ジルヴィアの術にはまっている? 3
そして集中して武器に力を集中させたのだが――
「いくわよ~~~~」
ザシュ!(トムの剣) ピシッ!(デュアのムチ) ズバッ(グレイの剣)
先に3人が横一閃に斬ったり、いっぺんに巻きつけて叩きつけたりして倒してしまう。3人の全体攻撃で戦闘終了してしまったのだ。
「~~って! もうっ。やらせてよー、思いつきワザ~~っっ」
まずはグレイが申し訳なさそうに謝罪しながらも、共感を求めた。
「やぁ、ごめんごめん。だって……ねぇ」
おぉっ! とトムがあいづちを打つ。
「だってよぉ、こいつら呪法を使うまでもねえぜ。考えてみろよ、なぁ。俺らは結構レベルアップしている感じがしねえか?」
まずデュアが経験値を数えた。
「ん……経験値が100P入ったみたい」
続いてグレイが魔物の近くに落ちているこの世界の貨幣、Gを拾い上げる。
「Gは……68枚あるね……少し儲かったなー!」
素直に戦闘のご褒美と言えなくもない経験値やGを喜んでいる2人と違って、メイとトムが別の事で軽くもめ合っていた(とはいっても、トムが劣勢)
「ねー、トムぅ? レベルアップしたのは誰のおかげだったかなぁ」
う……っと少しだけ声をつまらせたものの弱気になっている自分を悟らせまいと、トムが強い口調で言い返す。
「るっ、るせーな。わーってるよ、あの……乱暴な女だろ? ふっ……ふん、俺はあんな奴を認めねーぞ!!」
少しトムの声が木霊になって響いた。
「トム~~、駄目じゃん! こんな所で叫んじゃいけないわね」
その頃、アイラがくしゃみをしていた。――なにかしら? またアイツらが噂してるのね。次に会う時はいつかしら? 楽しみだわ……
戦闘経験を積んでいる内にグレイが性格が変わっているかのようにハイテンションになっている。
「もっともっと稼ごう! いぇいっ!」
今の変化にメイがたじろいている。
……なんか、性格が変わっちゃっているよグレイ……
まだフィールドを散策中の4人、しばらく歩いていると――近くからすくみそうな低く唸る鳴き声をあげている犬型魔物が現れた。
「ぎゃああっ! デスハウンド……!?」
唸り声をあげて飛びかかってきた!
「うわっ!」
デスハウンドにのしかかられた反動でトムが木におもいっきりぶつかった。痛みでトムは苦しそうだ。
「ト……トムっ!」
「~~~~ってぇ痛てててて……クソッ」
痛む部位をさすりながら立ち上がったトムが、何かを思いついたようだった。
「デュア、ちょっと……」
妙に楽しそうでデュアは少し身構える。
「な……なに? トム」
トムがデュアに耳打ちで内緒話をした。
「う~~ん、やってみるわね! 木にも協力してもらうわ」
自然を操る能力で、ということだろう。トムが頼んだぜとばかりに手を上に上げる。
「よーし! そうと決まれば作戦開始~~!」
トムが突然デスハウンドをからかい始めるのでグレイとメイがポカーンとしてしまった。
「やーい、鬼さんこっちら手のなる方へ! おいっ何をボケッとしてんだよ、お前らも手伝えよな……!」
「なっ、何よっ。偉そーに……」
メイが不満な様子だが、グレイはトムが何かを考えての行動をしているんだと意図を汲んで妹を落ち着かせようとする。
「まぁまぁ、トムの言う通りにやったろーぜ」
しぶしぶながらもメイもトム達と一緒に魔物をおびき寄せ始める。その間、デュアは木に心を通わせ始めていた。
……そう、ありがとう。協力してね
――はい、お安いご用です(デュアにだけ聞こえる木など自然物の声)
デュアはウインクしてトムに合図を送る。
(よし!)
「メイ! グレイ! そっちの木の近くの方へ寄ってくれ。デュアのそばに!」
「OK!」
さすが双子、息が合っている。
「おいっ、デスハウンドさんよこっちだぜ!」
『グルル……』
低い声で鋭い牙をのぞかせながら唸っている。
「ガォウ!」
襲いかかってきた。しかし、トムはタイミングを見計らってひらりとよけた。まっすぐ進んでくる。だがその先にはグレイ達がいた。少し困惑して――
「え……っ!? ちょっ……ど、どうゆうつもり!?」
「どーもこーもないと思うよ」
そこで言うまでもないかもしれないが、身の安全を優先して妹にも切羽づまった声をかけた。
「こーゆー場合は……」
少し間をおいて
「にっ、逃げろぉ~~~~」
グレイ達を囮につかった事を心の中で詫びながらも、トムの考えはうまくいっていたようである。
(それで良い。やっぱり俺ってバカっぽいけど天才? こうゆう事だけだけど……)
デュアの攻撃範囲でトムがデスハウンドをひきつけている。突進してきた。
「木さん、そろそろ来るわ。よろしくお願いします」
――わかりました、デュアさんの願いとあれば……断りません
「……ありがとう」
木に手をおいてお礼に念を込めているような体勢になる。




