表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気持ちの甘さ(改稿版)  作者: 霜三矢 夜新
この幹部は……!
80/112

ジルヴィアの術にはまっている? 5

 ジルヴィアにとっては善は急げとばかりに過去の身の上話でデュア達の気を引く。

「……私の前世はごく普通の家庭でして……。しかしある日年若い幼子の私達の前に今の……その……叔父様が現れまして私達を……というか私とクイだけを連行してきたのです。私達の魔力の素質がどうたらとね」

 どうも続きを聞かないとすっきりしないと思ったデュアが続きを催促してしまった。

「あなたは……! あなたの両親……は……どう……なったの……!?」

「まだ……生きているのではないでしょうか。先ほどの話の続きですが、私とクイは叔父さんの手で一度……」

 遠い目で昔を懐かしむかのような瞳をしたのもほんの一瞬、重い話をしているのでジルヴィアも真剣な顔立ちになっていた。


「殺されたんですね」

 母親がどれだけ絶望してしまうのかと心配な部分でも有りましたがと言う訳で、殺されかけている状況でもどうにか最後にジルヴィアは苦しいのを押し殺し笑顔を見せたという。そんな信じがたい話をデュア達に披露し続ける。

「はい……2人もろとも剣で一突きでした。そうして私達は悲しさ……怒り……憎しみ……いろんな味わいたくもない痛みを経験し……クジャク様に魅いられたようなのです」

 魔族の側近バラス、話を聞いている限りでは最初はジルヴィア達を養う1人の父親にすぎなかったはずだ。それがどうしてなどデュア達は疑問がつきなかった。

「ところで……そのバラスって人はあなた達の叔父なのよね……。どうして魔族になってしまったの?」

「それは……いずれお話する事があるかもしれませんが今は。私は剣を抜かれた後、最後に聞いたのです『なんで……こんな事……するの?』と。しかし叔父さまは冷たいでこちらを見て……何も言いませんでした」


 その先の情報は伝聞でしか聞かされていませんが――

「それで私達の心臓を取り出し……その代わりに新しい何か……玉のようなものを埋め込んで生き返らせたとの事。つまりは魔族のコアに入れ替えたのでしょうね」

 トムは似たような経験をしたのでどこか理解出来る部分がある。

「もしかしてその……お前のその『氷結』の力は……その玉のせいじゃねえのか……」

 気づいたように

「そうかもしれません……」


 気になっていたどうでもいい話をついでにメイが尋ねる。

「ねぇ……あなたはどうしていつも眼鏡をかけているの」

「僕は近眼なんだけどね」

 誰からも聞かれていないのにグレイがそう言うが、それは流されてジルヴィアが返答した。

「私も一応魔族のはしくれですから当然邪悪なものを持っていますので……」

 ただ視力の関係や、目の病気あたりでかけているだけだと思っていた。まさか魔力制御装置を兼ねていたとは。まだメイは情報を引き出そうとしている。

――それを抑えるため……?


「この辺で僕の話は中断します」

 これ以上は無理かとメイの諦めも早かった。

「ハア……よーくわかりました」

「テメェ、結構苦労人だったんだな……」

 共感されたのでジルヴィアもつい愚痴の1つもポロッと言ってしまうというところだ。

「そうなんですよ! おまけに玉のようなものも入れられるし……ボクってば可哀想なんですよ~~」

 相手の事情にほだされないように考えているトム。同情を……誘っているかもしれねえな……

「カワイソ~なのね」


 デュアとメイ女の子達は共感を覚えているようだが、グレイの見立ては違った。

……なんかジルヴィアって人……目の奥になにか刃のように鋭いものを秘めているような……。なんか僕達を偵察しているようなそんな感じがする。能力も『絶対零度』に近いし、味方ぶって僕達を油断させようというのか……?

「どうしたの? グレイ、急に黙っちゃって……」

 メイに問われて、まだ悪い意味での予測段階では何も言う事はないかなと気にする必要はないと告げる。

「う、ううん。いや、何でもないよ」

 ジルヴィアがグレイをガン見して、邪魔な存在になりそうなら戦線離脱させないといけないかなと企んだ。


――おや、この人……もしや私の正体を悟ってしまったのか? それでしたら誰にも壊せない絶対に溶けない『ブリザーコフィン』で今のお若い凛々しい姿のままで一生残してあげましょう。


 そんなジルヴィアの恐ろしい計画なんてわかるはずもなく、グレイはメイに詰め寄られている。

「そうかなぁ? 動揺しちゃっているけど?」

「そ、そんな事ないよ、やだな~~」

 

 そんな双子ちゃんだけでなく、デュアも考えだしていて引っかかる所をトムに小声で耳打ちした。

「ねぇ、トム……なーんか、うさんくさい話だとは思わない?」

「そうか? 俺は別にそこまで変な風には見えないけどなあ」

 トムの気づきの遅さににデュアはつい罵声を浴びせてしまう。

「んっもう! 鈍感! アホ」

「なんだよー、そこまで言う事ないだろ。大体がどこでそう感じるってんだよ」

「目よ、良いか悪いかぐらい目で見分けられないの? ちょー、にぶいっ!」

 どうもジルの目は、疑ってかかればすぐにわかるような悪い何かが映っているように感じるらしい。それはそうと、トムが的外れな事を口にした。

「おい、『ちょー』ってなぁ、お前はコギャルか!」


 

今となってはコギャルとか古い言葉ですよね笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ