというのを言葉ではなく態度で示した。
「いいんだ……ロキ過ぎた事は……でもお前達に話せば気が楽になるかもな」
ディリーのやつ、本当はまだすごく気にしているんだろうなとは思った。が、言葉に出すのはやめておく。
「過去をさかのぼること5年くらいになるか……」
◇
「ディリー! ディリー!」
名前を呼ばれたディリーが声のした方を向く。
「ん? 何だよ、ルフラン」
過去のディリー(12歳くらい)は親友がいて表情も結構豊かである。親友のルフランとずっと未来まで切磋琢磨すると思われてきたのだが――
「あの……あのなっ。俺、俺……剣士採用試験に受かったぞ」
この世界でも剣士というどこかの王家を守護可能な人材発掘が盛んな大国がいくつかある。その中で、一握りの採用を勝ち取ったルフランが興奮するのも無理はない。
「おお! 良かったなルフラン。俺の次にだけど受かって」
子供離れした剣技を見せたディリーは一足先に合格していたのだ。ルフランは根性が認められての育成枠だろう(努力は人を裏切らないがこの世界の騎士精神に宿っている)
「あ~~、なんだよぉ。ディリー! すっげー憧れてた職業だったんだからなっ」
ディリーは昔から口数が多いとはいえない性格だったが、ルフランとだけは気が合ったのか良く話す。ルフランの無垢な笑顔に釣られているのだった。
「あ~、楽しみだよなぁマジで。俺の初仕事早く来ないかなー」
「んな早く来ねえよ、俺だってまだ3回程度しかやってねえんだから。お前にそんな早く仕事が来やがったら」
もちろんそんなに甘い世界じゃない。ルフランはポジティブすぎる。だけど、ディリーはそんな彼の考え方にやる気をもらった。
それとは別に、さっきディリーの思った気持ちは違う。げんこつの形をした手でルフランを襲った。それからディリーはうめぼしのようにルフランの頭をぐりぐりする。
「いたっ、いたたた……も~~、ディリー! 俺の方が年上なんだぞ! まったく力が強いんだから」
「何を言っているんだルフラン。俺の方がなぁ、先輩なんだぞ」
う……っと痛いところをつかれてルフランは少したじろいだ。
「……でもっでもっ俺だってお前に勝てるものがあるぞ!」
何を言う気なんだかとディリーは鼻で笑ってから聞く。
「何だ? それは」
意味深な笑みを浮かべてルフランがじらす。
「知りたい~?」
「ああ」
さっさと先に話を進めたいのでディリーは急かした。
「早く言えよ」
そ・れ・は・だとか恥じらう乙女のような動きのマネをするものだからディリーはだんだんイライラしてきている。




