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気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
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ジルヴィア戦 イベントバトル 5

「凍れっ!!」

 炎に包まれていた剣が炎ごと冷気の強大さに負けて凍りついてしまった。

(剣……が!?)

「どうです? 私の『力』は」

 ジルヴィアが力を誇示する。

(くっそ……どんなすげえ力だ……はりついて離れない……!)

「どうしました? その手では攻撃できないでしょう? 全てを凍らせて差し上げましょうか?」

 幾度も問いかけられる疑問。トムは、諦めるつもりはなく炎の力を上げて氷を溶かす努力をしているの.だが相手の氷の魔力の方が高いのか意味があるように感じ取れない。冷たく心臓を鷲掴みされるかのような錯覚に陥る瞳、舌打ちをしたが観念した。


(俺も潔く降参してやろーじゃねーか……)

「殺るなら殺れよ」

 覚悟を決めた目で対峙するジルヴィアを力強くにらむ。


                             ◇

 

 ――森の中――

「ディリー!! もう何時間か歩いてない!? もう~~」

 歩き通しというのは疲れるものだ。ピュティアが文句を言い始めるのも無理はない。

「うるさい、ピュティア! もう少しだと言っているのに……」

「もう少しもう少しって全然もう少しじゃないじゃないのよぉ~~う!! 本当にもう」

 口を尖らせてぶーたれている割にはしっかりついてくるピュティアを見て、ディリーは苦笑しながらも励ましの言葉を投げかけていた。

「まぁ、そう言うな。もう少しもう少し」



(殺るなら早く殺れってんだ。全くよ……)

 実力差に観念して覚悟を決めていたトムだったが

「や……やめてくださいっ、ジルさん!!」

 デュアがトムをかばうように立ちはだかった。

「デュア……」

 驚いたトムが目を見開く。

「こんな無意味なことはやめて……。人を殺めたところで何の得にもなりませんよ! 『心』を取り戻して下さいっ」


 ジルヴィアが首を横に振って否定した。

「言ったでしょう? 時すでに遅しなのです」

 トムに言われて様子を見ていたメイだったが、相手にされていないのもしゃくなのか口を挟む。

「ちょっとちょっとー! 私らの出番ってゆーか、おいしいところはどうしたのよー、忘れないでよっ!」

(シリアスシーンなのに雰囲気をぶち壊すなよ)

 グレイがメイのタイミングの悪さに何を言ったらよいか困っているようだった。


「私もオイシイのやっちゃうもんねーだ!」

 仲間に危機が及びそうなのだからメイの行動にも一理ある。パーティーを組んでいるのだから助けあいは当然だ。メイが風の力を弓矢に収束させて放つ。

「ネオ・ウインドアロー」

「何をしても無駄ですよ」

 弓のしなりが音を立て、矢が放たれた! メイ以外の3人があっと息を飲む。しん……と耳が痛む程の静寂が辺りを包む。ジルヴィアの頬をかすった音が聞こえた。


「あ~ん、もおっ。私のバカバカッ」

 もう少し深いダメージを与えたかったメイは失敗したと自分を責めた。そんなメイをグレイがなぐさめるつもりで

「そんな事ないよ、メイ。攻撃がかすっただけ上達したってコトじゃないか」

 ジルヴィアが頬についたキズから血をはらう。

「よ、よくも傷をつけてくださいましたね」

 豹変したジルヴィアに気後れしていないところを見せようと、メイが気丈に振舞った。

「な、何よ。それがどうかした!?」


「どうもこうもありません。倍返しにしてさしあげますよ」

 背筋がぞくっとして凍る思いを味わう。

――すべて凍れ――

魔族化しているジルヴィアの翼から凍てつく冷気が流れた。すると周囲はだんだんと凍っていく。ついには地面までも氷のリンクのようになってしまう。

「な……なんて事……」

「デュア、しっかりしろ。今のアイツを話が通じるアイツと思うな!」


 この状況下でもデュアの『優しい心』は健在で、嫌だという風に何度か頭を振ってうなだれていた。

「わかってる……わかってるけど……! やっぱり私は傷つけてまで改心させたくない……」

 その気持自体は尊いものである。トムにだってそれくらいのことはわかる。だけど今、それが可能かもしれないのは自分達だけなのだ。誰かがやらなきゃ、もっと悲劇が起こるかもしれない。それを理解してもらおうとデュアの頬をトムがはたいた。

「何を言ってるんだ、バカヤロウ! じゃあデュアはアイツが死んじまってもいいっていうのか!?」

「やだ……」

「だろ!? だから何としてでも改心させてやらなきゃな!」


 トムに叩かれた時はほんの少し頭が麻痺していた。だけどこれからやろうと前向きな気持ちにさせてくれたというのも事実である。

「うん……」

 まだ少しうつむき加減で(ありがとう……トム)とデュアは思った。

「おわっ!?」

 さて、やるかと気合を入れた所で、氷の地面にされていた事を一時忘れていたトムが滑りかけてしまう。

「ふぃ~~、アブねーアブねー」


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