ジルヴィア戦 イベントバトル2
「クックックッ……」
この場面で笑われると想定されていなかったグレイは質問せずにいられなかった。
「何を笑う!?」
「フ……。いや、貴様があまりに馬鹿なんでな……」
悪口を言われてうろたえるグレイ。
「な……なに!?」
うろたえているグレイは自分の体がジルヴィアの使用した魔族の放つ氷によって動けない状態になっていく事を自覚し始めていた。
(気づかなかった……。また僕はみんなを悲しませ、迷惑をかけてしまうのか……)
すでに迷惑をかけているという罪悪感もあるので、グレイの中では絶望感が強まってしまうのは無理もない。だが、相手の力が強すぎてこの氷をどうにか出来そうもない。
「その氷はじわじわとお前の体を凍らせていくぞ」
ああっ!!
グレイの顔に諦めが浮かんでくる。
「僕は……まだあなたを前の姿に戻す。例えその姿が本来の姿なんだとしても。そのためにはまだ凍れないっ……」
グレイもいろんな経験をしたからそういう宣言が可能だ。不屈の精神で諦めてしまっていた弱い自分の心を強くして何かに目覚めた気がした。
「何を言うか。私が本物だ」
グレイの視線を感じたトムが言わんとしている事を感じ取る。
「グレイ、溶かせっていうんだな。よし!! ファイアースト~ムッ!!」
それに続いてトムがグレイにしている事に気づいたメイが風の呪文を付加した。
「ウィンド・ウィンド」
風と炎が一体化したものがグレイの体に襲いかかる――――!!
「フッハハハ!! どうした血迷ったのか!?」
トム達のやろうとしている方法がジルヴィアには理解できていないようだ。デュアはわかったので鼻で笑って
「そんなワケないでしょ!」
グレイを包んでいた炎が橙|色の強い光を放ちつつ消え去っていった。
「ぐぅおおお……っ」
「フフ……目が眩んだかしらね」
頬を緩めて微笑みを作るデュア。ジルヴィアの方だけに光がいくように角度調節していたし、光反射の術をいつの間にか発動させていたデュアのお陰でデュア達全員に影響はない。
「はっははははははっ!!!! どうだ!? 少しは溶かせちまったぞ!」
(なぁにい~!?」
(この姿の時は知識をほぼ活かせないみたいね)
まだ視界が回復していない内に男2人が両腕をがっしりとおさえ、メイが魔力制御用だという眼鏡をジルヴィアに眼鏡をつけに向かう。
「今よっ!!」
失敗しないようにしっかりかけ直した。
――――――――――
「僕の状態確認のためにうかつに近づくとは愚かな奴のすることさ」
「う……私は一体?」
一時的に記憶がぼんやりしている事をジルヴィアは理解した。という状態から自分に起きていた事実を推測する。
(ま、まさかとは思うが本来の姿になっていたのかも……)
デュア達はまた余計な負担のかかるバトルは望みたくない。そう考えて何事もなかったかのように聞いた。
「大……丈夫ですか? ジルさん」
「え……ええ……」
デュアがうまい演技でジルヴィアを騙しにかかる。
(気づいてないのか? 私の正体……)
b続けてトムもしらばっくれている感じを隠して話しかけた。
「どうしたんだよ? ボーッとして?」
ハッとして
「い……いえっ、何でもありませんから気にしないでください」
信じこませようとしているデュアとトムの演技にメイは舌を巻く。
(は~っ、デュアとトムってばナイスコンビネーションなんだから)
しかし、これに気づかれてしまったので彼彼女らの演技は無駄になってしまった。それはグレイの半身が凍ってしまっていること。
(どうもぼんやりしている時間があるはずです。やはり私は本来の姿になっていたんだ!! くそ……まんまと演技に惑わされる所だった……)
グレイはジルヴィアの方から殺気を感じ取った。
(な……冷たい視線が……!? やっやばいっ、僕……まだ少し凍っている部分が残っていたのか。駄目じゃん僕……サル芝居だとバレバレになっちゃっているじゃないか!)
グレイが焦っていると、どうしてかわかったメイも意味がなくなったと気づいて落胆する。
(……どうしたのかしら? グレイったら怖い顔をしちゃって……。アッ! もう! 溶けきってなかったの!? ああんっ、もうっ。デュアとトムの頑張りがサル芝居よっ、これじゃあ!)
「どうしちゃったの? 2人とも怖い顔をして」
メイは手招きをしてデュアを呼び寄せてこっちに来るように促した。
デュアは首を傾げてからメイの近くに行く。
「デュアーっ、もうバレバレよー」
「え? 何の話?」
やっぱり気づいてなかったみたいねと苦々しい表情になったメイがデュアに告げた。
「ジルヴィアにっ、全部バレちゃっているってこと!」
「え~~!? 本当に!?」
グレイを見るようにって視線を向け、
「あの通りグレイの氷が溶けきってなかったのよ」
それにはデュアも唖然とするしかなかった。




