ジルヴィアの術にはまっている? 1
「えっ……うっそぉ! 信じられない……」
メイが快方に向かってきているのが見て取れるが、デュアは予想外の効き目に目を丸くする。
「~~ねー? 良くなったでしょう」
魔族幹部ジルヴィアに問われて、メイは間違いなく体調万全まで後一歩くらいまで改善したので文句を垂れた。
「治りかけているのはいいけどさぁ! あのマズ~~イ薬の味はどうにかしてよね~~」
「フフ。少ーし後味は残りますけどスーッと酔いがひく薬なのですよ」
メイに薬を用意してくれたっていうのには感謝の気持ちはあるが、相手は魔族の幹部だという事実があるのでこれ以上馴れ合えないと思った。デュアが毅然な態度で対応する。
「……ジルさん、用件はこれだけですよね? さっさと帰ってください」
ジルヴィアが目を細めつつ嫌われるのも仕方のない、種族の壁があるなという感じで去っていこうとした。
「冷たいですねぇ。それではこの辺で失礼させて頂きます」
そして別の木に飛び移りながら――
「それではまた会う時までアディオス!」
ジルヴィアが去っていくのと入れ違いで男2人がメイの様子を見に来る。
「よお! なんだお前ら、キツネにつままれたような顔をして……」
別に何かをされたという訳でもないし、無駄に2人にまで神経を張り詰めさせては悪いと考えたデュア達はただ首を傾げた。
「ううんっ? 特に何もなかったけど。気にしないで」
「そうか??」
デュアとメイが仲の良さを表すかのように同時に言う。
「何でもないの? 本当に? 誰かと話していたかのようだったけど……」
グレイが怪しんだけど、メイが上手く話をそらした。
「えっ、ううん……。デュアと以外話してないけど」
「そう……」
思い違いだったのかなとグレイはそれ以上その話を蒸し返すことはしなかった。また別の話題をトムが持ち出す。
「なぁなぁ、聞いてくれよ! さっき妙にクールな奴がいてな、何か耳をそば立てていたら自称『ナゾの剣士』とか言ってたんだぜ。そんな事言う奴いるんだって思ったぜ、なぁグレイ」
「うん、その自称にピッタリはまっているかのような表情と雰囲気だったよ」
「おう」
どこか気になるポイントがあったのかメイがトム達の会話を身を乗り出して聞き始めた。
「へーーっ、どんな? どんな人?」
今の所これ以上話すネタがなくなったトムがメイの食いつき具合にビックリしつつも問う。
「なんだ?? メイ良くなったっぽいじゃねえか? そんなに身を乗り出して……」
「うんっ、良くなっちゃった。調子の良さって大切だね!」
トムとメイがたわいのない話をしている間に、デュアが考え事をしていた。
(それにしてもジルさん……。昔にど~~かで見たことあるような顔をしていたけど気のせいだったのかしら……)
そんなデュアの様子を見てグレイが何か心配事でもあるのかと尋ねる。
「どうしたの?」
必要以上に明るく振舞ってデュアは私を気にしなくてもいいよと態度で表した。
「あ……グレイ……。ううん、何でもないから」
無理に聞き出すつもりは全くないが、グレイが水臭いと思ったのは事実である。
(なんか……絶対に隠事をしてるよなーー……)
どこか記憶の前後に不具合というかぼやけたところがあるからか、トムがすでに話題にした事のある話をし始めた。
「ん~~っ、俺らも結構レベル上がったよなー」
伸びをしながらトムがどことなく感じる違和感を口にした。他の3人も忘れている期間があるというのが球通しているようである。
「でもよー、俺……何かぽっかりと穴が開いたかのように何かを忘れているような気がしてなんねーんだよな」
「ってゆーか、あたしは何でレベルが上ったんだっけ? って感じ?」
「僕も……。なーんか忘れているよね」
こうした症状というか不可思議現象に苛まれているのは自分だけじゃないんだと思いながらも、デュアが率先して記憶のピースを合わせてみようと提案する。
そして考え始めた……
――が!
「っぷはーっ、ダメだ~~、思いだせねー」
まずはトムだが冷や汗が全身を伝うだけで思いつくものが浮かんでこない。
「あたしもーっ」
メイも現状を打開する思いつきはおろか、思考を上手くまとめられずにいた。
「待って……。なんか……今、脳裏をよぎったような……」
グレイが何かを感じ取ったみたいなので、落ち着いて1つずつ当てはめていきましょうとデュアは言う。
「えっ……! よく……良く思い出してみるのよ!」
意識をそれに集中していると何やら声の振動っぽいものを感じ取る。
(声が……聞こえる!?)
<思い出してみる!? 冗談がお好きで……。私達の事を思い出されてはこれからの楽しみが減ってしまうではありませんか……>




