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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
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ディリーとピュテイア 2 挿絵あり

クスっとしたような表情でピュティアが微笑んだ。

「いーのかしら? そんな大声出して。そのかついでいる人が気付いちゃうわよ~~」

 少し怒った感情をぐっとこらえてディリーが話題を変える。

「トムといったか……。ほんとうに大丈夫なんだろうな?」

 調子の良い笑みを見せて

「大ー丈夫だぜ。気にすんな」

 少し息切れをした気もしたが、持ち直して心配そうな表情のデュアに微笑。大丈夫だと仕草で強調した。


「何を言っているんだ、トム。そんな顔色をして……。街に戻ろう!」

 少し前は自分が迷惑をかけたというのもある、グレイがそうわずかでも声を荒げたが、ぱしっと差し出した手を払って――

「俺だけのこのこ帰れっていうのかよ! そんな事出来っかよ!」

 グレイとしてもトムの気持ちを理解したい気持ちはある。だけど今はそんな感情よりも心配の方が強いんだという事を行動で表現した。

(う~ん、能力が『炎』ってだけに使命感に燃えているな。それ以外の理由もあるかもだけど。~~でも僕ってこういうのガラじゃない……。けど……!)


 良い音がしそうな強さでグレイがトムの頬をひっぱたいた。

「みんなの失敗がわからないとでもいうつもりか!! わからないのか!? 僕だってこんなマネをしたくはなかった! だけどお前はこれくらいしないとわかってくれないだろうっ!」

「グレイ……!?」

 ひっぱたかれた顔を抑えながら珍しく感情的になっているグレイを見てトムは目を丸くした。

しばらく呆然としていたが気を取り直して

「何すんだ、この野郎! ……うっ……」


挿絵(By みてみん)




 頭に来てトムは叫んだせいか、酸欠を起こしたかのような状態だった。下を向いてしまったトムのあごをくいっと上げてグレイは心配そうな眼差しで言う。

「言わんこっちゃない」

 少し呆れたようにしていた。トムは酸欠で頭がくらくらしているものの言い返すくらいの気力は残っていたようだ。

「うるせ……」

 まだ強がるのかと本当に呆れた様子で

「これはもういかん状態だな。お前の顔色を見ると」


 しばらく間を置いたグレイがトムに指を差し向ける。

「お前、強制送還!!」

 再び驚きのあまり、トムは呆然としてしまう。ピュティアがそんな2人の間に割り込んで彼らにとって朗報な情報を提供してくれた。

「その必要はないわ。ディリー、いいでしょ?」

 ずっと目を覚まさないように当て身で気絶させているジルヴィアを少しの間降ろし、ディリーが腕をむ。

「……アレをやる気か?……」

 

 まっすぐな眼差しでピュティアを見つめる。ピュティアはただ首を縦に動かしてうなずいただけ。

「あれれ? ディリー心配してくれるんだ? いや~、嬉しいなぁ。でも大・丈・夫だって」

 軽快な言い回しでピュティアが目を離さないわよと見つめたが、見つめられたディリーはそっと目を閉じ、腕を組んだ。

「お前がいいのなら俺は何もいう事はない」


挿絵(By みてみん)




 ピュティアがすっとトムの前に手をかざした。そして詠唱し始めた。

――なんじ、炎を司るものよ。癒す力を我にあたん――――

 やわらかい光がトムを包む。しばらく手をかざして治癒に意識を集中させ終わり、デュア達に「もういいわよ」と声をかける。

「さぁっ、もう大丈夫よ。トム君、目を開いて」

 優しく包まれた感触を感じて気づかない内に目を閉じていたトムが目を開ける。またディリーはちょっとした掛け声を出してジルヴィアを担ぎ直した。そしてちらりと同行者になった全員を見たが、すぐにきびすを返してそっぽを向いてしまった。


「ディリー! 少しぐらいは愛想よくしたらどう!? もおっ、困ったちゃんねぇ。少しぐらい他人に自分の事をさらけだしたらどうよ!?」

 ディリーが一瞬ピュティアと目を合わせたが、その言葉が気に入らなかったのか早足で目的地に黙って進んでいく。

(もー、ディリーのばかっ)

 控えめな声量で「ピュティアさん……」とデュアがささやいた。

「ん? なぁに?」

 優しげな声で聞き返してくるピュティアにデュアは遠慮してしまう。


「あ……いえ、別に……。ただお礼が言いたかっただけで……」

 微妙にむっつりした表情に変わってしまったピュティア(本人は気づいていない)

「あ、いーのいーの……にしても彼は偉いわね。ちゃーんとみんなの事考えているもの。ディリーとは大違い!」

 ディリーの方を向いてあっかんべーのような仕草を気づかれないようにしていた。

少し間を空けて

「行きましょう。ディリーったら歩くの遅いんだからっ!」

 あっ……ディリーさんに好意を持っているんだなとデュアはピュティアを応援したくなる。


「おい、着いたぞ」

 黙ったまま早足で進むディリーを追いかけるのに精一杯だった全員が、森の中にある目的地についたおかげで疲れの色が表れていた。

「あ゛~~、やっど目的地に着いたのぉぉ……。疲れたぁ」

 衣服の汚れ可能性なんて考慮せずに土の上に誰もが座る。


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